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川の水深は、だんだんと増して行き、とうとうズボンの股下を濡らすほどになった。
僕は、幼いながらに、これは危ないんじゃないか、と思い始める。でも、その度に好奇心が勝ち続けて、僕の足は止まらなかった。
中州は、だんだんと近づいてくる。
あとどれくらいだろう。最初は弱く感じた川の流れも、だんだんと強くなって来た。川の深さも、今はもう腰くらいまで来ている。
次の一歩を踏み出した。
足を、ぬるぬるとした水底へとつけようとする。
あれ? 届かない。
もっと足を下げる。まだ、冷たい石の感触は、無い。
残していた片足が、ふらつく。
その瞬間、僕は、誰かに、自分の名を呼ばれた様な気がした。
まずいと思った頃には、僕はもう川の中に転んでいた。
冷たい水の流れを体中に感じて、僕はやっと、川に流された事を知った。
ふと、僕の体に、何かが触れた。冷たい水の中でも、それはとても暖かかった。
それが何かを確かめる間もないまま、僕の意識は遠のいて行った。