カタクラサツキ
人は、持つものと持たないものがいる。
ならば、持たない人間が存在する意味があるのだろうか。
毎日毎日、そればっかり考える。
朝起きて、学校に行くだけ。
そんなある日のことだった。
高校一年目、まだ学校の雰囲気が掴めないでいた。
そんな中、転校生がやってきた。
彼女の名前は久々隈 五月 どうやら、どこかの令嬢らしい。
見た目も凛とした面持ちをしており、長くきれいな髪と長いまつげ。バラのような匂いにスタイルがいい。
彼女は言った。
「この度は、お父様の仕事の都合でこの高校に入学しました。どの程度の高校かは存じていますので、どうぞお気になさらず」
と……
この言葉に、クラスが少し濁った。
だが、どんなクラスにも”優しい”人は居るもので……
「ねぇねぇ、久々隈さんはどこから引っ越してきたの?もしかして、海外とか……」
「きっとそうだよ。さっきの英語の授業だって先生の言ってたことがわかるとか……」
「まさか外人の先生が来るなんて、びっくりしたよね」
「もしかして、バイリンガルなんじゃないの?久々隈さんって……」
と、クラスの女子集団に囲まれて質問攻めを受けていた。
彼女は自信満々にこう答えた。
「もともとはイタリアの生まれですの。お父様の仕事柄、各国を回ることが多く。その国々の言葉は今でも使えますから、バイリンガルではなく……まぁ、マルチリンガルと言えますわね。でも、あのレベルでしたら海外映画でも見ていればわかると思いますわ。そんなに難しいことを言っているわけではありませんし。とてもゆっくりとはっきりと言ってくださってましたし……」
その瞬間の間は、見ていた僕にもわかった。
それでも、彼女は続けてて喋った。
少し離れた僕の席からは何を言ってるかはわからなかったけれど……
彼女が来てから二週間とちょっとがたった頃、クラスの様子はいつもどおりになっていた。
彼女に集まる人だかりは、日に日に数を減らし。まるで、有名なチェーン店のようになってた。
そんなある日、クラスの席替えをすることになった。
僕は窓際席がいいと言った。
これからの時期は日差しが強くなり、暑いので誰も行きたがらないため、難なく奪うことができた。
そこからの進行には興味がなかったために聞いていなかった。
そして、気がつけば……僕の前には久々隈 五月がいた。