喜劇の令嬢 レイラ・ボールドウィン
「私、悪役……。」
驚愕のあまり口にした言葉は彼女に聞き取られてしまった。
美しい声音で、
「あくやく?」
という彼女はとても美しく、首を傾げる姿なんて、誰がみても庇護欲を誘う。
あぁ。この子は主人公なんだ。
彼女の名前はエラ・フォーサイスだと名乗った。
私は下を向いた。今の表情を見られないために。そして、
「気分が優れないので、失礼致します。」
と言って、その場を去った。
まだ、始業式には時間がある。私は誰もいない中庭で、状況を確認するために、持ち合わせる頭脳を総動員させた。
まず、私は悪役令嬢である。それは紛れもない事実だ。
そして、ロイ・シアーズ、ウィリアム・ウォード、オースティン・ロックウェル、ヒューゴ・トレス、最後にエラ・フォーサイス。
攻略対象と主人公が存在している。つまり、この世界は乙女ゲームと同じだ。
悪役令嬢なら断罪イベントを回避しなくてはならないため、普通なら自らの置かれた状況を嘆くべきだろう。しかし私は、
「やった!」
と、密かにガッツポーズをした。
何故、私は喜んだのか?それは最推しと同じ世界に居れることにでも、攻略対象との恋愛を楽しめる可能性があることにでもなかった。
乙女ゲームとは、主人公に自分を置き換えて、攻略対象という名のイケメン達に、愛を囁かれることに悶えるゲームだ、と言う人もいるだろう。
でも、私は、主人公と攻略対象の恋愛模様を眺めるのが好きだったのだ。
所謂、相談を受けるお友達ポジション。
かっこいい男の子が可愛い女の子にアプローチする。可愛い女の子が、かっこいい男の子にアプローチされて、ドキドキしている。
そんな様子を見て、尊くないという方が可笑しい!!!
そして、今世での“悪役令嬢”というポジション!目当ての2人がくっつくと知っていたら、お友達よりも全然良い!むしろ、自分の行動で2人の愛が深まるなんて!しかも、それを目の前で見れるなんて!
神様最高!ここに転生させてくれてありがとう!
今まで信じてなかったけど(これからも信じないけど)、気が向いたら祈るようにするね!!
しかも、エラはロイの婚約者。つまり、もう既にロイのルートだ。最推しと、可愛い(実物の方が可愛かったけど)の女の子の恋愛模様が見れるなんて!
それを想像したら、断罪のあとなんてどうでもよかった。
私は決意した。悪役令嬢を演じ切ってみせる!




