誰のせい?
モブ三人の説明書です
起きたら目の前にカメレオンがいた。
それも等身大。
さすがの俺もビックリだっての!
「よかったぁ!八樹、大丈夫!?」
「もう昼だぞ?おれたちより遅いなんて心臓に悪いわ」
そんなに?
俺が寝坊したらそれほどの大事件なの?
確かに人生で一度も寝坊はないけど。早起きが習慣になっていて、ジジイ呼ばわりされたこともあるけど。
カメレオンの獣人、カメオさんは医者でもあるらしい。人間は専門外だけど、俺が起きない理由はすぐに分かったと。
「「「【魔力枯渇】?」」」
診断結果は身に覚えのない病。
どうやら、俺はどっかで魔法を使っていたらしい。
どこで?え、いつ?
魔法って、バシュー!って好きな所に行けたり、ボワァッ!って敵を燃やすモンだろ。
それっぽいのは何も…。
「魔力なんて俺にあったんだな」
「僕にもあるかな」
「おーい。あんたら夢を見てないで、早くこの水に触れって」
カメオさんが渡してきたのは、桶に入った緑色の水。透き通っているから、藻で濁っているわけではない。
エメラルドグリーンだな。
手を入れると、金色の文字が浮かんできた。うわ、金箔だ。
「豪華な水だよなー」
「金箔を入れてるなんてね」
「俺ら貴重な体験したよな」
金箔はそのまま漂って、文字みたいな形になった。
カメオさんがそこらにあった、掌サイズの石にそれを書き写す。爪で。手入れを欠かさずしているんだな。
書き写し終えると、金箔は水に再び溶けていった。金が溶けるってことは王水?
いや、俺たちの手は溶けてないから、不思議水だ。
俺たち三人に、それぞれ石を手渡された。持った瞬間、うっすらと金色に光って色が変わった。三人とも色が違う。
「おれたちにくれるようだぜ。【スキル】っていうのが書かれてるから読んどけってさ」
「【スキル】?」
「昨日あんたが寝た後に聞いた。魔法みたいなものだって」
「僕たちにもあったんだねー」
俺の石は緑色。
で、ジーッと見つめてみると。
《名前》
天城 八樹(あまぎ やつぎ)
《性別》
男
《年齢》18歳
《スキル》
【転移】【錬金術】
…………これは……うん……。
「おお……すげえ!」
「【スキル】は何だった?僕は【二枚舌】と【障壁】」
「十哉らしいわ。おれは【擬態】と【言語共有】だった」
「お前らしいな。んじゃあ、先に謝る。ごめんなさい」
「「え?」」
いや、だってな。
「俺は【転移】と【錬金術】だった」
「「………【転移】?」」
「うん。【転移】」
「「…………テメェかぁあああッ!」」
「だからごめんって〜!」
不思議な世界に来ちゃったの、俺のせいかもしれない。
*****
「でもこれってどうやって使うんだ?」
「カメオさん曰く、種族ごとに違うんだってよ。おれたちの発動条件はなんだろうな」
「八樹、何かした?」
記憶を辿ってみる。
諦めて、空から落ちて、また諦めて、魔法陣に着地。あとホワイトアウト。
「特になし」
「デスヨネー」
「僕たちも心当たりないしね」
なんか手掛かりないか。
呪文か?「大いなる意志よ〜」とかそんな感じのセリフが必要なのか?
いや、俺はそんなこと一言も言ってないし。厨二病じゃないし。
「そういや、あんだけの金箔が浮かんでたのに、書かれていたのはコレだけなんだな」
「へ?一文字一文字が長い字体なんじゃないの?」
「いや、おれも見たけど、まだまだ他にも書かれてあったぞ。【スキル】の効果とか、成長したらどうなるとか」
「え、なんで書かれてないの?」
名前、性別、年齢、スキルのみ。
それ以上は俺たちには見えない。ってことは、カメオさんには見えていたのか。
もしかしたら、他の人なら見えるかもしれない。
「よし、誰かに聞こう」
「…確かに、それが一番早いよな」
「誰に聞く?」
「商人とかはどうだ?鑑定眼がすごそうだし」
「じゃあ、それで」
・
・
・
と、いうわけで。
やって来ました。「休憩中」の武器屋さん。初めて剣を見たわ。
中にいたのは昨日の天使(仮)だった。正しくはハクチョウの獣人だ。
「%×€Q#▲*H≪≒∥Z&?」
「この石を鑑定してもらえませんか?」
会話が成り立っている…だと…?
相変わらず、俺と十哉は彼らが何と言っているのか分からない。大地は【言語共有】のスキル持ちだから、多分そのおかげで分かるんだろうな。
天使(仮)、もといビアンカさんは紅い石のネックレスを握って、カッと目を見開いた。うわ、迫力あるな。
「$*W☆ゝF〆÷/€L#*£♭◎。&MO※【&¿%S¢】A⁂⌘∽K♧°±/T」
「【鑑定】っていうスキルで見たから、前よりか情報は開示されたって」
「「ありがとうございます!」」
まさかのスキル。そんなのもあるのか。誰でも持っていそうだ。みんな、こういうので職業も決めているのかな。
さて、一見何も変わらない石。どこまで情報が増えているのか。
《名前》
天城 八樹(あまぎ やつぎ)
《性別》
男
《年齢》
18歳
《種族》
異人
《スキル》
【転移】【錬金術】
《発動条件》
【転移】もう、ダメかもしれない
【錬金術】????
…おい………おい。
まさかのすぎるだろ…。
「何が増えてた?」
「おれは種族とスキル効果」
「あ、種族は一緒だ。僕は所持金」
「八樹は?」
「…種族と、スキル発動条件」
こんなのが。
こんなのが俺の魔法の呪文みたいなものになるのか。
変な長ったらしいのじゃないのは良いけど、もうちょっと夢があるのが良かったわ。
「ん、見てみろよ」
「…え、八樹がよく言っていることじゃん。口癖みたいなのじゃん」
「…まさか、おれのもそんな発動条件なのか?」
「じゃないか?よう、ナカーマ」
「まだ決まってねーよ!」
呪文唱えてみたかった…。
でも、これで帰る方法は分かったぞ。これで来たんだったら、同じ方法で帰ればいいんだ。
「よし!早速やってみるか!」
「待て待て待てぃ!」
「そうだよ!また空中に出たらどうするの!」
「…そん時はそん時」
また【転移】すればいいんだ。
別の場所だったとしても、俺たちが見たことがない場所の可能性が高い。
スカイダイビングは気持ちいいぞ。色々と諦めが肝心って感じになる。
「じゃ、『もう、ダメかもしれない』」
ホワイトアウト。
かーらーのー?
「…すまん」
「「ここどこだよー!!」」
赤と白のマーブル模様な森でした。
また別の世界?
こういう人たちってよくいますよね