オースティン・ロックウェル
ロイが会う度に彼女のことを自慢する。
美しく、聡明で、優しい。
それ以外にも色々あったが、もう忘れてしまった。
ロイには婚約者好捕は山ほどいるだろうに、何故ここまで彼女に入れ込んでいるのか不思議だった。
だから、彼女に会いたくなるのは当然だと思う。
俺は、ヒューゴを誘い、ロイに「来るな」と言われた日に王宮に行った。ロイが俺たちを王宮に寄せ付けない日は大抵彼女が来る日だと、王宮の侍女から言質をとってある。
温室で待っていると、美しい少女が入ってきた。話してみれば賢いこともわかったし、気遣いも出来ることもわかった。
でも、俺は彼女が気に入らなかった。
つまらない女。
彼女が王妃になったら国は益々繁栄するだろう。
彼女は王妃になるための器だが、行動全てが模範解答であって、模範解答に過ぎなかった。自分の気持ちや考えはどこにも入っておらず、この立場の者ならば、こう話すだろう、という台本を読んでいるように思えた。
俺は面白いやつが好きで、ロイもヒューゴもその条件を十分に満たす存在だった。しかし、彼女の行動は全てが想定の範囲内。俺はお茶会をはじめて早々に、彼女に見切りをつけた。
しばらく退屈なお茶会を過ごしていると、どこからか女の子の怒鳴り声が聞こえた。王宮で怒鳴り声をあげられる女の子なんて、王女のイラーリしかいない。
俺は内心ほくそ笑んだ。
王女のイラーリはトラブルメーカーで有名だったのだ。この権力だけはあるトラブルメーカーを前にして、模範少女は、どんな対応をするのだろうか?
期待に満ちて彼女を見つめていた。しかし、つまらないことに、彼女は罵倒されても、声を荒らげなかった。
イラーリが出ていったら、俺も出ていこうかな、なんて考えていた時。イラーリが紅茶をかけた。彼女の護衛に。
たちまち彼女は怒り、王女を言い負かした。
王女に何か物申せる者など、王家の人間くらいだと思っていた。誰でも我が身が可愛い。
でも、彼女は怒った。護衛である彼の為に。
俺は前言撤回しよう。
彼女は面白い。