昔話 7
「えいえんの、いのち?」
真っ赤に腫らした目で私を見つめるルーシーは、虚をつかれたような顔をしていた。
それに、手応えを感じた私は、一気に捲し立てる。
「そう。いつまでも、この世界に居られるのだよ。死に怯えることもないし、沢山の時間を得ることになる。」
きっと、そのとき私は、縋るような瞳で彼女を見ていたんだろうね。
「永久の時間を、私と過ごしてはくれまいか?
ルーシー。君と共に居たいんだ。」
ルーシーは驚き、そのまま暫く硬直した。
その間、私は彼女から一瞬たりとも目を逸らさなかった。
彼女からの返答が怖かった。でも、期待も入り交じっていた。もしかしたら。ルーシーなら私とともに……
「ごめんなさい。セリーヌ、貴方と共に永遠を過ごすことは、私には出来ない。」
それは、明らかな拒絶の意だった。
その日がルーシーと会った最後の日となる。
私は当てもなく不貞腐れていて、街をぶらぶらと歩く日々が続いた。周りからは好奇、嫌悪、その他様々な目で見られたが、それらは全てどうでもいいことだった。
「号外〜!号外!」
そう言って、新聞を配る男がいた。私はそれを受け取る。
ちら、と視線を落としたその新聞には『女王崩御』との文字。
知っていた筈だ。だって、私は『神様』なのだから。彼女が不安そうに俯く度、ため息を吐く度、ルーシーがそうしている理由を察せない筈がない。
でも、それでも。少しだけの期待を寄せて。
文字の下にある、絵姿に視線を移す。
「ははははははははははは!」
こんなに笑ったことなんて今まで無かった。けれど、最高に、笑える。
「なんだよ、これ。だって可笑しいじゃないか。こんなところに。いる訳が無いだろう?」
そこに居たのはルーシーだった。
『女王崩御』の文字は雨も降っていないのに、何故かぐしゃぐしゃに濡れていた。




