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あやつり人形

入学パーティは無事に終わり、あの後、レイラにはとても感謝された。レイラは他にも気になることがあるみたいだったけど、教えてくれなかったので、とりあえず保留しておく。甘味を貰えたから全てよしとしよう。





入学パーティが終われば、しばらくは日常だ。


かく言う私も、図書館で本を読んでいる。

教室だとロイがしつこいし、中庭にいると鍛錬場で剣を振り回すオースティンが声をかけてくるし、家にいれば、ウィルが鬱陶しいくらいつけ回される。

図書館という場所は、静かにしなければいけない空間だから、知り合いに会っても会釈程度で済む。そこが、私のお気に入りポイントだ。

ここでは、ヒューゴによく会うが、彼は無害。よって放置。





だが、今日のヒューゴは違った。

私が、歴史書を読んでいると、肩を叩かれた。そろそろ閉館の時間かと思ったが、それにはまだ早い。不思議に思いながら振り向くと、ヒューゴがいた。


私が首を傾げると、ヒューゴは『中庭に行きませんか?』と書かれたメモを差し出した。私は頷いて、本を本棚に返すと、ヒューゴの後について行った。




「どうなさったのですか?」


私はヒューゴに尋ねる。ヒューゴが私と2人になろうとする。こんなことはじめてだ。


「最近の貴女は少し危うい。」


「どういう意味ですの?」


「言葉の通りです。」


ヒューゴはその鳶色の瞳で真っ直ぐに見つめてくる。


「学園に入る前までは、貴女はちゃんと生きていた。自分の意思で笑い、自分の意思で怒り、自分の意思で話していた。しかし、学園に入ってから、変なんですよ。まるで、誰かから言われたことを忠実に守っているだけのようです。私には、貴女があやつり人形のように見える。」


《あやつり人形》


「そうでしょうか?私はきちんと自分の意思で生きているつもりですのよ?」


あくまで、しらばっくれる。

でも、ヒューゴは。


「いいえ。誰に言われたんですか?貴女は、今、自分の意思で笑っていないから。自分の意思で喋っていないから。ロイに最初聞いていた貴方のようだ。」


「そんなことありませんわ。」


私は、失礼します、と言うと、その場を去った。




私は、《あやつり人形》なんかじゃない。



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