優しい殺し屋の不貞な事情
こんにちは。
桜雫あもる です。
今作は、〝もし殺し屋という職業があって、そこに「誰も殺したくないです」とか宣うクレイジーなジャパニーズが入社したとき、そいつはどんな行動に出るのか〟と空想したことに端を発します。
彼または彼女は、嫌だ嫌だと泣き喚くでしょうか、それとも怒り狂って組織を敵に回すでしょうか。
たぶん違うでしょう。それが日本人ならばおそらく、
「仕方ない」
と言って嫌々殺すのが正解だと思いました。
今作はそんな、「優しい殺し屋」の抱える悩みがコンセプトです。
物語の展開でなく語り手の心情をつらつらと述べる作風ですが未熟者ゆえ、前作同様「純文学風味」とキーワードに入れさせていただきました。
設定は時間をかけて作り込んだのですが、完全なる一人称視点で進むため、うまく伝わるかちょっぴり心配です。が、慣れない文体にも果敢にチャレンジしていく所存です、応援してくださるととってもありがたいです。
それでは、目眩く図書の世界をご堪能あれ。
僕はハルキ。
名乗って舌の根も乾かないうちで悪いが、これは本名なんかじゃない。
昔、アフリカ系アメリカ人の同僚に「High and Lunatic Killer」なんて不名誉極まりない渾名で呼ばれてから、僕の〝源氏名〟は「ハルキ」だ。
歳は二十九で、性別は男。
趣味は読書と特撮ヒーロー番組の観賞で、好きな本、というか作品は、掌編だが志賀直哉の『城の崎にて』。それと芥川龍之介の『枯野抄』。
独身なので、料理も少し。
好きな食べ物は、以前スペイン人の同僚に勧められてはまった魚介のラザーニャ(日本では「ラザニア」という方が伝わるかも)。
音楽はあまり聴かないのだが、強いて言うならしんみりとした曲調のバラードが好きだ ろうか。
血液型はAB型。国籍と出身は日本。
職業は殺し屋。
殺し屋といっても、僕は特別な人生を送ってきたわけじゃない。
普通の次男として普通の家庭に生まれて、幼稚園で転んで、小学校でケンカして、中学校で恋愛をして、高校で勉強して、大学で夢を見た、普通の男だ。
加えて、僕は決して残忍な奴なんかじゃない。
殺し屋なんかを生業にしておいて、こいつは何を抜かすのかと、そう思うだろう。
だけどそれは偏見だ。
それは殺し屋という職業を、そして何より人間を、大きく誤解している。
光が届かない路地裏で、しゃがんで手元を事務的に動かしている男を見つけたのは大学三年の夏だった。
大学から駅へ抜ける近道に、際立って人通りの少ない小道があった。誰も知らない穴場だった暗い路地を、僕は何の気なしに毎日使い、実際何事もなく毎日大学へ顔を出していた。
しかしその日、僕の根拠のない安全神話は跡形なく瓦解した。
今から思えば、そのまま何も見ずに走り去ればよかったのだろう。当たり前といえば当たり前だが、こちらに気づいていない通りがかりの人間は、僕らの業界では目標化しないことにしている。しかし暑さに参っていた僕は、違和感を感じてふいと横合いに目をやってしまった。
建物の陰。そこだけが、周囲の明るさから切り取られたように黒く沈んだ横道の突き当たり。男──後に僕は、彼を〝先生〟と呼ぶことになる──は背を向けて、水っぽさを含んだ小さな音を立てて、コンクリートに広がった赤黒い何かを拭き取っていた。
男は僕に気づくやいなやばっと振り返って立ち上がると、間髪入れず僕めがけて突進してきた。
普段なら彼も、そこで僕を無関心に捕縛、あるいは殺害して、〝会社〟に指示を仰いだろう。しかしとっさに、これはまずいと直感した僕は、一瞬日の下に出た彼の容貌から欧米人であることを判断すると同時よたよたと後ずさりながら、
「大丈夫! 僕も殺せるからさ!」
──フィリピン留学を目前に学んだ絶望的なコミュニケーション能力で、こんなことを言い放った。
発音だけはうまいと自負していたものの、文法や語彙がからっきしだった僕ができた、最大の抵抗だった。
そのとき、真っ白な英語で何を言いたかったのかは、僕にもわからない。しかしこのとき、彼の血に染まった作業着を見てなんとなく、僕はそう叫んだのだった。
すると、彼はそれを聞いてぴたりと足を止め、額を叩いて僕を昏倒させるつもりだったナイフの柄をすっと下ろし、低めていた体勢を元に戻した。
僕はそのまま足をもつれさせて尻もちをつき、小さな痛みを感じながらはっと男を見上げた。
