表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/48

第10話 なん、……なんだよっ!!!!

大変申し訳ない。

長らくお待たせさましたが、次話が書き終わりましたので投下します。

ブクマしていただいた方、感謝します。

 ここまでずっと出口らしき物が見つからなかった事や、ルウ以外に誰とも出会わなかった所為で、体力的にも精神的にも辛くなり、自分達が出口の無い場所に閉じ込められたんじゃないか? って考えが浮かんでしまっていたが、少し部屋で休憩し落ち着いてきた事で、ハルトはようやくある事を思い出した。


 最初に出会った2人は、あの後すぐ外に向かった可能性が高い。

 つまり確実に何処かに出口が存在する。

 それは、この廊下の先にあるのか、単に見落としてしまっただけかもしれない。

 だから、出口が無いとか、閉じ込められたなんて悲観する必要は無いと。


 自分が何処にいるか分からず、何か知っていそうな人にも出会えず、ただ同じような造りの廊下を歩き続けた結果、疲弊しきった心と体では、悪い方にばかり考えが巡ってしまっていた。


 しかし、少し休んだ事で、外に向かったであろう2人の事を思い出し、多少なりとも活力が戻って来ていた。


「少しは足の痛みもましになったから、そろそろここを出ようか?」


 ハルトがそう言って椅子から立ち上がると、ルウは少し頷いてハルトに続くように椅子から立ち上がり、2人は揃って部屋を出た。


「ーーさってと、とりあえずこの廊下を突き当たりまで行ってみよう。それで出口が無いならその時考えようか」


 ハルトは独り言のようにそう言うと、ルウが付いてくるのを確認しながら先へと歩きだした。


 途中同じ造りの部屋が1部屋あったが、今迄と同じく誰も居なかった為、軽く中を覗くだけに留めると、そこからさらに廊下を進んで行く。

 そして、廊下の奥に右側へと曲がれるT字路が目に映った気がした。

 ハルトはそれに気付くと、見間違いかと目を凝らし、再びそのT字路を確認する。

 ジッとT字路を見つめるハルトの顔は、みるみる明るい表情に切り替わり、T字路を指差しながらルウの顔を見て、声を掛けると同時に走り出した。


「曲がり道だ! ルウも、早く!」


 疲れや足の痛みも忘れ、満面の笑みを浮かべたまま、我先にと走り出したハルトは、T字路まで急いで行くと右側の通路を覗き込んだ。


「階段だ! 階段がある!! ルウ! 階段があるよ!」


 ハルトは興奮して、後から早足で追いかけて来ていたルウに声をかけ、早く早くと手招きしていた。


 ルウはT字路に着くと、少し乱れた呼吸を整えながら、ハルトの指差す方向を見る。

 たしかに其処に階段があった。

 真っ直ぐに上へと続く階段、石造りで長さは10mはあるだろうか? エスカレーターが欲しいと、そう思えるくらい長い階段だった。


「歩いて昇るのはダルそうだけど……、仕方ない、昇ろう。早くここから出たいしな」


 そして、ハルトとルウは階段を昇って行く。


 途中で階段がスロープの様になったりとか、上から岩が転がってくる等といった事も無く、無事に階段の上まで昇りきると、2人の目の前に大きな扉が現れた。


 扉は木で出来ていたが、高さは3m程で両開き、重量感があって開閉も大変そうな、そんな扉だった。

 鍵は掛かって無い様で、押せば開きそうだった。


 ハルトは右側の扉に両手を添えると、扉を押して開けようとした。


「ふんっ、ぎぎぎ……ぐぉぉぉ。ちょっ、ちょっと、ゴメン、ル……ウも、て、つだっっ、てぇぇぇぇ」


 扉はかなり重く、少しずつ動きはしたが、ハルト1人では思うように開かず、ルウに助けを求めてしまっていた。


 ルウはハルトに求められると、何も言わずにハルトの横で扉を押し始めた。

 2人が力を合わせて押すと、ギギギッと扉が軋みながら開いていき、隙間から強い光が射し込んで来る。


 そして、同時に扉の外の音が聞こえた。


 それは、はっきりと言葉が聞こえる訳ではなかったが、ワイワイガヤガヤといった、街の喧騒の様に色々な音や声が混じった騒がしい感じの音だった。


 長い間誰とも出会えず彷徨っていた事で、ハルトは、まるで世界に自分達しか居なくなってしまったかの様な、そんな寂しさと不安を抱えてしまっていた。

 だから、人や街の気配の様なモノを感じられた瞬間、早く外に出る事しか考えられなくなっていた。


 ハルトはルウに、もう一度扉を押すように伝えると再び扉を押し開ける。

 人が1人通れる程度の隙間が出来た時点で、2人は扉を押すのを止め、ハルトはその隙間から躍り出るように飛び出した。

 外にさえ出てしまえば、誰かに出会えれば、全てが元通りになるかの様な希望を抱いてーー。


 扉を抜けた先は、真っ直ぐに通路が伸び、少し行った突き当たりには大きめの窓があり、下側の開いた窓から少しだけだが外の景色が覗けていた。


 外に出られた。

 その喜びから、ハルトはルウの存在も忘れ1人走りだす。突き当たりの窓に向かって。

 早く窓の外を見たいーー早くちゃんと外に出られたと確認したいーー早く誰かに会いたいーー早く……かえりたい……。


 ハルトは窓際に辿り着くと、身を乗り出す様に外を覗き込む。

 そこに見える景色は……。


 ーー絶望ーーしか無かった……。


「なんっ……、だ、これっ! ーーなん、……なんだよっ!!!!」


 目の前に広がる光景に、ハルトは言葉を失った。


 外に出ればーー、出さえすればーー、何とかなる、何とかしてもらえると思っていた。


 外に出る、それは希望の灯の様に思えていたーー。


 散々歩き回って、疲れた身体に鞭打って、やっと外に出られた。

 元の世界に帰れないとしても、何とかしてもらえるんじゃないか? 何とかなるんじゃないか?

 そんな、甘い考えと、甘い希望だけで外に出た。


 でも、外には絶望しか無かったーー。

 これなら……、こんな事なら……。


 外になんて出るんじゃなかった!!!!!!


 あのまま部屋に居た方が良かった!!!!


 ハルトは、窓枠に両手を置いたまま崩れ落ちる。

 その時、左手に持っていた石板が窓の外に溢れ落ちた。


 今見た光景が頭に焦びり付いて離れない……。

 胸がムカついて吐き気がする……。

 気分が悪い……。

 もう……動けない……。動きたくない………。


 ハルトは気力も体力も使い果たしたかの様に、項垂れて放心していたーー。


 暫くしてーーハルトはーー背に温もりを感じた……。首元に両手が回され、そして、……優しい声が聞こえた。


「だいじょぶ……だよ?」

「ーール……ウ?」


 だいじょぶ、だいじょぶ、とルウが優しく囁きながら、ハルトの頭を撫で続ける。

 ハルトは、心地よいルウの温もりに包まれ、優しさを感じながら、ただ涙を流していた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