第31話 俺のスキルって
ブクマ感謝です。
ブクマや評価を頂けると励みになります。
更新は不定期ですが、今後も頑張っていきますのでよろしくお願いします。
「本日はどういったご用件でしょうか?」
窓口に近づくと、受付けの女性が声をかけてくる。
受付けには、パッと見た感じで、歳はだいたい17〜18歳くらいだろうか? まだ子供っぽさの残る顔立ちの女性が居た。
冒険者組合の制服か、職員らしき人が一様に着ている、緑を主体にしたスーツっぽい感じの上着とスカートを履いた、桃色セミロングの愛くるしさの残る、なかなかに可愛い感じの子だった。
まぁ、ルウみたいに『こんな美少女が世界には居るのか!』って程ではないけど、普通に街中を歩いていたら振り向いてしまうくらいには可愛い子だとは思う。
その中でも特に目を惹いたのは……。
ーー胸が、デカイ!!
この世界に来て、初めて見る胸のサイズだ。
これは、確実にEは……、いや! Fはある!
最低でもFカップは絶対にある! 俺の目に狂いは無い!!
っと、また脱線してしまった。
どうも女性の胸とか裸とかを考えると夢中にーーハッ! 何か周囲から刺す様な視線が!
うわぁ、何か周りの男共から殺気がムンムン漂ってきてるよ……。
この子に手を出したらコロス! みたいな感じがヒシヒシと伝わってくるよ……。
「どうかされましたか?」
再び声をかけられて、ハルトは我に帰る。
「あっ、いやっ、何でも無い、何でも無い」
この子もこの子で無防備と言うか何というか……。
俺があれだけ胸を凝視してても気づいてないのか、気にも留めないのか、純粋と言うか何と言うか……。
しかし……、ほんとに凄いな……。
胸が大きすぎて制服の胸元が弾けそうな感じになってるし、しかも服がパツパツになってるから服の胸部分には皺一つ無いよ。
って、また一段と周囲の殺気が濃くなってるよ……。
俺、無事にここから出られるんだろうか?
「君、冒険者登録はここで良いのかな? よければ2人お願いしたいのだが」
ハルトが不毛な思考を繰り返し、中々話しを進めないので、アキトが後ろから受付の子に話しを切り出した。
「はい、冒険者登録ですね。こちらで伺いますね。お2人という事ですが、どなたから登録されますか?」
「ハルトから先にどうぞ、僕は後でかまわないよ」
「えっ? あ、あぁ、いや、先にそっちからどうぞ……」
日本の習慣か、ついつい人に譲ろうとしてしまう悪い癖が出る……。
こういう時、素直にありがとうと言えない性格が少し恨めしい。
「ハルトは謙虚だね。大丈夫、僕の事は気にしなくて良いから。先にハルトの登録を済ませてしまおう」
「あぁ、まぁ、そういうなら……」
俺は渋々といった感じでアキトの提案を受け入れる。
「それでは、ハルト様、でよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
「では、ハルト様の登録を致しますので、幾つかの質問に答えて頂けますか? もし回答が他者に聴かれては困るなどの不都合がございましたら、別室での登録も可能ですが、どうされますか?」
「えーと、とりあえず質問聞いてみないと分からないので、ここでかまわないです」
「それでは始めますね。まず登録するお名前はどうされますか?」
「ん? どうされますか? って言うのは?」
「登録名は、偽名でもニックネームでも可能です。大半の冒険者の方はニックネームで登録されていますね」
「あー、そうなんだ。じゃあ『ハルト』でお願いします」
「承りました。次の質問ですが、ハルト様の開示可能な情報で、得意な武器や魔法、技術などはありますでしょうか?」
「えっと……? どういう意味?」
「ここで伺った技能は、組合の方で開示される情報になります。臨時のパーティメンバーを探す際や、依頼を受ける際に参照されます。珍しい技能や必要とされている技能を登録されていると有利になりますが、同時に他者に能力を把握される要因にもなりますので、皆様、開示されても問題の無い技能を登録されてますね」
「んー、魔法や技術って言われてもなぁ……。使える技能ってのは無いわぁ。あっ、しいて言えば短剣を持ってるくらいかな……」
「それでは、短剣使いとして登録する形でかまわないでしょうか?」
「あー、そうだねぇ」
「はい、承りました。質問は次で最後になりますが、万が一、ハルト様がお亡くなりになられた場合、訃報をお伝えしたい相手は居ますでしょうか?」
「お亡くなりって……、初っ端から縁起でも無いな!」
「申し訳ありません。規則ですので……」
「いや、まぁ、別に構わないんだけど……」
しかし、訃報を伝えたい相手か……。
って言われても、この世界で知り合いなんか殆ど居ないしなぁ。
……クリスティーナさん……、は反対されてるし勝手に名前だすのも気が引けるしなぁ。
ルウ……は、もし俺が死んで、ルウが知ったら……。
ルウは悲しむんだろうか?
それとも……。
あぁ、もう、やめだやめ、死んだ後の事を考えたって仕方ないだろ!
