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第7話 ちょっと期待した俺がバカだったわ

「ーーという訳で、ここを歩き回ってるんだけど、全然外に出れなくて困ってたんだよ」


 ハルトは今までの経緯をルウに話していた。

 自分が異世界から召喚されたらしい事、鑑定が使えるけど役に立たない事、この石造りの廊下をずっと彷徨ってる事、召喚される前の世界の事も少し話してしまっていた。


 ルウはそんなハルトの話しを真剣に、時折頷いたりしながら黙って聞いてくれていた。

 ここに来て始めてちゃんと話しを聞いてくれた人に出会えたからか、ハルトは普段より饒舌に、何も隠さず全部話してしまっていた。


 女の子に免疫のないハルトが、女の子相手にこんなに自分から話しをするなんて、今までなら考えられない出来事だったが、何故かルウには全部話せた。

 ハルトは話しをしてる間中、ずっと直視出来ないルウの事を横目でチラチラと観察していた。ルウはそんなハルトの視線には気付かず隣で大人しく座っていた。


 ルウの顔立ちはとても幼く、かなり童顔だった。

 ーーいや、実際には童顔と言うよりも年相応な顔立ちなのかもしれないが……。

 髪は長く腰まで届いていて、薄い藍色をしている。

 ただ、髪を伸ばしてるっていうよりも、伸びるに任せてほったらかしにしていたみたいなボサボサ頭って感じだが……。

 それに、身に付けている黒のワンピースっぽいのは、黒だからあまり目立っていなかったが、かなり汚れていて、何日? 何週間? かくらい洗っていないような、そんな感じの服だった。

 少し臭うような気もするが女の子にそんな事は言わない。口が裂けても言わない、言わないったら言わない。気付かないフリをするのが大人の対応だと思う。

 そして、ハルトが一番目線を向けながらすぐ逸らしてはまた向けてしまう、すごく気になる場所があったが、そこはとても控えめで、少し膨らみがあるかなって感じだが、服の襟元から微かに見える柔らかそうな部分が、とても触りたい衝動に駆られる禁断の場所だった。


 …………胸だった。


 男なんだから仕方ないだろ!!!

 ハルトは心の中で、自分で自分に言い訳をしていた……。そしてチラチラと今だに胸を見ながらAかな? Bは無さそうだけどーーと邪な思考を巡らしていた。ハルトは健全な男の子でした……。


 でも、やっぱりすごくカワイイ……。こんな可愛い子、世の中にいたんだなぁ……ってここ異世界だったか? でも、ルウみたいな美少女を見れただけでも来たかいあったなぁって思うよ。

 髪の色が薄藍色なのが、異世界なんだなぁって感じがするね。元の世界だとこんな髪色、染めないとならないだろうし。そういえば文系お姉さんも薄紫色の髪をしてたっけか?

 男の方は……忘れた。まぁいいや、男なんてどうだっていいよ。

 それより、文系お姉さんの名前、聞きそびれたなぁ。向こうから名乗ってくれれば良かったんだけど、最後は見捨てられて名前どころじゃなかったしねぇ。


 いい加減、これからどうするか考えないとなぁ。

 ハルトはどうするかなと考えながら、立ち上がってルウに手を伸ばした。

 ルウがハルトの手を取ると、ハルトはルウを引き起こして立ち上がらせる。

 立ち上がったルウと並んで立ってみてハルトは思った。


 ルウって背が低いんだな。俺より頭一個分は低くてすごくちっちゃく感じるよ。

 身体も細くて、胸は小振りだけど柔らかそうで……ってまた胸の事考えてるよ! ダメだ俺! 自重しろ! 自重! ジチョー!!


