第10話 なん、……なんだよっ!!!!
大変申し訳ない。
長らくお待たせさましたが、次話が書き終わりましたので投下します。
ブクマしていただいた方、感謝します。
ここまでずっと出口らしき物が見つからなかった事や、ルウ以外に誰とも出会わなかった所為で、体力的にも精神的にも辛くなり、自分達が出口の無い場所に閉じ込められたんじゃないか? って考えが浮かんでしまっていたが、少し部屋で休憩し落ち着いてきた事で、ハルトはようやくある事を思い出した。
最初に出会った2人は、あの後すぐ外に向かった可能性が高い。
つまり確実に何処かに出口が存在する。
それは、この廊下の先にあるのか、単に見落としてしまっただけかもしれない。
だから、出口が無いとか、閉じ込められたなんて悲観する必要は無いと。
自分が何処にいるか分からず、何か知っていそうな人にも出会えず、ただ同じような造りの廊下を歩き続けた結果、疲弊しきった心と体では、悪い方にばかり考えが巡ってしまっていた。
しかし、少し休んだ事で、外に向かったであろう2人の事を思い出し、多少なりとも活力が戻って来ていた。
「少しは足の痛みもましになったから、そろそろここを出ようか?」
ハルトがそう言って椅子から立ち上がると、ルウは少し頷いてハルトに続くように椅子から立ち上がり、2人は揃って部屋を出た。
「ーーさってと、とりあえずこの廊下を突き当たりまで行ってみよう。それで出口が無いならその時考えようか」
ハルトは独り言のようにそう言うと、ルウが付いてくるのを確認しながら先へと歩きだした。
途中同じ造りの部屋が1部屋あったが、今迄と同じく誰も居なかった為、軽く中を覗くだけに留めると、そこからさらに廊下を進んで行く。
そして、廊下の奥に右側へと曲がれるT字路が目に映った気がした。
ハルトはそれに気付くと、見間違いかと目を凝らし、再びそのT字路を確認する。
ジッとT字路を見つめるハルトの顔は、みるみる明るい表情に切り替わり、T字路を指差しながらルウの顔を見て、声を掛けると同時に走り出した。
「曲がり道だ! ルウも、早く!」
疲れや足の痛みも忘れ、満面の笑みを浮かべたまま、我先にと走り出したハルトは、T字路まで急いで行くと右側の通路を覗き込んだ。
「階段だ! 階段がある!! ルウ! 階段があるよ!」
ハルトは興奮して、後から早足で追いかけて来ていたルウに声をかけ、早く早くと手招きしていた。
ルウはT字路に着くと、少し乱れた呼吸を整えながら、ハルトの指差す方向を見る。
たしかに其処に階段があった。
真っ直ぐに上へと続く階段、石造りで長さは10mはあるだろうか? エスカレーターが欲しいと、そう思えるくらい長い階段だった。
「歩いて昇るのはダルそうだけど……、仕方ない、昇ろう。早くここから出たいしな」
そして、ハルトとルウは階段を昇って行く。
途中で階段がスロープの様になったりとか、上から岩が転がってくる等といった事も無く、無事に階段の上まで昇りきると、2人の目の前に大きな扉が現れた。
扉は木で出来ていたが、高さは3m程で両開き、重量感があって開閉も大変そうな、そんな扉だった。
鍵は掛かって無い様で、押せば開きそうだった。
ハルトは右側の扉に両手を添えると、扉を押して開けようとした。
「ふんっ、ぎぎぎ……ぐぉぉぉ。ちょっ、ちょっと、ゴメン、ル……ウも、て、つだっっ、てぇぇぇぇ」
扉はかなり重く、少しずつ動きはしたが、ハルト1人では思うように開かず、ルウに助けを求めてしまっていた。
ルウはハルトに求められると、何も言わずにハルトの横で扉を押し始めた。
2人が力を合わせて押すと、ギギギッと扉が軋みながら開いていき、隙間から強い光が射し込んで来る。
そして、同時に扉の外の音が聞こえた。
それは、はっきりと言葉が聞こえる訳ではなかったが、ワイワイガヤガヤといった、街の喧騒の様に色々な音や声が混じった騒がしい感じの音だった。
長い間誰とも出会えず彷徨っていた事で、ハルトは、まるで世界に自分達しか居なくなってしまったかの様な、そんな寂しさと不安を抱えてしまっていた。
だから、人や街の気配の様なモノを感じられた瞬間、早く外に出る事しか考えられなくなっていた。
ハルトはルウに、もう一度扉を押すように伝えると再び扉を押し開ける。
人が1人通れる程度の隙間が出来た時点で、2人は扉を押すのを止め、ハルトはその隙間から躍り出るように飛び出した。
外にさえ出てしまえば、誰かに出会えれば、全てが元通りになるかの様な希望を抱いてーー。
扉を抜けた先は、真っ直ぐに通路が伸び、少し行った突き当たりには大きめの窓があり、下側の開いた窓から少しだけだが外の景色が覗けていた。
外に出られた。
その喜びから、ハルトはルウの存在も忘れ1人走りだす。突き当たりの窓に向かって。
早く窓の外を見たいーー早くちゃんと外に出られたと確認したいーー早く誰かに会いたいーー早く……かえりたい……。
ハルトは窓際に辿り着くと、身を乗り出す様に外を覗き込む。
そこに見える景色は……。
ーー絶望ーーしか無かった……。
「なんっ……、だ、これっ! ーーなん、……なんだよっ!!!!」
目の前に広がる光景に、ハルトは言葉を失った。
外に出ればーー、出さえすればーー、何とかなる、何とかしてもらえると思っていた。
外に出る、それは希望の灯の様に思えていたーー。
散々歩き回って、疲れた身体に鞭打って、やっと外に出られた。
元の世界に帰れないとしても、何とかしてもらえるんじゃないか? 何とかなるんじゃないか?
そんな、甘い考えと、甘い希望だけで外に出た。
でも、外には絶望しか無かったーー。
これなら……、こんな事なら……。
外になんて出るんじゃなかった!!!!!!
あのまま部屋に居た方が良かった!!!!
ハルトは、窓枠に両手を置いたまま崩れ落ちる。
その時、左手に持っていた石板が窓の外に溢れ落ちた。
今見た光景が頭に焦びり付いて離れない……。
胸がムカついて吐き気がする……。
気分が悪い……。
もう……動けない……。動きたくない………。
ハルトは気力も体力も使い果たしたかの様に、項垂れて放心していたーー。
暫くしてーーハルトはーー背に温もりを感じた……。首元に両手が回され、そして、……優しい声が聞こえた。
「だいじょぶ……だよ?」
「ーール……ウ?」
だいじょぶ、だいじょぶ、とルウが優しく囁きながら、ハルトの頭を撫で続ける。
ハルトは、心地よいルウの温もりに包まれ、優しさを感じながら、ただ涙を流していた……。




