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第17話 すっかり忘れてたぁー

いつも読んで頂きありがとうございます。

ブクマして下さった方に感謝を。

 抜道は、今迄の通路と違って薄暗く、少しジメッとした感じがして、扉から先は下りの階段が一つ伸びているだけだった。


 ハルトは、マリアンさんを置いて逃げるしか出来ない自分が情けなくて仕方なかった。


 本物の勇者なら、こんな場面は命を懸けてでも助けに戻るだろうーー。


 でも、俺はーー。

 死ぬかもしれない場所に向かうなんて出来ない……。

 死にたくないし、痛いのだってイヤだ。

 それに、マリアンさんは自分で残ったんだ……。

 だから、見捨てた訳じゃない……。

 扉だって開かないし、先に進むしかないんだから、仕方ないじゃないか……。

 俺は、一緒に逃げようって何度も言ったんだ……。

 それでも残ったんだから、俺が悪い訳じゃないよ……。


 ハルトは、マリアンさんを置いてきてしまった事に罪悪感を感じていたが、それから逃れる為に自分を正当化し、理屈を捏ねて罪悪感を忘れようとしていた。


 そうこうしているうちに、階段が終わり広い通路に出る。


 通路の中央には水が流れており、膝上くらいまでの深さがあった。

 その両側に、人が3〜4人並んで歩ける程の側道があり、2人はその片側の側道に立っていた。


 ここが、マリアンさんの言っていた水路みたいだな。

 水は左から右に向かって流れているから、右に、水の流れていく方に向かえば良いんだよな?

 でも、ここ、城や街の地下にあるってことは、下水ーーとかじゃないよな?

 ーーあぁ、でも変な匂いや臭さも無いから、飲み水とか生活用水に使う水を川とかから引いてるのかもしれないな……。

 ただ、地下で水があるせいか、ジメジメして服が肌に張り付いて気持ち悪いんだけど……。


 そんな事を考えながら、ルウの方を見てみると、ルウも張り付く服が気持ち悪いのか、胸元やスカートを引っ張ったりしていた。

 ハルトは、そんなルウの様子に少しドキドキとしつつも、進むべき水路の先を見た。

 薄暗さのせいで、水路の先はよく見えなかったが、だいぶ先が長そうな予感がした。


 これーーまた何時間か歩き続けないと外に出れないんじゃないか?

 帝都がどのくらい広いのか分からないけど、街の外までって事は、最低でも街の広さ分は歩かないといけない訳で……。

 なんか、また歩かないといけないって思ったらゲンナリしてきたわ……。

 ほんと、歩くのってダルいわ〜。

 せめて、自転車くらい欲しいよなぁ。


 水場の横にいたせいか、思い出した様に喉の渇きを感じ始めたが、この水が飲めるのか分からず、でも水が飲みたくて悩んだ。


 あぁ、何か喉が渇いた……。

 もうずっと歩きっぱなしだし、良い加減喉が渇いたよ……。

 この水ーー飲んでも大丈夫なんだろうか……?

