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困惑の令嬢 レイラ・ボールドウィン

色々と、おかしい。なんでだろう。でも、おかしいのは確か。


まず、攻略対象のキャラがちょいちょい違う。


ロイは王子キャラが健在だけど、エラ以外の自分との結婚を狙ってくる女の子に対して、とても冷たい。ゲーム内ではもう少しやんわり否定してたのに。


次にウィリアム。ウィルは寡黙っちゃ寡黙だけど、優しい先生の部類に入るし、結構笑う。主人公にしか見せなかった笑みを無料でばらまいている。めっちゃイケメン。


そして、オースティン。子犬キャラで可愛い感じだったのが、俺様入ってる。あと、チャラい。可愛さなんて微塵もない。こっちの方がタイプ。


ヒューゴなんて、ツンデレの欠片もない。むしろ、心配性で、優しく、女の子が喜ぶように動けてる。すごく紳士的だ。つんつんしてない。


なんでだろう。みんな女の子の扱いが上手い。慣れてる。


最後に、エラ。主人公。この子が1番違う。

ゲームでは、口説かれたら頬を染め、いじめられたら泣き、そんな感じだった。なのに、今は、口説かれたら駄目出しをし、いじめられたらやり返す。





昨日、私はゲーム通り、彼女を虐めるため中庭に行った。そして、ゲーム通り彼女を転ばせ、ドレスや教科書を全て泥だらけにしてやった。そのあと、ルートの攻略キャラが助けに来るから、とても楽しみにしていた。なのに。



「あら、申し訳ありません!足が引っかかってしまったようね。」


呆然とした彼女を見て、あとすこしでラブシーンが来ることを確信した。


ふふ!いい感じ!


すると、彼女は微笑んだ。そして、口を開く。


「あら?そこに、よろしい教科書がございますわね。ドレスは後で賠償金を請求致しますわ。」


ん?あれ?


「エラ!大丈夫かい?レイラ嬢。何をしている?」


やったー!ロイが来た!


「あら、ロイ。あなた、どうしてここに?」


「エラを探していたんだよ。それより、どうしたんだ?そのドレス?泥だらけじゃないか。」


「ああ。転んでしまったのよ。でも、大丈夫。レイラ様の長い足が引っかかってしまって、レイラ様が悪いからって教科書を譲ってくださるそうよ。ドレスもあとで新しいのをくださるって!優しいお方ね!」


彼女はそう言って微笑む。私を見た時なんてウィンクしやがった!


「そうなのか?」


ロイが訝しげに聞いてくる。ここまで来ると引けない。


「ええ。申し訳ありませんエラ様。」


「うふふ。良いのよ。」


「エラは優しいんだな。」


ロイがそう言うと、エラは眉を顰める。


「優しいのはレイラ様でしょ?足が引っかかってしまっただけなのに、こんなに謝ってくださるなんて!それに、上から目線はやめて下さる?女の子にもてませんわよ?」


エラはこんなに強気だったかしら。なんか、旦那を尻に敷く鬼嫁みたいだった。



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