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第12話 男って皆ケダモノです

ブクマ感謝です。

いつになったら城から出れるやら…。

「今は街中に戦場が移っている為、ここは安全ですが、いつまたこちらに戦場が移って来るか分からない状態です。街中は危険ですので地上からの脱出は困難でしょう。城内には、街の外まで続く抜け道がいくつかありますので、お二方はそこから脱出して下さい。入口までは私が案内致します」


 マリアンさんは、そう言って2人を案内しようとする。

 ハルトは立ち上がろうとするが、膝がガクガクと笑い尻餅をついてしまう。


「っ痛、あぁ、ごめん……、だ……だいじょうぶ……、すぐに行くから」


 そう言って、痛みを堪え脂汗を流しながらも再び立ち上がろうとするハルトを、マリアンさんが止める。


「その足では移動は無理ですね。治療しますので座って下さい」


 マリアンさんの言葉に、ハルトは素直に従い床に座り込む。

 治療と言うから、足をマッサージでもするのか、包帯や布でテーピングして負担を軽くでもするのかと思っていたが、マリアンさんはハルトの両足の少し上に右手をかざして目を閉じる。

 何をしているのかと、ハルトが一瞬戸惑った時、マリアンさんが言葉を紡ぐ。


「癒しの光よ……かの者を癒したまえ。癒光(ルミナディア)!」


 次の瞬間、マリアンさんの右手がオレンジ色の暖かな光に包まれる。

 ハルトが不思議そうな顔をしながら見ていると、両足から少しづつ痛みが消えていった。


「おっ? おぉっ? 治った? ……おおおぉぉぉぉぉぉ〜、魔法だぁ! 魔法!! すっげえぇ!!!! しかも回復魔法!! マジすっげぇ〜!! 全っ然痛くないし! 一瞬で治ってるし!! やっぱあるんだ! 魔法!! あぁ〜、俺も使ってみてぇぇぇ」


 ハルトは初めて見た魔法に感動して、子供みたいに騒ぐ。


「えっ……と、勇者……様?」


 マリアンさんがハルトのテンションに付いていけず、困惑しながら声を掛けてくる。


「って、あぁ、ごめんごめん、マリアンさんマジ凄いよ! ローブ着て魔法使いっぽいと思ってたけど、やっぱりマリアンさん魔法使いだったんだ。俺にも使えるかな? 魔法!」


「えっ、あっ、そうですね。やはり勇者様ですから、今は使えなくとも、いずれ魔法も使いこなせると思います。何が扱えるかは、親和性の高い属性が何かにもよりますが……」


 ハルトは、自分の致命的なMP不足も忘れ、魔法を使う自分を夢想し、はしゃいでいた。


「と……とにかく、今はここから移動しませんか? 抜け道まで案内しますので……、あっ! その前に、お二人には靴が必要ですね。ずっと裸足のままでは怪我をしてしまうかもしれませんし」


