3話 護身術の要らないスローライフを送りたいです
「エラ。この子が貴女の護衛となる、ウィリアム・ウォードよ。」
そう母に紹介された彼は、灰色の髪に、緑の目をした美少年だった。なんだろう。影のある顔立ち?そんな感じ。12歳で、私の護衛につくというのはかなりの実力者だと思う。なんたって、私に専属の護衛がつくのは私が未来の王太子妃だから。過去には、私と同じ立場の人で毒を盛られたり、矢を放たれたりなどして殺された人も居るそうだ。そう聞くと、かなり怖い。前世ではスローライフの手前まで行ったのに死んでしまったのだから、今世ぐらい生きてスローライフを送ってから死にたい。そうすると、ウィリアムは私の夢のためにはなくてはならない存在だ。
私はウィリアムに自分が出来る最上の微笑みをした。
「よろしくね。ウィリアム。」
「よろしくお願いします。エラ様。」
そう言って頭を下げるウィリアムはとても騎士らしかった。
「そうだ、エラ。これからウィリアムに護身術を習うようになるわ。頑張りなさい。ウィリアムは強いわよ!」
……ん?
護身術?
それって、王太子妃に必要なスキルか?
「お母様。護身術とおっしゃいました?」
「ええ。ウィリアムが護衛としてつくと言っても、あなた自身で自分の身を守れるのが一番でしょう?」
確かにそうだけど。なんだろう。お姫様って、もっとか弱いイメージあったんだけど。
「というか、私、エラが戦ってるとこ見てみたいのよね〜」
え、お母様の趣味?お父様も、剣技の大会で、お母様と出会ったって言ってたけど。もしかして、お母様戦いの観戦がご趣味でいらっしゃるの?
それ、公爵家の奥様として、どうなんでしょう。
まぁ、私も殺されるのはやだしなぁ。
しょうがない。守られるだけってのも性にあわないのは事実。自分の身は自分で守れるようになろう。
「ウィリアム。護身術の指導、よろしくお願いしますわ。」
そう言うと、ウィリアムは礼をした。
めっさ騎士っぽいなぁ。
「エラ様。右脚と、左脇がガラ空きです。」
そう言いながら、容赦なく剣を打ち込んでくるのはウィル。ウィリアムは長いから、ウィルで良い?って聞いたらあっさりOKしてくれた、ウィル。とっても優しいです。護身術の稽古以外は。
「まだまだですね。エラ様、私がいなければこの一週間で5回は死んでますよ。」
え?まって、5回も刺客が来てるの?怖っ。怖いよ。ウィル。サラッと言わないでよ。
時々、ウィルは失礼しますと礼をしてからどっかに行くことがある。それってもしかして、刺客のとこへ?なにそれ。私よく生きてんなぁ。
まぁ、そうだよね。
うちって、権力めっちゃあんのに、王子と婚約なんてしたらさらに権力膨れ上がるもんね。殺したいのも納得だわ。
ま、殺されないけど。
ウィルいるし。
「エラ様には殺気から、どこに刺客がいるかあてられる程度にはなって頂くつもりです。」
え?なにそれ超能力やーん。
一介の公爵令嬢に何求めてんですか…。