震える令嬢 レイラ・ボールドウィン
オースティンの言葉にどうしても驚きが隠せない。
「え、ええ。私でよろしければ。」
顔が強ばっている気がする。
でも、仕方ないだろう。オースティンは今まで、エラ以外の令嬢に、目もくれなかったのだ。オースティンとダンスを踊るなんて、ほぼ奇跡に近い。それ程までに、彼はエラ以外の令嬢に興味が無いのだ。
私は記憶がもどる前、ロイを狙っていた頃に、数回顔を合わせた程度。そんな令嬢にダンスを誘うなんて、オースティンらしくない。
疑念を抱きながらも、音楽がはじまり、踊りはじめる
「何故、私を?」
オースティンに尋ねる。すると、オースティンはハハッと笑った。
「レイラ嬢が、最近面白いと聞いたもので。」
そうか。
オースティンは生粋の《面白いもの好き》だ。面白いと判断したものに対しては、とことん興味を示し、面白くないと判断したものに対しては、欠片ほどの興味さえ示さない。
「私は、誰にそんな不名誉な噂を流されましたの?」
「エラだよ。」
エラ。何を言ったんだ。やめてくれ。攻略対象とダンスを踊るために私はこの学園に入ったんじゃないんだ。攻略対象とエラの恋愛を見るために入ったんだ。(違う)
私はため息をつく。
「エラのことにしか興味が無いのかと思っておりましたのに。」
少しの皮肉を込めて言う。
「以前は、な。今はつまらん。また、人形になった。」
人形?
「最近はエラにちょっかいを出すことで慌てるロイで遊んでるんだ。」
性格わっる。
私も人のこと言えないけどもさ。
「いいご趣味でいらっしゃるのね。」
私が微笑むと、また笑った。
「そうだろう。なかなかわかってくれるやつが居ない。」
皮肉で言ったのに。それにさえ気づいて笑っている。食えないやつだ。
「どう?私はお眼鏡にかなったかしら?」
「上々だ。これからはレイラ嬢に積極的にからかいに行かせてもらおう。」
ちっ。面倒なやつだ。
あ。音楽が。ここだ。ここで、この……
私は咄嗟に振り向く位置的には完璧。オースティンにどう思われようがしったものか。
キター!!!!!!!!!!!!!!
スチル。最高。
ロイの真剣な瞳が、生で。エラの頬が赤く染ってる。(ダンスで疲れてだけど。)
スチル。最高。(大事なことだから2回言ったよ。)
エラ有難うございます。もう、素晴らしい。本当にいいものを見た時って語彙力なくすよね。
ああ。涙が出そう。
エラ震えてる。私も震えてる。
神様ここに転生させてくれて、有難う。




