表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/71

空っぽ

「お帰りなさいませ。」


玄関で、メイド達が出迎えてくれる。


「ただ今帰りました。」


そう言いながら微笑む。



これすらも、あやつり人形なのかしら。



「今日は疲れてしまったから、少し眠るわ。夕食の時間になったら起こして頂戴。」


そう言うと、侍女のミアが、わかりました。と答える。


自室まで向かっていると、後ろからウィルが着いてくる。

彼は私の護衛なのだから当たり前ではある。でも、それすら今は鬱陶しい。早く1人になりたい。


「エラお嬢様。どうなさいましたか。」


ウィルが尋ねてくる。


「なんでもないわ。」


そう答えるしかないでしょう?


それ以外になんと言えて?


『私は貴方達の望むように動いていて、今迄の私は貴方達に操られていただけなの。』

『それに気付かされて、とても辛いのよ。』

とでも?


有り得ない。


「そうですか。」


学園で教師をしてるのに、なんでこんなに早く帰れるのよ。もう、八つ当たりしちゃいそうだわ。





自室でネグリジェに着替えると、ベッドに倒れ込む。


自然に涙が出てくる。


前世の記憶が戻ってからは、ロイ達が笑って欲しいと言ったから、自然に笑うようにしていた。


レイラと話してからは、乙女ゲームの中で『みんなが好きな私』になりきった。


今更、《誰か》以外になるなんて、どうすればいい?


記憶の戻る前の私は、完璧な公爵令嬢を演じていたんだ。


もう、《誰か》にならなかった時が思い出せない。もしかしたら、私は《誰か》になったことはあっても《私》になったことは無いのではないか?


更に涙が溢れる。




そうか、私はいつでも、空っぽなんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