とりあえず、何かあった場合、ルウには伝わる様にしておくべきだろうな。
「えっと、南区画の北区……で良いのかな? そこにあるクリスティーナって人がやってる雑貨屋さんに、ルウって女の子が住んでるんだけど、その子には伝わるようにして欲しいかな」
「クリスティーナ・メイプルさんの雑貨屋さんですね。そこに居られるルウさんと言う女性にお伝え出来るよう登録しておきます」
「えっ? ……あっ、はい。そこで、多分間違いないと思います……」
えっ? メイプルって……クリスティーナさんってそんな名前だったのか……。
いやいやいや、明らかに名前詐欺でしょ?
クリスティーナ・メイプルなんて、名前だけ聞いたらすごい美人か可愛い女性を想像してしまうのに、名前で幻想を抱いて会いに行ったりしたら確実死ねるよ?
この名前……いったい今迄何人の犠牲があったのやら……。
「次に、訃報に関する説明の補足ですが。これからお渡しする国家証と呼ばれる銀製のプレートが冒険者の証となり、所有者が亡くなりますと、プレートが銀色から銅褐色へと変色します。銅褐色になったプレートが何処かの冒険者組合に届いた時点で死亡確定、訃報をお伝えする事となっています。ただし、何らかの理由でプレートが届かない場合や、訃報をお伝えする相手が見つからない場合は、訃報が伝わらない場合もありますのでご理解ください」
「あぁ、その時は仕方ないですね。でも、その国家証だっけ? 死んでないのに色が変わったり、失くした場合はどうなるの?」
「国家証と所有者は魔法による契約で結ばれていますので、亡くなる以外で変色する事はありえません。過去の事例では、一度心臓が止まり銅褐色となったあと、再び息を吹き返した際に銅褐色から銀色へ戻ったと記録されています」
「へー、何かすごいねー」
「次に、国家証を紛失した場合についてですが。最寄りの冒険者組合にて再発行が可能となっています。ですが、その場合、前回組合で記録した時点の物が発行されますので、紛失時に受注していた依頼は完遂していたとしても失敗扱いとなり、相応の名声値が減算されますのでご注意ください」
「名声値?」
「今後、ハルト様が冒険者となられ依頼を完遂した際に、その依頼に応じた名声値を獲得する事になります。名声値は冒険者としてランクや信頼度を表す指標となっていますので、当然、名声値の高い冒険者が優秀で信頼出来る方となり、難度の高い依頼の受注や、報酬の高い依頼を優先的に受ける権利を得る事ができます。ただし、依頼を受注した後の依頼放棄や、依頼を完遂しても質が悪すぎる場合などは、名声値が減算されますのでご注意ください。あまりに減算が続いたり、冒険者として相応しくないと組合が判断した場合などは、最悪国家証の剥奪もありますので、依頼を受注する際はご自身の能力で完遂可能かどうか吟味したうえでお願いします」
「なるほど……、教えてくれてありがとう」
「では、最後にこちらの国家証をお渡ししますので、手に持たれた状態で、契約と詠唱願います」
そう言われて渡されたのは、パスポートサイズの銀製のプレートだった。
そこに書かれていたのは……。
ーーーーーーーーーー
ブライス帝国・国家証
冒険者ランク:
名声値:0
名前:ハルト
職種:短剣使い
ーーーーーーーーーー
ん? 冒険者ランクだけ空白だな。
裏面は。
ーーーーーーーーーー
技能:短剣
ーーーーーーーーーー
って裏面ってこれだけ? 随分、大雑把なんだなと考えながらも、少しだけ緊張を和らげる為に大きく息を吸い込んだあと、先程伝えられた言葉を詠唱する。
「契約」
ハルトが詠唱すると同時に、少し眩しさを感じる光がカードから溢れ出し、暫くすると光が消える。
「ありがとうございました。それでは、一度国家証をお預かりします」
「わかりました」
そう言って国家証を受付の子に渡す。
「あと少しで登録が完了しますので、今暫くお待ちください。国家証についてですが、名称の通り、発行した国内でしか使用できません。他国に行かれる際は、国毎に個別に国家証を発行する必要がありますのでご注意ください。……これで登録は完了です。先程の契約でハルト様との紐付けが完了しておりますので、くれぐれも紛失なされないようにお気を付けください」
再び国家証を受け取ると、もう一度プレートの表示を確認する。
ーーーーーーーーーー
ブライス帝国・国家証
冒険者ランク:F
名声値:0
名前:ハルト
職種:短剣使い
ーーーーーーーーーー
何か、さっき空白だった冒険者ランクに表示出てるな。
Fってあんまり良く無さそうだけど、まぁ、登録したばっかだと皆Fランクからなのかな?
んで、裏面はっと……。
ーーーーーーーーーー
Lv:1
HP:33/33
MP:4/4
筋力:7
体力:7
魔力:2
速力:7
技能:短剣
ーーーーーーーーーー
……………………はぁッ?
えっ? 何、コレ? どっかで見た事あるものが表示されてるけど……?
えっ? こんなのでステイタス分かるの?
いやいやいや……、じゃ、じゃあ、俺の鑑定スキルって一体何?
俺の鑑定より高性能だよ?
鑑定レベルあげれば、いつかは使えるスキルになるかと思ってたのに……。
俺のスキルって、なんの役に立つんだよおぉー。




