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目を開けると、見慣れない天井が目に入った。家の木目のあるやつじゃ無くて、無機質な、冷たい白い天井だった。
体を起こしてみる。
部屋は、大きな白い箱だった。カーテンで、隣のベッドと仕切られている。
カーテンも、テーブルも、布団も、床も、壁も、白かった。ただ、一つだけ、戸棚が色を持っていた。茶色い木目がある奴で、正面の扉は閉じられている。上には、ぽつんと、真っ赤なさるぼぼが置いてある。
僕は、病院に運ばれていた。
猛烈な眠気が襲ってくる。睡魔に抗いながら、僕はここへ来る前の事を思い出そうとした。
確か、僕は川に流されたはずだった。なのに、こうして何かを見たり、何かを触ったり出来ている。
つまり、助かったのだ。
僕は今、確かに生きている。