ジーナが、マリア団長をまもる。
読者のみなさま、今回は記念すべき第百回目の投稿であります。お楽しみ下さい!
「何があった!」
呼びかけるマリア院長のところに、職員が慌てふためき駆けよってきて、報告した。
「たいへんです、院長! たった今、絶望の湖が崩落しました!」
「なんだって?!」
わたしたちの目の前には、おどろくべき光景が広がっていた。
半径五キラメイグはある、ガラス化した大地を、まっぷたつに横切るように、大きな亀裂がはいり、その半分の平面が砕けて、地下に崩れ落ちていた。
どうも地下には大きな空洞があるようだった。
崩落せずに残った半分にも、亀裂はいくつか見られ、こちらも、いつ崩れるかもわからない。
「先発隊はどうなっている? 無事か?」
マリア院長が詰問する。
「わかりません…まだ、中にいると思われます。わたしたちが、先発隊の帰りをまっていたら、突然、地鳴りがしたかとおもうと、このありさまです!」
「あの連中がなにかやったんじゃないの?」
とジーナ。
「まあ、のっぺりはどうなろうと、どうでもいいけど、冒険者の仲間たちが心配」
「そうだね。これは、いくしかないな」
ユウがそういうと、
「わたしも、連れていってください」
マリア院長が、決然とした顔で言う
「わたしは責任者として、状況を確認しなければなりません!」
「わかりました。マリアさん、あなたは、ぼくらから決して離れないで。ジーナ、君はなにかあったらマリアさんを守るんだ」
「はぃっ!」
「じゃ、飛ぶからね。マリアさんは、はじめてだから、ぼくと手をつないで」
「? なんですか?」
マリア院長は、なにが起こるかよくわからないようだったが、それでも言われたとおり、ユウの手を握る。
そして、わたしたちはふわりと浮かび上がった。
「きゃっ!」
マリアさんが驚いた声をあげる。
わたしたちは、そのまま飛行して、絶望の湖の崩落個所から、内部に飛びこんでいく。
「ええーっ? 院長ぉー!」
驚いた職員が大声をあげた。
「なんだ、あれ! 飛行魔法なんて、聞いたことある?」
「おい、あいつらって、『雷の女帝のしもべ』じゃないのか?」
「いつのまに加わってたんだよ!」
わたしたちの飛行を目撃した冒険者たちが騒いでいる。
もう、わたしたちのことは、これでバレバレだ。
でもそんなことを言っている場合では、もはやないだろう。
とびこんだ絶望の湖の地下には、広大な空間があった。
それは一種の格納庫なのだろうか、落ちてきたがれきが埋め尽くしている場所をのぞけば、用途のわからない様々なもの、道具、機械のようなものなどが、整然と配置され、ずらりと並んでいる。
天井と壁から、オレンジ色の光が発せられており、わたしたちには特別な明かりは必要なかった。
「これは…」
マリア院長が絶句した。
「これまでに発見された中でも、最大規模の遺跡です」
あたりをみまわす。
「これほどたくさんの遺物が、そのまま残っているなんて…あっ、あそこに」
マリアさんが指さす。
すきまなく物が並ぶ中、そこだけが広く空いており、その広い場所のなかに、大きな構造物がみっつだけ置かれている。その三つは、釣り鐘を上からおしつぶしたような形をした、幅が二十メイグぐらいある巨大なもので、側面には丸く、窓のようなものが並んでいる。
その外見から連想するのは
「乗り物?」
「あれです、あれがーー」
「星の船か! なんと、あだむすきー型だ」
ユウがまたよくわからないことを言う。
わたしたちが近づいていくと
「「「「これはこれは」」」」
物陰からすべるように現れて、星の船の前に立つ、四つの影。
全員が小脇に、黒いかばんを抱えている。
その声は、まったく同時に四つの口から発せられる。
「「「「マリア院長、そしてアンバランサー、ようこそ」」」」
「あなたたち!」
マリア院長がうめく。
「なるほど、禍つ神は、宇宙船に、用があったわけだね」
ユウがいつもの口調で
「それで、いったい、なにをするつもりなのかな…」
四人は同時ににやりと笑った。
「「「「まあ、楽しみにしていたまえ」」」」
そして、マリア院長に視線をむけると
「「「「マリア、こちらに来なさい、お前はまだ役に立つ」」」」
マリア院長はあとずさった。
ジーナが、イリニスティスを構えて、その前に立つ。
「「「「おや?」」」」
四人の男が、マリア院長のその様子に、いぶかしげな顔をする。
「きみたちの、マリアさんにかけた結界は、ぼくが乗っ取った。眷属も、ライラが消してしまったし、もうマリアさんは操れないよ」
「「「「それなら、もうこの女、必要はないな」」」」
男たちがそう言った瞬間、四つのかばんから赤い光がきらめいた。
れーざーだ!
