表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翼の話  作者: 杉並よしひと
15/26

15

 八月に入ってからこの数日、晴れ間は顔を見せていなかった。かれこれ五日間くらい、厚い雲が空を覆っている。

 今日も、朝起きると、ぱらぱらと静かな雨音が聴こえた。僕は、暫く布団から起き上がらずに、その音を聴いていた。

 たまには雨も、良い物だ。

 この所、りっちゃんは梅雨の時と同じ様に、屋上へ出る踊り場で本を読んでいた。暗くて暑くて、じめじめしていて埃っぽいけど、それでもどうやらりっちゃんはあそこに拘っているようだ。

 しかし、雨は僕の心をゆったりともさせた様だった。その日の午前中は、何をするでも無く、ずっとごろごろと寝転がって、夏休みの課題の本を読んでみたり、居眠りをしてみたり、とにかく色々な事をバラバラとしていた。

 部屋の空気を入れ替えようと、窓を開けると、外は夏とは思えないほどの涼しさで、僕は思わず、

「ほう」

 と、溜め息を吐いてしまった。ガラス窓をあけ、網戸一枚にすると、余計に雨音がよく聴こえる。屋根や、道路や、植え込みや、色々な所に当たる音がした。

 時計を見ると、いつの間にか十二時を回っていた。リビングへと行くと、既に両親は出勤していて、家の中はガランとしていた。ぺたぺたと鳴る足音を聴きながら、戸棚から素麺を探し出す。片手鍋に湯を沸かし、その間に麺つゆを薄める。

 さて、この後はどうしよう。

 学校の屋上に行くのは決定事項として、その後はずっと暇なのだ。暇に飽かせて、夏の宿題は大方終わったし、する事も無い。残っているのは、読書感想文くらいで、それも、残りの一ヶ月のどこかですれば良いのだ。

 時間が有り余っている。

 僕は、リビングから外を眺めた。庇から絶え間なく雨粒が落ちて、縁側を濡らしている。こんな天気の中、外を歩くのも、案外楽しいのかも知れない。

 僕は、沸騰した湯に素麺を撒いて、鼻歌まじりに菜箸で掻き混ぜた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