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女神さまはニッコリと笑うと、俺の方に近づきながら話し始めた。
「そうです。正確にはこれから転生するので、まだ異世界転生はしてませんが…。」
柔らかい口調の女神さまは続ける。
「お分かりかもしれませんが、あなたは元の世界ではお亡くなりになりました。階段から落ち、頭の打ち所が悪かったのです。」
悲しそうな表情をしながら言う女神さまを見て、俺は、興奮していた頭が一気に冷めた。
そうだ…。異世界転生するってことはそういうことなんだよな…。
元の世界では俺は死んだんだ。
両親もまだ健在だ。親孝行も大して出来ていない。未練がないと言えば嘘になる。俺は三人兄弟の真ん中だったから、兄と弟がいるって事がせめてもの救いだが…。
「ごめんなさい。残念ですが生き返らせる事を出来ないんです…。」
女神さまが申し訳なさそうに言った。
俺は慌てて首を横に振った。
「…いやいや!!そんな謝らないでください!!ただ、まさか自分が転生するなんてありえないと思っていたので…。それに、自分の不注意ですし。」
そう、俺があんな人混みの階段で携帯なんて見ていたのがいけないのだ。
むしろ転生させてくれるなんてありがたい。