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アンバランサー・ユウと世界の均衡  〜唯一無二の属性<アンバランサー>を持つ少年が世界を救う!  作者: かつエッグ
第一編 「エルフの禁呪」

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その人は、手品が好き

「ど、ど、どういうこと?」


 三人一部屋という事態に、わたしは動揺していった。


「○△□?」


 ユウが、旅籠(はたご)の主人に話しかける。


「□○△…」


 主人が困ったように言う。

 ユウと主人はなんどかやりとりしたが、


「だめみたいだ…」

「どうなったの?!」

「部屋を分けられないか、聞いてみたけど。

 他の部屋は、もうひとつも空いてないそうだよ」


 ユウは首をふって、


「これは、他の宿をさがすしかないか…」


 すると、ジーナが


「ええ? いいじゃんここで! 素敵な部屋だし、ユウがいっしょでも、あたしはぜんぜんかまわないよ。というか、どっちかというと、その方がいいな」


 呑気なことを言う。


「そんな…」

「ライラはいやなの? ユウと同じ部屋でさあ」

「い、いやじゃないけど、それは、どちらかというというと、うれしいかもしれないけど、でもそれはちょっと、なんというか…さすがに、ちょっと…それは、ねえ…」

「ならいいじゃん! 今から他の宿さがすのもさあ」


 サラマーをわさわさしながら


「それに、せっかくサラマーが案内してくれたのに、気を悪くするよ!」


 ガウーッ。


 サラマーが、悲しげに吠える。


「ユウさん、ユウさんはどうなの? あたしたちといっしょは嫌なの?」


 ジーナが、ぐいぐい迫る。


「いや…いやではないんだけど…でも、いいのかなぁ」

「もう、はっきりしないなあ…わかりました、わたしが決めます!

