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翼の話  作者: 杉並よしひと
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 その日の夕方、僕は久し振りにぶらぶらと外へ出ていた。ここの所、何か用がある時しか外に出なかったから、何となく今は宙ぶらりんな気持ちだ。

 涼しさを含んで来た風を浴びながら、僕は商店街をぶらぶらと歩いた。

 お盆休みの今は、商店街を歩く人もまばらだ。店もシャッターを降ろしている所が多く、通りは橙色の光に満ちているようだった。

 そのまま、商店街を抜けて、川原の方へと歩いて行く。

 川原の土手を歩く。普段はランニングをする人や、犬の散歩をする人がちらほらといるけれど、今日はそんな人影もまばらだった。

 町から、確実に人が少なくなっている。

 あり得ない事だけど、もしかしたら、僕の空想した世界に、近づいているのかも知れない。

 この町から、僕以外の人間がいなくなる。僕と、りっちゃんだけが、取り残される。

 二人で、屋上から、誰もいない町を眺める。駅前の商店街、ちょっと遠くにある団地、学校のグラウンド、どこにも人がいない。ただ、時間だけが流れて行く町。

 それは、とても寂しくて、綺麗な景色に違いない。

 そんな事を考えながら、土手を歩く。

 川は、低い夕日を跳ね返して、きらきらと光っている。

 ふと、足を止める。

 土手に面した一軒の家が、庭で何かを燃やしている。門の前に、おじいさんが一人立って、火を見つめている。

 火は、素焼きの皿の上に載っていて、何か棒の様な物を燃やしていた。

 僕は、暫くそれが何の火か解らなかった。でも、僕はその場を動く事も出来なかった。

 おじいさんも、愛おしげに火を見つめて、少しもその場を動こうとしなかった。ちろちろと可愛い火が、おじいさんの顔を橙色に照らす。

 僕は、火から出る煙を、目で追った。煙は薄くなって、夕闇に溶けながら、空高く昇って行った。

 僕は、いつの間にか、空を見上げていた。

 そして、その小さな火が何なのか、思い出す。

 はっ、とした。

 僕には、やらなければいけない事がある。

 僕は、走って家へと向かった。


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