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八月に入ってからこの数日、晴れ間は顔を見せていなかった。かれこれ五日間くらい、厚い雲が空を覆っている。
今日も、朝起きると、ぱらぱらと静かな雨音が聴こえた。僕は、暫く布団から起き上がらずに、その音を聴いていた。
たまには雨も、良い物だ。
この所、りっちゃんは梅雨の時と同じ様に、屋上へ出る踊り場で本を読んでいた。暗くて暑くて、じめじめしていて埃っぽいけど、それでもどうやらりっちゃんはあそこに拘っているようだ。
しかし、雨は僕の心をゆったりともさせた様だった。その日の午前中は、何をするでも無く、ずっとごろごろと寝転がって、夏休みの課題の本を読んでみたり、居眠りをしてみたり、とにかく色々な事をバラバラとしていた。
部屋の空気を入れ替えようと、窓を開けると、外は夏とは思えないほどの涼しさで、僕は思わず、
「ほう」
と、溜め息を吐いてしまった。ガラス窓をあけ、網戸一枚にすると、余計に雨音がよく聴こえる。屋根や、道路や、植え込みや、色々な所に当たる音がした。
時計を見ると、いつの間にか十二時を回っていた。リビングへと行くと、既に両親は出勤していて、家の中はガランとしていた。ぺたぺたと鳴る足音を聴きながら、戸棚から素麺を探し出す。片手鍋に湯を沸かし、その間に麺つゆを薄める。
さて、この後はどうしよう。
学校の屋上に行くのは決定事項として、その後はずっと暇なのだ。暇に飽かせて、夏の宿題は大方終わったし、する事も無い。残っているのは、読書感想文くらいで、それも、残りの一ヶ月のどこかですれば良いのだ。
時間が有り余っている。
僕は、リビングから外を眺めた。庇から絶え間なく雨粒が落ちて、縁側を濡らしている。こんな天気の中、外を歩くのも、案外楽しいのかも知れない。
僕は、沸騰した湯に素麺を撒いて、鼻歌まじりに菜箸で掻き混ぜた。




