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気付くと、もう保健室は明るかった。夜通し、僕は考え事をしていた。明け方頃から記憶が無いから、たぶん寝てしまったんだろう。
僕は、ベッドに突っ伏して寝ていた。体を起こしてベッドを見ると、布団は捲られていて、りっちゃんはそこにはいなかった。
見渡すと、りっちゃんは窓辺に立っていた。もう顔色も良くなっていて、頬にもほんのりと赤みが指している。元気になったようだ。良かった。
「もう、起きて平気なの?」
「うん、大丈夫」
りっちゃんはそう言って、元気そうに頷いた。でも、僕には解る。絶対にこれは、何か隠している笑顔だ。
「本当に?」
「本当だよ」
そして、それをごまかし切ろうとしているようだ。
無理矢理聞き出す事も無いけど、出来れば、話して欲しい。僕が力になれたなら、僕は嬉しいのだ。
「何で、急に倒れたの?」
僕のこの質問に、りっちゃんは黙ってしまった。やっぱり、隠したい事は、倒れた理由にあるみたいだ。
「別にさ、話したく無ければ、話さなくても良いけど」
僕に打ち明ける事で、りっちゃんが辛い思いをするなら、僕は別にそんなこと、知らないままで良い。
りっちゃんは、まだ、窓辺に立って外を見ている。昨日までの雨が嘘の様に、空はからりと晴れ渡っている。雲一つなく、まるで冬の朝の様に、空が高い。
永遠に続くと思っていた夏も、いつかは終わりが来るんだ。僕はなぜか、そんな事を考えた。
「私、隠し事してた」
りっちゃんの、小さい声が聞こえる。それでも、広い保健室によく響いた。
僕は、ごくりと唾を呑む。これから、何を聞いても良い様に、身構える。りっちゃんは、見るからに辛そうだ。それなのに、聞き手の僕が負けたら、駄目じゃないか。
「だからさ、お願い。わがままを一つ聞いて」
りっちゃんは、いつの間にか僕の方を向いていた。目が、まっすぐに僕を捉えている。もう逃げられない。僕は、まっすぐにりっちゃんの言葉を受け止めなくちゃいけない。
「解った。何でも言って」
やっとの事で、僕はそう言葉を返した。りっちゃんは、幽かに微笑んだ。本当に、一秒の何分の一位の長さだったけど、確かに、りっちゃんは微笑んだ。
「ありがとう」
りっちゃんはそう言って、目を閉じた。胸元に手を置いて、深呼吸を一回、二回。そして、目を開いて、僕をまっすぐに見た。
「私ね、本当は、死んでるんだ」




