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第4話 貴様は何処へなりと失せるが良い!!

少し前に気付きました。

遅くなりましたがブクマ感謝です。

纏った時間が取れず更新遅くなりました。

今後ともよろしくお願い致します。

『ーースキルを構築ーー定着に失敗、放出します。スキルを構築ーー定着に失敗、放出します。スキルを構築ーー定着に失敗、放出します。スキルをーーーー』


 あぁ〜? ナンカ、ゲームバグッてる? んぅ〜ネムイ、あとでイイヤ……オヤスミィー……。


 目を開ける事も無く考え、春人は再び深い眠りに落ちていく。

 ほんの少しでも目を開けていれば事態の異常さに気付いただろうが、春人は何一つ気付かず眠り続ける。


 自分の体が青い光に包まれ、空と雲と流星しか見えない上空を落ちているとは露程も感じずにーー。



********



 んぅ? ……ん〜。

 春人は、ベッドでモゾモゾと蠢きながら鈍い思考で考えていた。

 ん〜? ベッドの中かぁ? いつ布団で寝たんだろ……? まぁイイヤ、どうせ休みだしもう少し寝よ。

 そしてまた微睡みの中で眠りに落ちていく。


 いつもより堅いベッド、薄いシーツと、小刻みに感じる振動等、少し意識を向ければ何かオカシイと感じ取れるのに、春人は暢気に眠りこけていた。


 ガチャガチャと金属の鳴る音を響かせながら部屋に誰かが入って来るが、鈍感なのか大物なのか、春人は全く気付かずに未だ眠りの中だった。


「まだ起きないのか、こいつは……」


 全身鎧(フルプレートメイル)で身を包んだ男……、儀式部屋で副団長と呼ばれていた男はそう呟くと側にいたローブの女に起こすよう命じた。

 ローブの女も儀式部屋にいた者の一人だったが、今はフードを外しており女性である事は分かった。

 ローブの女は、ベッドで未だ暢気に眠り続ける春人の側に近づくと体を揺すって起こそうとする。


「起きてください。おきて……」


「ん〜〜、あと5ふ〜ん……むにゃ……」


 1人暮らしの春人を誰かが起こす時点で、十分過ぎる程の異常事態だというのに、間抜けでテンプレな返事をしながらシーツを頭から被り丸くなる春人。


 流石に少し頭に来たのか、副団長は春人からシーツを剥ぎ取り怒鳴る。


「いい加減に起きろ!! いつまで寝ている気だ!」


 いきなりシーツを奪われたのと、男の怒鳴り声に驚いて春人は飛び起きる。

 半分パニックになりながら春人は視界に、全身鎧(フルプレートメイル)を着た男とローブの女を捉えていた。


 え? え? ーーえっ?

 何で俺の部屋に知らない奴が?

 え? 何がどうなって?

 春人は完全にパニックになって思考は上手く働かなかった。


「まずは落ち着いてください。勇者様」


 ローブの女がそう言うと、春人はそちらを見て状況を理解しようと努力した。


 ローブの女は、20代半ばくらいだろうか?

 春人より少し年上のお姉さんといった感じがした。

 ローブの所為で体の線は分からず、じっとよく見れば胸の膨らみが分かる程度だった。

 髪は薄紫色で緩く三つ編み状に編んでいて、髪先を黄色いリボンで束ね、いかにも文系のお姉さんといった印象を受けた。


 春人が胸元に視線を向けたままでいると、文系お姉さんは少し頬を赤らめ、左手で胸元を隠すように右腕を掴み少し身動いだ。

 胸元を隠されて、やっと春人は自分が何処を凝視していたのか理解し、ばつが悪そうに視線を全身鎧(フルプレートメイル)の男へと向けた。


 全身鎧(フルプレートメイル)で身を包んだ男は30過ぎだろうか?

 赤茶色の髪で前髪は少し長めだが、後髪は短く切り揃えていた。

 鋭く青い眼が冷たい印象を与え、緩みない顔付きから厳しい人間性を感じた。


「すぐに鑑定しろ! いつまでもこんな場所にいては始まらん!!」


 副団長が文系お姉さんに命令する。

 文系お姉さんは机に置いていた石板を手に取ると、春人のすぐ側まで近寄って何かをしようとしていた。


「ちょッ、ちょっと待って! 何する気だよ!! あ、あんたらいったい何なんだよ!? 何で俺の部屋にいるッ! ーーって、アレッ?」


 何かされそうな予感を感じ、春人は慌てて口走るが、部屋の事を言及した辺りで知らない部屋に居る事に気付いた。


 ーーって、俺の部屋じゃ……ない? もしかして誘拐されたとか!? イヤイヤイヤ……そんな訳ないだろ。俺なんか誘拐する価値ないだろ……。

 で……でも、アイツはヤバイ! ヤバすぎるよ!! 誘拐犯が鎧のコスプレとかありえなくね?

