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ロイ・シアーズ

初めて、エラを見た時、人形かと思った。


プラチナブロンドに、深いブルーの瞳が、よく妹のイラーリが遊んでいる人形と同じだったのもあると思う。


でも、そんなものよりずっと、綺麗だった。


どこまでも欠点がない、僕に微笑みかけてくれる人形。僕はいつしかその人形にのめり込んで行った。


エラはいつも、微笑んでいて、僕のことを肯定してくれる。その微笑みを、僕以外のものにしたくなくて、お父様と、エラの母君が明らかに狙っていた日に、僕はエラに聞いた。

「エラ、僕のことは好き?」

と。エラは微笑み、大好きですわと答える。

やっぱり、この笑顔が必要だった。





ある日、エラと温室に行くと、オースティンがいた。オースティンは中々整った顔をしていて、綺麗なものが好きなエラはきっと気に入ってしまう。だから、ずっと会わせたくなかったのに。しかもヒューゴも誘っていると来た。本当に僕が嫌がることを平気でやってくるやつだ。


お茶を飲んでいると、イラーリが来た。いつもの癇癪と共に温室に入ってくると、イラーリはエラに暴言を吐いた。

僕はエラに嫌われてしまうのではないかとビクビクしていたが、エラは表情を変えず、特に気にした風でも無さそうだった。とてもほっとした。


その反応に腹を立てたイラーリは近くにあった紅茶をかけようとした。しかし、ウィリアムという、エラの護衛がそれを阻止し、エラには一滴もかからないで済んだ。


イラーリは後先考えずに行動していて、王女の自覚もあったものでは無い。だから、こんな結果を産むんだ。


内心溜息を吐きながら、先程の暴言だって気にしていなかったエラは怒ってなどいないのだろうとどこか安心していた。


でも、エラは怒っていた。


「私は悪くない。」

そう叫ぶイラーリに、王女の自覚がないやつは、王女の権力を使うな、ちゃんと考えてから行動しろ、もう、1度してしまったことは取り返せないからな?と言ったことを言外に含ませながら言い返した。


今までイラーリに強く出る人は居らず、父上も、母上も、僕も、身内の欲目で甘く見ていた部分があった。

だから、イラーリは増長してしまったのだ。

勿論王女に物申せる人など、王家以外にはいない。


でも、エラは物怖じせず、違うことは違うと、言った。

そんなエラを、初めてかっこいいと思った。

エラが怒っていたのはウィリアムという護衛に怪我を負わせたからだ。自分が何を言われても気に留めなかったのに、護衛に怪我を負わされて、エラは初めて感情を見せた。今までは公爵家に相応しい令嬢が入った人形だったのに、今回はウィリアムのために怒った。僕は、ウィリアムを羨ましく思った。


もっと、エラの感情を見てみたくなった。

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