逆光で彫りの深い眉間が際立った彼の表情は見えなかったが、彼はとても大きかった。後に、僕は彼の身長が百八十センチメートル以上あるのを知ることになるが、このときはこちらが尻もちをついていたのもあって、よりその高さは強調されていた。肩幅は広く、胸板も厚く、立っているだけでその鍛え上げた肉体の屈強さがわかった。
彼の渋いグリーンの瞳に見下ろされながら、しかし僕はちっとも震えてなどいなかった。怖がってもいなかった。
彼の抱える優しさを、このときの僕はまだ知らないはずだが、もしかすると、既に何かを感じていたのかもしれない。
「……Are you sure to kill like me?」
しばらくして、彼はぼそりとそう零した。
「え?」
リスニング能力も乏しかった僕はその言葉を聞き取れず、そう返した。
「………おまえ、は、ほんとうに、俺みたいに人を、殺せるか?」
すると、彼はイントネーションや文節の区切りがずれた日本語で、もう一度訊ねた。僕は彼が突然日本語を喋ったこと、そして自分が口走った言葉の和訳を改めて認識して、驚いた。考えなしに口から飛び出た言葉の猟奇性に、恐怖した。
しかし、ここで首を横に振れば、きっと彼は僕を殺すだろう、とそう思った僕は元気よく、
「イ……、イエス! アイキャン!」
そう返事した。
今になってわかったことだが、彼はあの場面で僕がどう答えても、僕を生かしてくれていたのだという。その理由はともかくとして、僕の戸惑いの混じった答えを聞いた彼は、そこでふうっと息を吐いた。しばらく目を閉じて、それから空を仰ぎ見た。僕は彼の顔をずっと見ていたが、彼には清掃の行き届いていない灰色の建物が、空を阻んでいるのが見えていたはずだ。
「おまえ」
彼が口を開いた。
「は、はい」
なるべく間を空けないように、僕は食い気味に返事をした。
「アメリカへ来い」
そうして僕は、急遽短期留学の行き先をアメリカ、カリフォルニアへ改め、予定を大幅に前倒ししてその週のうちに、彼と飛行機へ飛び乗った。
これが、僕の殺し屋人生の始まりだった。
* * * * *
「…………」
暗い部屋の中で、薄いノートパソコンの液晶画面がやけに明るい光を放っていた。
部屋は、高級マンションの一室のようだった。十畳ほどの白い壁紙の空間に、アメリカで人気のインテリアが落ち着いている。淡いオレンジのソファの前には板がガラス製の六角形をした奇妙なテーブル、それらの奥には五十インチはある薄型テレビが並んでいる。部屋の隅にはキッチンスペースがあり、リビングとキッチンには仕切りがなかった。薄暗い部屋の南側全面に設けられた大きな窓に、カーテンは掛かっていない。ベランダに通じるそこは、大都市の夜景を描いたキャンバスと化していた。星も眩むほどの爛々としたLEDランプの集合は、忙しなく都会を流れていく。
清潔感でいっぱいの、まるでショールームのような白い部屋で、壁に掛かった黒い丸時計が針の音を響かせた。
キッチンスペースに向かい合うようにして備え付けられたカウンターに置かれたパソコンの前で、男がスタンドチェアを回した。男は時計の針を見て、時間が深夜帯であることを知る。
「遅いな……」
目を細めて呟いて、窓の外に視線を向ける。六車線の大通りをわらわらと流れる光は、男の心配に何の変化も与えなかった。
「……と、書きたいことはこれじゃなかったな」
男は照明も点けないままパソコンへ向き直り、文書作成ソフトが起動された画面を眺めて、Enterキーを押した。
* * * * *
話が脱線してしまった。
僕は、僕が十年近くこの業界で仕事をし、そして感じていたことを、ここに遺そうと思ったのだ。
しかしこの遺書は、決して誰にも読まれてはならない。
ここに僕が思うことをありのまま書けば、同業者の正確な情報が記載されてしまうからだ。
できる限り、匿名性には気を付けて書くことにする。
僕がここに書いておきたかったのは、僕が殺してきた人たちのこと、僕が悩んできたことだ。
はじめにカリフォルニアに降り立ってから二年近く、僕は世界に幾つもある〝会社〟の組織構造、組織間の慣例、立ち振る舞いなどを徹底的に叩き込まれ、殺し屋の〝歓声〟として働いていた。
今まで垣間見たことすらなかった命を取り引きする現場で、僕が驚いたことは沢山あった。が、はじめに驚いたのは、殺し屋という職業が、一般企業と同じような構造の下に成り立っているということ──と、いけない。
また話が脱線した。
