回想する令嬢 レイラ・ボールドウィン
私は何故エラにあんなことを頼んだんだろう?
乙女ゲームのヒロイン通りに生きろ
なんて、その人の人格を否定するようなものなのに。
記憶がもどる前、私はロイのことが好きだった。
見た目のきつさに反して、かなりの乙女趣味だった私は、ロイの完璧な王子様っぷりに落ちた。
ロイに、婚約者がいたことはしっていたけれど、まだ見ぬ婚約者はあまりに現実味がなくって。
愛のない政略結婚なのだろう、私にもまだ、チャンスはあるんだ。
そんなふうに思っていた。
まだ、婚約者がデビュタントを済ましていないのをいいことに、ロイにアピールをし続けた。
ロイの髪や瞳の色に合わせた服、ダンスは何度も誘ったし、お茶会にも招待した。
周りは眉をひそめたけど、そんなこと、どうでもよかった。ただ、ロイが私に振り向いてくれたら。
でも、それは叶わぬ事だと知った。
会う度に冷たくなっていく態度。婚約者の話をする度優しくなる瞳。婚約者から貰ったブローチを愛おしそうに眺める姿。
もう、手遅れだった。ロイも、私も。
ロイは私を見てくれない。ロイが見ているのは、エラ・フォーサイスだけ。
ロイが振り向いてくれるならば、と気にしなかった外聞も、今更取り繕うことなんて出来なかった。
両親に厄介者を追い出すために入れられた学園。
その頃はもう、何もかもを諦めていた私。
修道女か、年の離れた貴族の妻にでもなるんだろう。
そう、考えていた。
でも、彼女に、エラ・フォーサイスに会って私は考えを変えたんだ。




