とある春の日
あれから、8年経った。
綿密な計画と、準備により、私の素晴らしいスローライフは3年後に実現する予定だ。
私の計画を説明しよう。
まず、スローライフの資金。それは、公爵家としての役割を果たすつもりのない私が公爵家のお金でスローライフを送る訳には行かないので、自分で調達した。
どうやってか?実は、物語を書いたのだ。前世で本の虫だった私は常々、物語を書いてみたいと思っていた。そして、その夢を果たしたのだ。こっちの本は恋の話が多く、私が書いたのは純文学。受け入れられないかと不安に思ったが、新しいジャンルがウケたらしく、かなりがっぽり儲かった。
老後までのスローライフに必要な資金より遥かに多くの量が。だから、スローライフに使わないお金はうちに置いていくつもりだ。今まで育ててもらって、感謝してるし、フォーサイス公爵家なら上手く民のために使ってくれるだろう。
そして、身分をどうするか。今の私は国1番の権力を誇るフォーサイス家公爵令嬢、ついでに王子の婚約者。
ロイは王子なので、社交界デビューは誕生日に盛大に行った。私はまだ、デビューをしていない。ロイの誕生日に一緒に行いたかったが、私の誕生日はロイの7ヶ月先、無理があったのだ。そして、学園に入る準備などをしていたら、社交界デビューの暇なんてなくて、先送りにしていた。
ロイは、絵本に出てくる王子様のように優秀で優しく、女の子に引く手数多だと思ったのに、ロイから浮いた話は全く聞かない。社交界では、美しく着飾ったご令嬢が五万と居るのに、見向きもしないらしい。
だから、この3年間で、私が学園でいい女の子を見繕い、おすすめして、私は身を引いた風にする。そして、修道院にでも行ったことにして、海の見える家でスローライフを送るつもりなのだ。
最高の計画!!!
「お嬢様。髪はハーフアップに致しました。」
ミアの声が聞こえる。今日は学園の入学式。ロイの花嫁を探すために頑張るぞ!
そう決意した時、ノックが聞こえる。
「エラ?準備が終わったと……」
ロイの声がする。私はロイの方に勢いよく振り返る。
「っっ!」
ロイは私を見るなり赤面しだした。
「どうしたの?」
「……エラがあまりにも綺麗なので、どきどきしてしまいました。」
ロイかわええなぁ。照れてるで。8年経った今でもロイの可愛さは変わらんなぁ。
そんなことを考えながらも、私はロイに微笑みかけた。
ロイは私の顔を見てから、学園でやることがあると先に出発した。私は馬車に乗りながら、まだ見ぬ学園に思いを馳せる。
「お嬢様。到着致しました。」
そう言って従者が馬車の扉を開ける。
私の目の前には美しい城のような校舎があった。
「綺麗ね」
そう呟くと、私は歩き始める。
「すみません。これ、落としませんでしたか?」
そう、背後から声が聞こえて振り返る。
そこにはクール系美人の女の子が私のハンカチをもって立っていた。
私は、有難う、と言って微笑む。
すると、その女の子は呆然と口を開いた。
「私、悪役……。」
と呟きながら。




