第5話 これからどうしよっかなぁ
え? ーー何がどうなってこうなった?
副団長が急に怒って部屋を出て行き、文系お姉さんまで一緒に部屋から居なくなってしまったため、春人は事態が飲み込めず呆然としながら扉を見ていた……。
えっと……えッ? ナニ? 何が起こった?
えっ? いきなり放置? 説明は?
ちょっ……え? えぇ?
と……とりあえず一回落ち着こう……。
すぅぅぅはあぁぁぁぁ。
スぅぅぅぅぅぅはあァァァ〜。
春人は兎に角一旦落ち着こうと深呼吸を繰り返す。
ちょっとだけ落ち着いた所で春人は何が起こったのか考えてみた。
えぇっと、確か文系お姉さんが鑑定とか言って石板を使って何かしたんだよな?
それから〜……そうそう、文系お姉さんが何か驚いてぇ…………んで、副団長が石板を見て怒って出て行ったんだよ……な?
じゃあ、原因はこの石板って事か……。
何……が書いてあるんだろ?
春人は自分の座っているベッドの上に投げ捨てられた石板を見ながら、怒っていた副団長を思い出し、石板の中身がすごく気になったが、同時に内容を見るのが少し怖く感じていた。
「あぁ〜もう! 悩んでても仕方ない、とりあえず見てから考えよう!」
春人は頭を右手で搔きむしりながらそう言うと、石板を手に取った。
えぇっと、ナニナニ……。
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名前:桜雷 春人
種族:異世界人
年齢:21
Lv:1
HP:33/33
MP:4/4
筋力:7
体力:7
魔力:2
速力:7
技術
物質鑑定Lv1
能力鑑定Lv1
自動翻訳MAX
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………………。
……えぇ〜と、よくワカラナイナ。
ゴシゴシゴシ……、春人は目を擦って、もう一度石板を見直した……。
ーーえぇっと、……ハハ……ハ……、なんじゃコリャァーーーーー。
えっ? ナニコレ? マジで?
いやぁ、どうみてもコレ……数値低すぎる気がするけど……。
あっ! あぁ、多分普通の人はステイタス1とか2なんだよ。
だからこれでもキットタカイホウ……って、んなわけあるかぁぁぁぁ。
マジか! マジですか!!
どう見たってコレ最弱だろっ!
しかもスキルが……鑑定だけしかないじゃんかよぉぉぉオオォォ。
こんなんでどうすんだよ!
そりゃ怒るわ!! 勇者召喚して期待してたら無能とか! あ・り・え・ねぇェェェーー。
しかも何処へなりとって? ここ何処だよおォォォ。
マジか? マジか? どうすんだああぁぁコレぇぇぇ。
春人は頭を抱えてベッドをゴロゴロ転げ回っていたが、あまりゴロゴロしすぎてベッドからドスンと落ちて背中を打ってしまう。
「痛って! あいたたた、床石かよ」
春人は背中を摩りながら冷たい石の床に座り込み、やっと少し落ち着いたのか長い溜息を吐いて騒ぐのを止めた。
はあぁぁぁぁ…………。
もう一度溜息を吐くと、一緒に床に落ちた石板を両手で持って内容を見る。
何度見ても変わらない内容に意気消沈しながら、俺の夢がぁぁぁと呟く春人。
と……とりあえず、俺って一応勇者なんだよな? 文系お姉さんは勇者様ってずっと言ってたしな。
石板にはLv1って書いてあるから……、レベルが上がればやたら成長してすごく強くなったりするとかか?
と言ってもレベルってどうすれば上がるんだ?
やっぱりゲームみたいにモンスターとか倒して経験値積めば上がるのか?
でも経験値表記も無いしなぁ? ーー仮にモンスター倒しても、すぐにレベル上がらなくて経験値増えてるのかも確認出来なかったら判断つかないよねー。
んぅ〜ムムムム、はぁワカラン、考えてもワカランよ。
こういうのは、この世界の人間に聞かないと分からないわ……。
でも、色々聞けそうな人は居なくなっちゃったしなぁ。
あの様子じゃ戻って来なさそうだし……どうしたものか?
とりあえず、先に他のステイタスをちゃんと見てみるか……。
ステイタスとか見れるのはゲームみたいだけど、能力が分かれば自分の向き不向きとか判断しやすいし、今後の方針とか決める役にも立つかもしれないしな。
まずはーー名前、種族、年齢、Lvは良いとして…………って、種族:異世界人って! どんな種族だ、オイッ! ーーま、まぁ良いや。ここは深く考えないでおこう。
えっと、HPとMPは、多分読み方もヒットポイントとマジックポイントとかで良さそうかな? 意味も多分ゲームとほぼ一緒と考えて良さそうかも。
HP0になったら、やっぱり死んじゃうんだろうなぁ……。ゲームみたいにやり直せないし、死なない様に気を付けよう。
でも、HP33でLv1って考えると悪くなさそうな感じだけど、ちょっと強いモンスターとかに攻撃されたら即死しそうで微妙な感じだよね……。モンスターがいるかは分からないけど勇者とか必要とされる状況ならモンスターくらい居てそうだしーー。
次は……、このMP4って……4ってナンカ色々微妙な感じが……。
これってーー魔法覚えられたとしても、多分……イヤ、きっと1〜2回使えるかどうかって感じだよね!! 俺の魔法をバンババン使う夢も叶わないよね! もう次々!
はぁ、次はーー筋力、体力、魔力、速力の4種類か。
基本パラメーターって所だろうな。
この世界の一般人がどれくらいのステか分からないけど、なんか一般人より弱そうダヨネ……。
魔力が2って……もう魔法は諦めろって事だよね? 夢は叶わないから夢なんだよってどっかの偉い人も言ってた。よね? タブン。
それに他も全部7って……向き不向きやらゼンッゼン、ワカラン!
なにこの全部7って! 汎用型すぎて一番役に立たないじゃん。コレって攻撃も防御もスピードも平凡で器用貧乏な一番ダメなタイプじゃん。
耐えれない、避けれない、火力もないの三拍子揃ったパーティーからも嫌われるダメな子の典型じゃないかぁ!
見れば見る程落ち込んでいくよ……。
最後は、ーー技術か。
物質鑑定、能力鑑定、自動翻訳の3つか。
この物質鑑定と能力鑑定は、字面から大体意味は分かるわ。
要は鑑定スキルで、物の鑑定とステイタス閲覧が出来るって事だろ。
どうやって使うかはワカランけど……。
後は、自動翻訳かーー。
翻訳ってなってるし、異世界で普通に話し通じてたから言葉が分かるスキルなんだろうけど……。
トランスレートってナンダ? 他が英語っぽいからこれも英語か? 英語はいつも赤点だったから全然意味が分からないよ。
というか、今気付いたけど石板って書いてる文字とか日本語に見えるんだけど、言葉も文字も日本語ならこのスキルいらなくない?
それともスキルの効果で日本語に見えてるだけとかか?
何か自分でスキル使ってる訳じゃないから役に立ってるかどうかも分からないなぁ。
ん〜、もうこのスキルは放置でいいや。
まぁ、とりあえず一通り見たけど、俺ってイラナイ子じゃない?
勇者以前にこの世界でやってける自信ナイヨ。
欠陥品とか言われたけど、これは否定出来ないわぁ。
もうホント帰りたいんだけど、帰る方法って無いの?
あんな感じじゃ、元の世界に帰してって言っても相手にしてくれなさそうだしなぁ。
これからどうしよっかなぁ。と床に座り込んだまま春人は頭を抱え込んだ。