 やたら偉そうだし、目付き鋭すぎてメッチャ怖いんですケド!


「いちいち騒ぐな! 貴様は黙ってろ!!」


「は、ハイぃぃ!」


 副団長が怒気を孕んだ声で一喝すると、春人は条件反射的に返事をして縮こまってしまう。

 それを見た文系お姉さんは、小さく溜息を吐くと副団長へ進言する。


「副団長、ここは私が対応します。あまり脅されては勇者様の協力が得られなくなるかもしれません」


「フン、ーー好きにしろ」


「感謝します」


 えっと、大丈夫そうかな? もう怒鳴られたりしないかな?

 まだこっち睨んでるし、あの人ホント怖いんだけど……。

 俺って小心者だし、怒鳴られるだけでチビりそうになるから勘弁してほしいよ。

 それと、気のせいか聞き間違いかと思ってたけど、文系お姉さんの言葉に勇者とか何とか聞こえるのは、俺の事じゃないですよね?

 流石に聞いて違ってたら恥ずかしすぎるからあえて聞かないけど……。


「では、時間がありませんので、まずは鑑定を行います。勇者様は手をこの石板に置いてください。鑑定後に移動しながら状況の説明を致します」


 文系お姉さんはそう言って石板を差し出して来る。


 ーーってこの人、やっぱり勇者とか言ってるよ!

 この状況で俺以外の人に言ってたらビックリだよ。

 ナニコレ、伝説の勇者様助けてってノリですか?

 アイツが鎧着てるのは、コスプレじゃなくて異世界とかってオチですか?

 俺の時代キタ? ついにキチャッタノカ?

 フフフ……勇者召喚とか言ったらチートな能力で無双して、女の子にキャーキャー言われてモテまくりしかないよね!


 春人が妄想を膨らませ、ダラシなく顔を緩ませていると、文系お姉さんが咳払いを一つして石板に手を置くよう催促してきた。

 慌てて春人は顔を引き締めて、石板へと右手を置いた。


「では、ーー鑑定します」


 文系お姉さんがそう言った後、鑑定(ジャッジ)と一言発すると、石板は白く光を放ち表面に文字が浮き上がってくる。

 少しして光が収まると、文系お姉さんは終わりましたと言葉を発して石板の文字を確認し始めた。


 春人はと言えば、また妄想の世界に旅立ったらしく、ヘラヘラと緩んだダラシない顔をしていた。


「こ……、これ……は……」


 文系お姉さんの驚いた声が聞こえた。

 その声音には残念そうな気落ちした様な意味合いも含まれているようだったが、妄想中だった春人には汲み取れなかった。


 おっ? 何か驚いてたな。ヤッパリ勇者のチートな能力に声も出ないって感じかな。

 うんうん、異世界召喚とかずっと望んでたし、ゲームやアニメでもソレ系統が好きだったからネタが分かれば気分もアガルな!

 やっぱ、魔法とかも使えるのかなぁ? 俺も使ってみたいなぁ、魔法ぅ。


 春人がチートな能力でカッコよく活躍する自分の将来を夢想している時、副団長が文系お姉さんから石板を取り上げて渋面で内容を確認していた。

 副団長は石板の内容を確認し終わると、眉間に皺を寄せ、さらに厳しい顔付きになって石板を春人の座っているベッドへ投げ捨て言い放つ。


「とんだ欠陥品だな!! 異世界の勇者などに頼って何人死んだと思っている!」


 副団長の言葉は、春人だけでなくここに居ない誰かにも向けられていたが、それが誰に向けられた物なのか気にする余裕もないうちに、部屋の出口へガチャガチャと音を鳴らしながら向かい、扉に手を掛ける。

 春人は強制的に夢想から引き戻され、副団長の言動に鳩が豆鉄砲を食らった様に呆然としながら眺めるしか出来なかった。


「貴様は何処へなりと失せるが良い!!」


 その言葉を最後に、副団長は文系お姉さんに顎で部屋を出るよう促すと扉の向こう側へと消えていった……。

 文系お姉さんは、申し訳なさそうな悩む様な微妙な表情を浮かべたまま春人を見て、一瞬声を掛けようとするが言葉を飲み込んで扉の前まで進むと、春人に一礼だけして副団長の後に続いて部屋を出て行く。


 そして部屋には春人だけが残された。

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