第13話 こういうのがお好きかと思いましたが
星球大賞に応募しました。
趣味の範囲を抜けない作品なので経験値稼ぎ的な感じの応募です。
どんな評価になるやら……。
ハルトは元居た場所に戻ると、床に座って考え事をしながら待っていた。
あーっ、さっきのでマリアンさんに会うのが無茶苦茶気不味いなぁ……。
やっぱり何も無かったみたいな顔して、さっきの事には触れない様にするべきかーー。
でもでも、触れなかったら触れなかったらで、覗いた癖に反省もしてないのかって軽蔑される可能性だってある訳だしーー。
やっぱり、2人が戻って来たら全力で謝るのが一番かーー。
しかし、変に謝ったり言い訳するのも嫌われそうだしーー。
というか、ケダモノって言われてるし、もうすでに軽蔑されてるよね?
あーッ、もうどうしたら良いんだよ!!
ハルトがマリアンさんとルウにどう接したら良いかウダウダ悩んでる間に、奥から足音が近づいてくるのが聞こえた。
ゲッ、もう戻って来た!?
まだどうするか決まってないし、心の準備もまだだって!
ハルトは今にも逃げ出したい気持ちを抑え、俯きながら足音が近づくのを待っていた。
足音は、ハルトのすぐ近くまで来ると止まったが、声をかけられる訳でもなく、ただ沈黙と重い空気が辺りを支配する。
えっと……、何この重い空気……。
むっちゃ気不味い……。
恐る恐る、ハルトはゆっくりと視線をあげていく。
足が見え、太腿、腰、胸と少しづつ上を目指して視線をあげるーー首、顎、唇とーー目が合う。
ハルトは、慌てて視線を床に戻す。
うわっ! すごい睨まれてる!!
ダメだ、完全に怒ってるよ!
無言がよけいに怖いよ!!!
あーー! 何とかしないと!!
そうだ!!!!
兎に角謝ろう! 謝りまくれば許して貰えるかも!!
「ご……ごご……ゴメンなさいー! 覗くつもりは無かったんです。 あれは! そのっ、事故というか……、ホントに覗くつもりなんて全然無くて!! えとッ、ゴメン、ホントにゴメン。許して下さい!!!」
ハルトは、正座して両手を床につきながら、ひたすらペコペコと頭を下げて土下座する。
視線を上げる事も出来ず、床をじっと凝視しながら相手の言葉を待った。
頭の上の方で、呆れたような感じの深い溜息が聞こえた。
「……ハァー、分かりました。……ルウさんがあまり気にされていないようですし、こんな事をしている時間もありませんから、もう結構ですよ。ーーですが! 二度と覗きはしないで下さいね!!」
「ハイ……、ごめんなさい……」
正座してショボーンとなりながらハルトは謝った。
ハア、何とか凌いだ……、よくやった、俺。
そういえば、さっきからルウが静かだけど……。
ハッ! もしかして覗いたから口もききたくない状態とかなんじゃ!?
慌ててハルトはルウに視線を向ける。
が、ルウはキョトンとした感じでハルトを見ていた。
あれっ? 怒ってない?
というか、何だろ。あの「何かあった?」的な感じは……。
ルウは覗かれても気にならないって事?
いや、でも、女の子なんだし、普通下着姿でも男に覗かれたら「キャー!」とか「バカー!」とかあるよね?
って、よくよく思い出してみれば、ルウって覗かれた時無反応だったような……。
身体も隠したりしなかったから、じっくりバッチリこの目に焼き付けたし……。
はぅッ! マリアンさんの目が冷たい!!
何で女性って、ちょっとエロい事考えたりするだけで勘付くの!
いやっ、はい、ダメですよねエロは、エッチな事は考えません!!
あっ、少し視線が緩くなった……。
ふぅ、怖いなぁ女性って。
「ーー勇者様、ルウさんに何か言う事はありませんか?」
「えっ? 何かって……? あ、あぁ、ゴメン……ね」
「ち・が・い・ま・すー」
へっ? 違うって、謝る以外に何が???
何だろ? 何かあったっけ??
あぁ、マリアンさんがジト目でこっち見てるよ〜。
あぁ、もう、マジわかんねぇー。
何言えばいいんだよォー。
「ホントに男の人ってダメですねぇ。どうして皆鈍感なのか……」
ハイ……、スミマセンです……。
「ハァ、ーー服ですよ、ふ、く。可愛くなったでしょう? ふふ」
あぁ、なんだ服の事か。
そう言われて、ルウの服装をじっと見てみた。
あのボロい黒のワンピースから着替え、今は新しい服に着替えていた。
新しい服は、前と同じように黒を基調としているが、白のフリルが胸元や袖口、裾等に使われた長袖の上着で、襟首と腕に赤いリボンが結ばれていた。
下は膝上10cmくらいの短い黒のスカートで、裾口に白のフリルが付き、両腰の辺りに赤いリボンが付いていた。
脚は、タイツみたいな感じの生地の薄い黒のズボンを履いているようで、靴も黒かったが赤い靴紐で結ばれていた。
所謂、ゴスロリ系っぽい服装になっていた。
これが、また、すごくかわいい……。
さっきは謝るのに必死で気づかなかったが、長い髪も赤いリボンで束ね、目元が髪で隠れる事も無くなっていた。
さっきルウの顔を見て、表情が読み取れた時に気付くべきだったが、これだけの変化にも気付かないハルトは鈍感と言われても仕方なかった。
「勇者様は少女嗜好な様でしたので、こういうのがお好きかと思いましたが、如何でしょうか?」
「如何でしょうかって……、如何も何も、無茶苦茶可愛いんだけど…………。って少女嗜好って何!!!!! 違うからね! 俺ロリコンじゃないし!!」
「ロリ……?? というのはよく分かりませんが、私の勘違いでしたか? てっきり勇者様はこういうのがお好きかと……。でも、ルウさんとっても良くお似合いですし、もう一度着替える時間もありませんから、このまま行きましょうね」
ルウの事、美少女だ、美少女だってずっと思ってたけど、まさか服装一つでここまで可愛くなるなんて……。
でも、この服装ってぜっっったいマリアンさんの趣味で着せた気がするよ。
だって、マリアンさんのルウを見る眼が、すっごい嬉しそうで「私は大満足です」みたいな感じなんだもん……。
「それで勇者様の感想は『可愛い』だけですか? もっとこう、何かありませんか?」
「いや、もっとって言われても、可愛いしか……」
「ダメですよ。勇者様。こういう時は気の利いた台詞の一つも言わないと、ーールウさんに愛想尽かされても良いんですか?」
「いや……、そんな事言われても……」
「仕方ないですねぇ。『君は、闇夜を照らし輝く月の様に綺麗だ。君の輝きで僕の心は満たされてしまった。その輝きを僕だけの物にする事を許してくれないだろうか?』くらいは言ってもらわないと困ります」
「イヤイヤイヤ、可笑しいからね、それッ。プロポーズみたいな台詞になってるよ!」
「勇者様は覗きはするのに奥手ですねぇ」
「グ、何気に痛い所を……」
何か、マリアンさんの俺に対する扱いがだんだん軽くなってる様な気が……。
未だに勇者様って呼ぶのに、最初の頃感じた尊敬の念みたいなのが無くなってしまった気がするよ。
いや、まぁ、尊敬出来る様な人間でも無いし、逆に軽蔑されるような事しかしてない気もするんだけどね……。