前を向く令嬢 レイラ・ボールドウィン
取り敢えず、エラを探すために、予定が先送りになった。
「生徒達はここで待機していてください」
という先生の声が響く。
私は恐る恐るその場から離れ、最後にエラを見た場所まで戻った。
「この中に、エラが入っていったのよね。」
私は呟きながら、鬱蒼とした林の中へとすすんだ。
「まぁ!」
私が目にしたのは、とても美しい自然だった。青々と木々が生い茂り、木漏れ日で優しく包み込んでいる。何処からか水の音が聞こえ、鳥の声が谺響する。私が理想とする、自然の風景そのものだった。
でも、私の周りには、生き物の気配がない。
まるで、天敵に息を潜めるみたいに。
私は叫ぶ。
「エラー?どこなの?」
「レイラ嬢?!何してるんですか?」
ロイに会った。後ろにはウィリアム先生と、隣のクラスの先生がいる。
「エラを探しに。貴方方は?」
「もちろんお嬢様を探しに。そうしたらこの小僧が1人でふらふらとお嬢様を探してるって言うから、捕獲したんですよ。」
ウィリアム先生の言葉には苛立ちが含まれている。
ましてや、一国の王子を小僧って。小僧って。(大事なことだから2回言いました。)
そして、捕獲って。
まぁ、古くからの知り合いだから、大丈夫だとは思うんだけど。ロイはそんなことで処刑とかしなさそうだし。
ん?待てよ。婚約者をいじめた私を追放するんだっけ?
あ、やばい?
まあ、他人事だしな。置いとこう。
「私も一緒に探させてください。私がエラのことを傷つけたかもしれないから。」
すると、一瞬空気が冷えた。ウィリアム先生が怒りを顕にしているが、それではない。ロイだ。この冷たさ、エラをこんなに好きなのに、敵うわけないじゃないか。
過去の私を自嘲する。
何度でも、ロイが大事なのはエラだけなんだ。
そろそろ、前を向け、私。
今はそんな場合じゃあないだろう?
「エラを探しましょう。お説教ならあとから聞きます。この林は危険です。明らかに、私達を排除しようとしている。」
そう。さっきのは、違う。
息を潜めていたのは私だ。天敵に会ったのは私なんだ。
「うん。行こう。」
ロイは頷いた。