マリア団長と、わたしたちを狙ったその光は、しかし、わたしたちの前に出現した光の壁にはじかれる。
はじかれた四つの光のうち二つが、角度をかえて、格納庫の中の遺物につきあたり、すぱりと金属製の遺物を切断した。けたたましい音を立てて、切断された機械が、床に落ちてころがる。
残る二つの光は、逆転してかばんを直撃する。
光の直撃を受けた、ふたつのかばんが爆発した。
その爆発で、二人は、かばんを持つ腕が吹き飛んだが、腕がなくなっても、なんの動揺も、そののっぺりした顔にはあらわれない。苦痛すら読み取れない。
「「「「なるほど、これがアンバランサーの力か」」」」
「降伏するかい? まあ、そんなわけないとおもうけど」
そういって、ユウが一歩前に出る。
「「「「アンバランサー、それ以上近づかない方がよかろう」」」」
四人の男が言い、とたんに、外から人々のわめく声が聞こえ、そして、まだ無事だった天井がみしみしと音を立てて、亀裂が広がった。亀裂から、外部の強烈な陽光が射す。
「危ない!」
わたしたちは、後ろに下がる。
「「「「クックックックッ…」」」」
男たちの笑い声がひびく。
台地が、激しく揺れた。
次の瞬間、崩落が一気にひろがり、キラキラ光る大量の土砂とがれきととともに、巨大な黒いものが落下してきた。
「なっ! あれは、砂虫!」
一匹の砂虫が、絶望の湖に突入、もろくなった天井をつきやぶり、わたしたちの目の間に、のたうちながら落下してきたのだ!
百メイグはある砂虫の巨体が、地響きを立てて床に激突、いくつもの遺物が押しつぶされ、吹き飛んだ。
まるで爆発のように、突風が吹き荒れる。
「そんな…」
マリア院長があぜんとした声を出した
「砂虫は、どんなことがあってもここには近づかないはずなのに…」
「おそらく、連中が強引に操っている。あのかばんだな」
ユウが言い、力を働かせて、かばんの一つがまた、爆発した。
あと一つ。
しかし、そのとき
「「「「アンバランサー、君は、あれを放っておいていいのかな?」」」」
男たちが言う。
「あっ、みんなが!」
ジーナが叫んだ。
傾き、今まさに倒壊しかかる壁のすぐ近くに、先発隊のメンバーが倒れていた。
遺跡院の職員もいれば、冒険者たちもいる。
みな、意識がないようで、この状況でもぴくりとも動かない。
このままでは全員、下敷きだ。
「むっ!」
ユウの力が働き、崩れ落ちる壁が、斜めになったまま、凍りついたように途中でとまった。
「みんな、助けるよ!」
その間に、わたしたちは駆け寄り、倒れている先発隊員を移動させる。
さいわい、大きな怪我をしている様子はない。
救助に集中するわたしたちの後ろで、爆発音、そして何かが崩れる音がした。
振り返ったジーナが
「あっ、あいつらが、逃げた!」
格納庫の反対側の壁に、黒々と大きな穴が開いており、そして、三隻あったはずの星の船が、今は二つしか残っていない。
四人は砂虫を使って、一隻の星の船を強奪、壁を破って消えていったのだった。
その穴からは、今、大量の砂が噴き出している。
砂虫が遠ざかっている証拠だ。
「まあ、あれはしかたがない。みんなを助けるのが先だ」
ユウが言い、わたしたちは救助を再開する。
「これで、全員ですね?」
「はい、一人も欠けていません」
「それは良かった…」
全員を移動させ終わると、ユウが力をぬき、そして一気に壁はくずれおちた。
土埃がもうもうとあたりを覆う。あの下にいたら、ひとたまりもない。
「やれやれ…これで、一息つけるかな」
ユウがそういったとたん
「たすけてー」
「なんでこうなるの?!」
「落ちるー」
「もうだめー」
頭上で声がした。
見上げると、はい、予想通り、「暁の刃」の面々でした。
彼らは、崩落した天井の端っこに、かろうじてひっかかって、ぶらぶら揺れていた。
例によって、タイミング悪くまきこまれたようだ。
「まただよ…」
ジーナがつぶやいた。
「すごいね、あいつらの引きは…」
「お知り合いですか?」
何も知らないマリア院長が聞く。
「その、腐れ縁というか…」
わたしは答え、そしてユウが、彼らを安全な場所まで飛ばすのだった。
いつも読んで下さってありがとうございます。とうとう、星の船の出現です。アダムスキー型円盤をイメージしていただければ。
面白いぞ、次を読みたいぞ、そう思われた方は応援お願いしますね!