 見た目は綺麗な感じするけど……。

 でも、綺麗に見えるだけで、ホントは下水だったりしたら嫌だなぁ……。

 こんな時、マリアンさんが居てくれたら……。

 ーーマリアンさん、大丈夫かな……。


 あぁ、悩んでても仕方ない。

 一応水は綺麗だし、喉も渇いたし、まだ歩かないといけないのを考えたら我慢なんて出来ないよ。

 とりあえず一口飲んでみようーー。


 そう決意すると、ハルトは水を両手で掬い、恐る恐る喉内に水を流し込む。

 ゴクッと水を飲み込んでみるが、別段変な味がする訳でもなく、普通の水に感じた。

 多分大丈夫、飲めそうだと思うと、ハルトは水を手で掬ってゴクゴクと飲みほした。


「あー、生き返ったあぁ〜」


 ハルトは、たっぷりと水を飲んで落ち着くと、袖口で濡れた口周りを拭う。


「多分大丈夫だと思うから、ルウも水を飲んだら?」


 ハルトに促されると、ルウは水際にしゃがんでハルトと同じ様に手で掬って水を飲んだ。


 さてっと、どのくらい歩かないといけないのか分からないけど、進むしかないしな……。


「ルウ、そろそろ行こうか?」


「……うん」


 そして2人は水の流れに従って側道を歩きだす。


 変わり映えのしない水路を黙々と2人は歩き続けた。

 途中、細い横道がいくつかあったが、そちらにも幅の狭い水路が伸びていて、この広い水路から別の場所に流れていくものや、逆にこの広い水路に流れてくるものもあった。

 行こうと思えば、横道の方にも行けるだろうが、どこに繋がっているかも分からず、行く必要も無い為、横道は全て無視して真っ直ぐ歩いてきた。

 あれから小一時間は歩いただろうか……、先の見えない水路を歩き続け、流石に疲れたハルトはルウに声をかける。


「ルウ、そろそろ休まない? 流石に疲れたんだけどーー」


 そう言ってルウを見ると、ルウは全然平気そうな顔をしていた……。


 ーーって、何で全然疲れた様子がないの??

 ルウってどんだけ体力あるんだよ……。

 またステイタス差とかってやつか?

 マリアンさんの筋力倍みたいなのと一緒で、ルウの体力値が俺の倍以上あるとかってオチか?

 俺が貧弱なだけか?

 こんな女の子より劣る俺っていったい……。


 はぁ、俺の鑑定スキルがもうちょっと使えたら、ルウのステイタス値も見れたんだろうなぁ……。

 まぁ、分かったからって、どうせ俺のステイタスのショボさにゲンナリして落ち込むだけなんだろうけど……。


 とりあえず、ハルトは壁際に背を預けて座ると、その隣にルウも座り込む。


 ドキドキドキーー。

 ーー近いなぁ。

 ルウが隣に座るのは良いんだけど、距離が近くて何か意識しちゃうんだよな……。

 肩が触れそうな距離で、ルウの息遣いが聞こえて、何かドキドキしてしまうんだよ。

 それに、可愛い服に着替えたせいでスカートの裾や脚が余計に色っぽく見えて困る……。

 こんな時、気軽に女の子に触れたり、肩に手を回したり出来る奴が羨ましく思うよ。

 多分ルウは、肩に手を回したりしても怒らないとは思うけど、俺にはそんな度胸全然ないや。

 はぁー、ホント色々情けないよな、俺って……。



********



「さて、ボチボチ行きますかぁ」


 5分程休憩して、少し疲れが取れたところで、ハルトは立ち上がりながら誰に言うでもなく呟いた。

 ルウは、ハルトが立ち上がるのを見ると、すぐに立ち上がり、ハルトの次の行動を待っていた。

 ハルトがルウに「行こうか」と聞くと、ルウは頷いて、歩き出すハルトの後へと続いた。


 外までって、まだまだだいぶありそうだな……。

 少し歩いただけだけど、城の中も結構広かったし、地下だってかなりの時間彷徨った。

 この水路もだいぶ歩いたつもりだけど、もしかしたら、まだ城の下って可能性だってあるかもしれない……。

 下手したら、出口まで1日とか2日とかかか、る……、かも……!?


「ああぁーー!! しまったあぁ〜。あー、やっちまったぁ。食い物の事、すっかり忘れてたぁー」


 ハルトは、突然思い出した様に叫ぶと、頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「まじやべぇ、これ、水路出るまで飯抜きかよ! 1日とか2日ならまだしも、それ以上かかったりしたら洒落にならねえぞーー。あぁ〜、マリアンさんにどのくらい歩かないといけないのか聞いておけば良かったぁ……。最悪、水だけで数日耐えないといけないのか……」


 水場はあるから水は飲めるし、トイレも水路から別の場所に流れて行く横道で済ませてるから、今のとこ何とかなってる。

 ーーいや、まぁ、トイレした後の水が流れて行く先で飲み水とかに使われてない事を祈るしかないけど……。

 仕方ないでしょ! ずっと我慢なんて出来ないんだし、自分が飲んでる水の方に流れて来たら嫌だもん!

 こうなったら、もう出来るだけ早く水路抜けて、他の街とかどっか飯食えるとこ探さないと!

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