 おじさん、この部屋できめました!」

「あんた、おじさんには通じてないよ」

「あっ、そうか、ユウさん通訳して」


「○△□…」


 主人は、にこりとうなずいた。


「ジーナ、あんた、なんだかルシア先生に行動が似てきたよ」

「いいのよ、師匠だから。

 ユウさん、ルシア先生には、このことは、わたしが事情をちゃんと説明しておくから安心してください」

「ちょっとジーナ、だから、あんたまた何を言い出すのよ、もう!!」


 …というわけで、わたしたちのお宿は決定してしまったのです。



 夕食までは間があるので、せっかくだから、街を散策しようということになった。


「ほんとに、すごいなあ、この人の波は」


 つねに、通りには人が満ちている。

 わたしたちの土地とは大違いだ。

 人間の数が生み出す、底知れぬ活気を感じる。


「あっ、あれはたぶんお菓子だよ!」


 ジーナが指差す。

 みると、離れたここにまで、甘い匂いの漂ってくる屋台がある。


「行こうよ!」


 という前からジーナは駆け出している。

 確かにそれはお菓子であろう。

 わたしたちの目の前で、屋台のお兄さんは、パンの生地のようなものを、細い渦巻型にして、油でカリッと揚げた。

 二度、三度、油を切ったそれを、こんどは、おそらくシロップと思われる、トロッとした紫色の液体に、どっぷりと浸けた。

 じゅうぶんシロップが染み込んだところで取り出し、砂糖なのかスパイスなのか、色とりどりの粒を振りかけて、できあがりだ。


「食べよう! ユウさん、これ買って! すぐ買って!」


 騒ぐジーナは、まるで子供である。


「○△□」


 お兄さんは、そのお菓子を、大きな葉の上に盛って、渡してくれる。作りたて、熱々だ。


「うーん、美味しそうな匂いだ!」


 ジーナは、ひとつ手にして、口に放りこむ。


「ん! ん! んーん!!」


 目をまるくした、ジーナの口から、うめき声がもれる。


「どうなの?」

「あ、甘ーい! めちゃめちゃ甘い! すごいよこれ、ライラ、早く食べてみて!」


 ジーナは興奮して、勧めてくる。


「どれどれ」


 わたしもひとつ、口に入れた。


「うわっ! こ、これって?」


 衝撃的な甘さである。あまりの甘さで、頭の芯が痺れそうだ。

 なんというか、この国は、びっくりさせられることがいっぱいだ。


「うーん、間違いなく虫歯になるな…」


 ユウもつぶやいている。

 でも、とても美味しくて、わたしとジーナで、完食してしまったのだ。


 その後も、お菓子らしいものを見かけるたびに、ジーナが「あれ買って」と騒ぎ、わたしたちは味見をしていったのだが、すべてが激甘であった。

 やはりこの国は、なにか感覚が、根本的に違っている。

 まあ、とても、美味しいんだけど。


「あっ、あれ見よう!」


 こんどは、ユウが声を上げた。

 そこでは、頭に布を巻いた老人が、むしろの上に胡座をかいて座っている。

 老人の前には、金属製のカップが三つ並べてある。それぞれのカップの前には、丸くてしわしわのケルミの実が、ひとつずつ置いてあった。

 わたしたちは、老人の前に陣取った。


「これなに? どうなるの?」


 ジーナがユウに聞く。


「まあ、見ててごらん」


 老人は、わたしたちの顔を一人一人見て、おもむろに、カップを傾けて、その下にケルミを入れていく。

 黒く塗った木の棒を右手でもって、カップを、チン、チン、チンと叩く。

 そして、いちばん端のカップを持ち上げると


「あっ!」


 入っているはずのケルミの実が消えているのだった。


「どこいったの?」


 そのケルミの実は、いつのまにか二つ目のカップに移動し、二つ目のカップから、二つのケルミの実があらわれた。

 目を丸くするジーナを見て、老人はニヤリ笑い、自由自在にケルミの実を、カップから出したり、消したりした。あるときは、重ねたカップをすりぬけ、あるときは、一つのカップにいつの間にか全部が集合し…その度にジーナは、ほうっと声を出して、驚くのだった。

 最後に老人が、カップを全部重ねて、ひょいとまとめて持ち上げると、


 コロン


 カップの下から大きな黄色のシモンの果実が現れた。


「すごい、すごい」


 ジーナは手を叩いて大喜びだ。


「○△□…」


 老人がわたしたちに何かいい、笑った。


「ユウさん、この人、なんていってるの?」

「うん、ジーナの反応がよくて、一つ一つびっくりしてくれるので、やりがいがあったってさ」

「でも、不思議だなあ、あれって魔法なの?」

「ちがうわ、ジーナ」


 わたしは言った。


「魔力の気配はまったくないよ。信じられないけど、あれは魔法じゃない」

「ええーっ? じゃあ、なんなの? あんなの魔法としか思えないよ」

「うん、魔法じゃない」


 と、ユウも言った。


「あれは、技術だよ。手の動きだけでやってるんだよ」

「そうなの? じゃあ、あの人は魔法使いじゃないんだ…」

「ぼくらの国では、()()()()()()()()()っていわれている手品だね。それにしても」


 と、ユウは例によってわからないことをいう。


「ジーナはすなおなんで、()()()()()()()()()に引っかかりやすいなあ。ジーナの動体視力なら、あのケルミの実の動きが、ぜんぶ見えてるはずなんだけどなあ…」


 みすでぃれくしょん?

 説明してもらおうと思ったら、ユウがまた、次のものをみつけたようだ。


「あっ、あの人も魔力をつかってないな。あれ? でもあれは?」


 興奮して、ずんずん歩いていってしまった。

 わたしとジーナはあわててついていく。


「ユウさん、こういうの好きだね」


 ジーナが言った。


「なんかさあ、子どもが喜ぶようなものが好きだよね、ユウさんって。笑っちゃうね」


 ジーナ、それはあんたも同じだと思うよ…。


いつも読んでくださって、ありがとうございます。日曜日は更新できませんといいながら、更新です。それもなんと、二話連続更新であります。



面白いぞ、次が読みたいぞ、そう思われた方は応援お願いします!

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