 ハルトは頭をブンブン横に振って邪な考えを吹き飛ばす。


「ハルト……どしたの?」


「えっ? あぁ、なんでもない、なんでもない。大丈夫だから」


 ルウの声が聞こえ、ハルトは慌てて返事を返して誤魔化した。

 何が大丈夫なんだか……。

 そこでルウを正面から見ていてハルトはある事に気付いた。


 ん? あぁ……なるほどなぁ。

 黒く薄汚れたワンピースに、腰まであるボサボサの長い髪、前髪も長いから目元まで髪が覆い隠して表情もよく分からない。

 そのうえ、髪の隙間から時折覗く真紅の瞳が煌めいていた。


 これじゃあ幽霊と間違えても仕方ないよね……。

 髪をどければ中身はすごい美少女なのに、この状態で彷徨いてたら、まんまどこぞのビデオから出てくるあの人みたいに見えるのが不思議だ。


 俺が幽霊と間違えて慌てても仕方ないよね? 俺が怖がりなんじゃないからね? 皆これ見たら絶対慌てるから! 俺だけじゃないんだからね!


 誰に言い訳してるのか、ハルトは自分のプライドを守るため、心の中で力強く言い訳していた。


 でも、こうやって並んで立ってルウの事を見ると、どこからどう見ても中学生ぐらいにしか見えないんだよね。

 記憶が無いから、聞いても年が分かるか微妙なとこだけど、たぶん13〜14歳って感じだよね?

 流石に胸もあるし小学生くらいじゃないだろうけど……。

 んー、最近は小学生でも巨乳がいたりするし、絶対違うとは言えないけど……、って、よく考えたら異世界だから元の世界の事は参考にならないか。


 でも、これって流石に……。異世界とか言っても……、やっぱりなぁ、やっぱマズイよねぇ……。

 中学生くらいの子に一目惚れして、胸ばっか見て、ーーこれじゃ、ロリコンとか言われても否定出来ないよ!!!

 俺が21歳でルウが13歳だったら、いったい幾つ離れてるの? 8歳も年下の子に手を出すとか犯罪じゃん!! 絶対逮捕されるよ! 俺!


 あぁぁ、別にルウに何かしたいとか、しようとかって事じゃないんだけど……。

 やっぱり……、ねぇ。

 いや、したくないって言ったら嘘になるけど、犯罪者にはなりたくないし……。

 でもでもーー。


 ハルトは顔面百面相をしながら一人で悩んでいた。

 ルウはそんなハルトを不思議そうに見ていたが、ハルトの様子が可笑しかったのか、ちょっとだけ笑顔を見せた。


 ルウの笑顔を少し見ただけで、ハルトの心臓は激しく鼓動した。本当にとても可愛い笑顔だった。

 身なりを整えて、あの笑顔を見せられたら、世の男共がこぞって求婚しに来るんじゃないかと思うほど、可愛らしい笑顔だった。


 高鳴る鼓動に思考を吹き飛ばされ、ハルトはようやくルウの手を握っている事に気付き、慌てて手を放す。

 すごく柔らかい感触が手に残り、ハルトはその余韻だけで幸せな気分になれた。


 ととーーとにかく、これからどうするか。

 んー、……あっ! そうだ!

 ルウに鑑定使ったら名前分かるんじゃないか?

 名前とHP、MPしか見れないけど、名前がルウしか分からないよりマシだよね。


「ルウ、ちょっと良いかな?」


「ん? ……なに?」


「俺が鑑定使えるのはさっき話したけど、それでルウのフルネームが分かると思うんだ。だから、これからルウを鑑定したいんだけど構わないかな?」


「……だいじょぶ」


「じゃあ、鑑定するね」


 一応ルウに了承貰ったし、鑑定してみるか。

 そして、ハルトはルウに能力鑑定(ジャッジステイタス)を使用した。

 同時にルウが「んっ!」っと小さく声を漏らし、顔を少し赤くしていた。


 ーーーーーーーーーー

 名前:ルウ


 HP:34/34

 MP:135/135

 ーーーーーーーーーー


 はっ? …………いや〜、ちょっと期待した俺がバカだったわ。

 ルウしか名前表示されてないし!!!

 それに、ーーなにこのMP量?

 この世界の一般人ってこれが普通なの??

 MP三桁いってるし! 俺なんか一桁だよ?

 なんなのもう!! あっ? あれっ??

 なんか頭がクラクラするーーあう、駄目だ。

 立ってら……れな……。


 ハルトは突然気を失い、ルウにもたれかかる様に倒れた。

 ルウがハルトの名前を呼ぶ声が微かに聞こえたが、すぐに意識は途絶えてしまった。

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