 先程ハルトを治療した際、裸足だった事を思い出し、マリアンさんは靴を手に入れる事を提案する。

 ただ、召喚されたハルトが裸足なのは分かるとしても、ルウまで裸足なのが釈然としなかったが、ここがいつまで安全かも分からない為、その問題には触れずに行く事にした。


「まほう……。ウフフ、フフフ……、はっ! あっ、ええと、ーーそっ、そう靴! 靴は必要だよね!! ねっ?」


 ハルトのテンションにかなり引き気味のマリアンさんと、無言の圧力を視線で与えてくるルウを見て、ハルトは少し落ち着きを取り戻す。


「ハルト……、変」


「グハッ!」


 グサァッとハルトの胸にルウの言葉が突き刺さる。

 少し落ち着いた所に不意に訪れた抉りこむ一撃に、ハルトは強烈な精神ダメージを負った。


「へん……、変って……、女の子に変って……」


「えっと……、とりあえず、移動しましょうか……」


 精神ダメージでグロッキーなハルトに触れないようにしながら、マリアンさんを先頭に3人は歩きだした。



********



「ここは、城の兵士が使う武具や備品の保管庫です。ここなら靴以外にも必要な物が揃うでしょう」


 マリアンさんに連れられ辿り着いた場所は、城の保管庫だった。

 3人は保管庫の扉を開けると中へと入った。


「うわっ! ひろっ!!」


 保管庫の中はかなり広く、棚には剣や槍、甲胄が並べられていたが、誰かが持ち去った後の様に空になった棚も所々見受けられた。

 いくつか棚から転げ落ち、床に散らばってしまった鎧や剣もあり、かなり慌てて保管庫から武具を持ち出したのだと感じた。


「こちらへ」


 マリアンさんは2人に声を掛けると、保管庫の奥へと進む、ハルトとルウは足元に気を付けながらマリアンさんの後に続く。

 一番奥にあった、もう一つの扉をマリアンさんが開くと3人はさらに奥の部屋へ進んだ。


「おっ、ここも広いなぁ。こっちは服ばっかり並んでるや」


「ここなら靴だけでなく、服も着替えられますので、お好きな服へお召し替えを。ルウさんは一緒にこちらへ来て下さい。ルウさんの着替えが終わり次第こちらへ戻りますので」


 ルウは、マリアンさんに声を掛けられるとハルトの顔をじっと見つめてきた。

 ハルトはルウに見つめられて、一瞬頭にハテナが浮かぶが……、いっておいでと伝えると、ルウは頷いてマリアンさんに付いて行った。


 さっきのは何だったんだろう?

 俺から離れたくないとか?

 まさか、俺を1人にするのは心配とかって意味じゃないよね?

 いや、まぁ、さっき取乱して泣いてしまったから、それで心配してくれてるのかもしれないけど……。

 でも、良い年した大人が年下の女の子に心配されるとか……、俺ってそんなに頼りなく見えるんだろうか……。

 あー、考えてても仕方ないし、着替え、着替えっと。


 まぁ、このままジャージっていうのも悪くはないんだけど、この世界だと目立つだろうし、とりあえず着替えておいた方が良いかな。

 まずは、ズボンとシャツに靴を探さないとな。


 ハルトは部屋を物色し、適当に服を手に取ると着替え始めた。


 なんか、質が悪いのか肌触りがあまり良くないなぁ。

 結局、ジャージは脱いだけど、Tシャツと下着はそのままで、ズボンと上着を着る形に落ち着いた。

 この世界にも靴下があったから履いたけど、これも肌触りがあまり良くなくて、足が少しゴワゴワする感じだったが我慢して履く事にした。

 靴はサイズの合う物がなかなか見つからず、ようやく履けたのが膝下まである革製のロングブーツだった。


 一応着替えは終わったけど、ジャージを入れる鞄か何かないのかな?

 出来ればジャージ持っていきたいしーーマリアンさんに聞いてみるか。


 とりあえず聞いてみようと、ハルトは先程マリアンさんとルウが歩いて行った方へ向かった。



********



 この辺に居るのかな?

 物音が聞こえる場所に近づき、ハルトは覗き込む。


「ーーハルト?」


「えっ!?」


 ハルトが覗き込んだ場所には、確かに2人が居た。

 ルウと目が合い、名前を呼ばれると、マリアンさんが驚いた声をあげ、こちらを振り向いた。


 ハルトは2人を見つけてーー、一点に目が釘付けになっていた。


 下着姿のルウに……。


「あっ、えっ? あっーー」


 ハルトも驚いて声も出なくなっていたが、それでも視線はルウに釘付けで、凝視したままだった。


「勇者様! 困ります。向こうで待っていて下さい! いつまで見てるんですか!!! 早く!」


「えっ、あぁ……、ご、ごめん、向こうに行ってるよ」


 マリアンさんが慌ててハルトの視線を遮る場所に移動しながら、ハルトを向こうに行かせようとする。

 ハルトは、バツの悪そうな顔をしながらそこから立ち去っていく。


「信じられません……、着替えを覗きに来るなんて……、勇者様でも、男って皆ケダモノです」


 元の場所に戻る途中のハルトの耳に、マリアンさんの声が聞こえてきた。


「はぁー、これ絶対マリアンさんに幻滅されたわぁ。ケダモノって……これ言い訳しても話し聞いてくれないパターンだよねぇ」


 しかし、まぁ、ルウの下着姿を凝視してしまったのは事実な訳で、あまり強く否定出来る立場でもないよなぁ……。

 でも、ルウって良い身体してたなぁ……。


 細身だけど腰のくびれがあって、痩せすぎじゃない程度に肉が付いてて、柔らかそうな肌で、胸はやっぱりAサイズくらいだけど張りがあって、思わず触ってみたくなるような……、幼い身体付きなのに、何処となく色気があるというか……、エロい身体してるというか……、そんな感じでーー。

 そのうえ、美少女だし!!

 あぁ、もう、辛抱たまらん!!!


 って、これじゃどっかのエロオヤジみたいじゃないか!

 まだ俺21なのに! ロリコンじゃないのに!!

 はぁぁー、でも、ルウと一緒に居たら、俺、変態紳士として生きる事になりそうな気がしてきた……。

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