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昔話 2

語り始めたセリーヌの意識はもうここには無かった。きっと心は遠い昔に愛した彼女の所にいるのだろう。




私は、誰かに話しかけてみようと思っていた。そこではじめて会ったのが彼女だったんだ。彼女は海に向かって歌っていた。美しい音色だったよ。でも、私はそんなことお構い無しに、彼女に話しかけた。


「こんばんは」


ってね。すると、彼女は驚き、ビクリと肩を震わせた。そしてゆっくりとこちらに振り向いた。でも、驚いたのは私の方だ。だって、彼女は泣いていた。


「どうしたの?」


私が尋ねると、


「なんでもないのよ。」


そう言って、涙をふいて微笑んだ。そして、


「何かご用かしら?貴方は誰?」


と尋ねた。私は正直に答えたよ。


「暇つぶしに付き合ってもらおうと思って。名前は無いよ。」


と、ね。


すると、彼女は笑いだしたんだ。大爆笑だよ?淑女なら有り得ない。いや、そこら辺の農家の娘でもしないね。ほんと、ドン引き。


満足するまで一通り笑い終えた彼女は、楽しそうに、面白そうに、口角を上げて言った。


「そう。私はルーシー。貴方は……そうねぇ。セリーヌと呼ぶわ。宜しくて?」


私にも特に異存は無かった。


「構わないよ。」


そう言って、微笑んでみたんだ。


すると、ルーシーは顔を真っ赤に染め上げて、硬直した。不思議に思った私は、彼女をじっと見つめていたよ。暫くして、顔色が戻った彼女は、


「もうっ!セリーヌったら!はぁ……ほんとうに。なんて人なの?!」


そう言って、突如顔を覆った。そして、肩を震わせはじめた。最初は泣き始めたのかと思ったけど、笑ってるんだって暫くして気がついたよ。


「ルーシーは面白いね。」


私がそう言うと、ルーシーは顔を上げて微笑んだ。


「それは、セリーヌ。貴方の方よ?」



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