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空爆

ホッパー隊は敵の縄張りに近付いていた。

まだ踏み込んではいない。

「接敵。シャーク隊が攻撃を受けたようです」

アビゲイルが告げた。

哨戒機は高度をとって電波を飛ばしている。それを感知したのだ。

ロザリアは直ちに指令を出した。まだクラブの活動範囲の外にいる。しかし何が起きるか分からない。シャーク隊も予想より早く攻撃されているのだ。

「全員構え。対空戦闘準備。見張れ!」

ライドスレーブを固定したままで銃を構える兵士達。ミサイルランチャーの固定具が外された。

「シャークの様子は?」

状況が詳しく伝えられてくるるわけではない。漏れてくる交信を拾い上げるだけだ。

「損害有り。ジーン中尉が指揮を取っています」

リスボンは散ったか。

何機落ちたのか。

ジーンの指揮なら、それは良い。

任せておけば良いだろう。

ロザリアは前を見た。何があろうと前進あるのみだ。

「入りました」

オペレーターが伝えた。

電磁ネットの有効範囲に突入した。まだ仕掛けては来ない、そう見込んでいる。有効範囲の端ではクラブの機動性は低い。積極的には来ないだろう。そういう読みである。

ホッパーはクレーターの壁を登り始めた。文字通りここはひとつの山場だろうとロザリアは推測している。乗り越えた先はフラットな窪地だ。基本的に敵の目に晒される事になる。ガルベットの電磁ネットリレー基地はクレーターのやや北寄りにある。ロザリアは南側から進行している。一番晒される時間が長い。敵の攻撃を真っ先に受けるのは自分達のつもりだった。思い通りにはならないものだと、ロザリアは改めて感じた。

峰を超えた。

「えっ、」

アビゲイルが声を上げ、ヘッドセットを調整した。驚きの表情は滅多に見せないアビゲイルが信じられないという顔を隠さない。

「第四ホッパー隊が通信しています」

高度を取った哨戒機からの通信は降ってくるがジーン機の発する通信は傍受できない。まだ地平線の下なのだ。ホッパーが電波を出しても互いには通信できない。月の大地が邪魔をする。クレーターの峰に登ったことで受信したのだ。

ロザリアはヘルメットの上から耳をつついて見せた。

即座に通信の音声がロザリアにも届く。

「・ーくたい。サットン中・である。た・にぜんそ・で敵をた・」

「何を言ってるんだサットンは」

「中佐はシャーク隊に先行しろと言ってます」

「バカな。ジーンは、返事をしたのか」

「いいえ、無反応です」

少なくともそれは良い。

航空兵力は減ったのだ。計画通りに地上部隊との同時攻撃を行うべきだ。

「・ん・をせんか。しゃ・」

サットンはリスボンとは同期だ。作戦決定の前はロザリアの上官だ。機会をうかがっている節はあった。リスボンの戦死で部隊を掌握するチャンスと見たのだろう。

しかしまさか通信を勝手に始めるとは。

自分の位置を教えるとは。

シャーク隊が先行すれば危険は低くなるとでも考えているのだろう。

甘い。甘すぎる。

ジーンは計画通りに動くだろう。

サットンは自らを危険に晒しただけだ。サットン一人ならそれでもいい。しかし彼の指揮する兵達は無駄死にの危機なのだ。


「シャーク隊に告ぐ。サットン中佐である。シャーク隊は直ちに全速で敵基地へ進行せよ。繰り返す。全速で先行して敵基地を叩くのだ」

こいつもリスボンの同類だ。ジーンは一瞬目を閉じた。

自分達が攻撃を受け、通信回線を開いた事に反応したのだろうが、それでどうなる?、シャークが先行?、それがなんになる!。

従えない返答すべきだろうか。

「動きあり」

哨戒機の通告。

ジーンは哨戒機の望遠カメラの映像を見た。

クラブの一団が上昇している。真正面と言うことは電磁ネットリレー基地から真っ直ぐに上昇しているのだろう。

それが左に曲がって斜めに下降しキラリと輝く一団と反射の低い一団に別れた。輝く一団はほとんど真っ直ぐに降下して行く。実際には放物線なのだがジーンには真っ直ぐに見えた。もう一つはクラブだ。鋭く進路を変えながら上昇を始めた辺りに戻って行った。

別の一団が続く。

さらに続く。

「サットン、上から攻撃だ」

「きさま、上官を呼び捨てか」

サットン中佐の言葉は最後まで聞き取れなかった。

空中のシャーク隊を狙い撃ちできるのだ。ホッパー隊を外すとは考えられない。

「サットン隊の諸君、ジーン中尉だ。聞いている者がいるなら命令する。作戦続行!」

さすがに何の構えもなく通信を始めてはいないだろう。

ジーンはいるかどうかも分からない生き残りに指示を出した。




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