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僕が目を覚ますと、もう外は真っ暗になっていた。電気をつけていないこの部屋は、もう墨を塗った様に暗くなっていて、りっちゃんの冷たい手だけが頼りだった。
りっちゃんをここに一人にする訳にはいかないから、僕も今夜は一緒に泊まり込もう。
そう僕が決めた、まさにその時だった。
りっちゃんの寝言が聴こえた。
「もうすこし……。もうすこし……」
だんだん、嫌な予感がしてくる。
「お願いですから……もう少し……」
寝言には変わりないのだろう。だけど、本当に懇願する様な調子で、そう言うのだ。僕は、息を殺して、続きを聞き漏らさない様にした。
「たっちゃんと……、一緒にいさせて……、くだ……さい」
はっとする、僕は、保健の先生の机から、懐中電灯を持って来た。りっちゃんが起きない様に、りっちゃんのスカートのポケットを照らす。
あった。あのお守りだ。
僕は、りっちゃんの体に触れない様に注意しながら、お守りを引っ張り出した。赤いお守りが、闇に浮かび上がった。お守りの布は、ずいぶんとくたびれていて、結んである紐も、かなり汚れている。
ゆっくりと、お守りを裏返す。
静かな雨音が、さらさらと外から聴こえてくる。
お守りの裏側には、汚い字で、
「くろべ たつや」
と、書いてあった。
僕は、それを見て、僕の不吉な考えが、だんだんと現実味を帯びて行くのを感じた。
そっと、お守りを元に戻して、またりっちゃんの手を握る。
もう、僕は寝られそうに無かった。




