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終わらせよう
「嗚呼、泣かないで。エラ、君が泣くと、私も哀しいよ。」
セリーヌが私の頬に手を伸ばす。
涙を拭う、その仕草。
そう、私が愛した、セリーヌ。
初めて、出会った時。
神様がいるとしたら、こんな姿なんだろうと思った。
話してみれば、楽しくって面白くって。一瞬で大好きになった。セリーヌと居る時だけ、人に戻れた。
でも、セリーヌはいつでも、美しくて、寂しそうで。そんな姿を見る度、泣きそうになるのを必死で堪えた。
愛しかった。哀しかった。美しい、あの佳き日々。
私はあの時が。最高に幸せだったから。
「セリーヌ。貴方を愛してたの。」
告白。《ルーシー》のときには出来なかった。
王として。ルーシーとして。出来なかったから。
だから、もう、終わらせよう?
「でも、もう貴方を、愛することは出来ないの。」
私は微笑む。出来る限り冷たく。
セリーヌを傷つけても、いつか伝えなければいけない言葉だから。