あまり組織構造や各業界との連絡を書いてしまうといけない。
とにかく、僕は渡米後の二年間を下働きと訓練に費やし、三年目を迎えた夏に〝消費財〟から〝商品〟へ転向、つまり正社員として迎え入れられた。
僕はそれまで、あの路地裏で僕をスカウトした〝先生〟に師事し、その経過で「おまえには満遍なく、ほとんどのことをそつなくこなす程度の技術と才能がある」と褒められた。もちろん、これは殺し屋としての技術と才能だ。
ついでに、英語もずいぶんうまくなった。日常会話ならなんの問題もないくらいだ。
しかし、中でも彼が感心していたのは、僕のナイフファイトの腕前だった。
初めて会ったときに彼が僕に見せた、地を這うような低く速い直進。それが目に焼き付いて離れなかった僕はそれをイメージし続け、いつのまにか訓練で三メートル圏内に入った的は必ず仕留められるようになっていた。先輩方がリモコンを操作して的を自在に操り、それをうまい具合にナイフで突く訓練だ。僕以上の腕前は、うちの〝会社〟にはいなかった。
僕はナイフのなかでも特に、ブッシュナイフの扱いが一番うまく、なにより好きだった。
ブッシュナイフは、元々はジャングルなどで草を切り分けて進むのに使われる鉈に近い大型のナイフだ。腕力ではなく、振り下ろす勢いで目標を切断するという刀のような使い方に加えて、黒塗りで頑丈なのが特徴である。
その大きさから、本来ならば僕らの仕事には向かない得物だが、僕はあえてブッシュナイフが求める高等な技術精度(さらに言うならばそのデザイン性)を求めてこのナイフを買い付け、自主トレーニングに励んだ。
そして、このブッシュナイフを仕事道具に選んだ理由は、僕の悩みを顕著に表している。
たくさんの同僚も、〝先生〟も、これを聞いたときはかなり呆れて、僕のことを理解できない、という風を隠さなかった。いや、彼だけは、初めの言動から察するに僕と同じ悩みを抱えていたのかもしれない。しかしそれを加味しても、僕の悩みは重症だったろう。
僕の悩みは、「人を殺したくなんてない」ということだった。
* * * * *
玄関の黄色い照明が点灯した。
男は視界の端にそれを見つけた瞬間に文書作成ソフトのウィンドウを後ろへやり、経理に使う表計算ソフトを起動させて「Dummy」と銘打たれたファイルを開き、何食わぬ顔で作業を始めた。
「ただいま」
がちゃりと、部屋のドアが開く音のと一緒に、元気なソプラノの声が暗い室内へ飛び込んだ。
男はスタンドチェアを回転させてそちらを向き、
「やあ、おかえり。ずいぶん遅かったね」
緩んだ笑顔を向けた。
「うん、文化祭が近くて。ごめんね、心配かけちゃって」
冬季仕様の紺のブレザーの上にミルク色のコートを着た少女は、困ったような表情を見せた。
「ううん、きちんと連絡してくれたから、学校に連絡せずに済んだよ」
「ふふ、過保護」
「でも、流石に一時は遅すぎるなあ」
「う。ごめんなさい……。アミちゃんの家に寄ってたら、遅くなっちゃって」
「泊まってきてもよかったのに」
「おじさんがさびしいかな、と思って」
「そっか。ありがとう。でも今度からは、連絡してくれたら迎えに行くから」
「はーい。あ、あのおっきい黒の車はやめてね、友達が引いちゃうから」
「わかった」
男は苦笑した。
「ご飯はもう食べた?」
「うん。友達と」
「もしかして、男の子と?」
「ちがうよー、女の子だけで三人。文化祭の準備には男子も参加してるんだけどなー」
少女はそこでにやっと笑い、
「おじさん、嫉妬?」
「ちがうよ。僕は保護者だからね。あくまで心配してるだけ」
「ちぇー」
戯けて、少女は唇を尖らせた。
「部屋に荷物置いたらお風呂入って、すぐに寝なよ」
「わかってるよ。おじさんも、早めに寝てね」
その言葉に、男は片手を上げて応えてパソコンの画面に視線を戻した。複雑なグラフが乱立する文書を、いかにもそれらしくカタカタと組み上げていく。
少女はそれを見て部屋を後に、
「あ、それと」
しようとして立ち止まり、
「おめめ悪くなるから暗い部屋でパソコン禁止」
照明のスイッチをぱちんと鳴らした。
* * * * *
玄関の鍵の開閉音を聞き逃すなんて、僕は本当に現役の殺し屋なのか。
家にいるといやにリラックスしてしまう。
特に、あの子のいる前だと尚更だ。
この話はやめておこう。
その訳も含めて、この文書の目的は最後に記そうと思う。
それよりも、僕が初めて人を殺したときの話だ。
そもそも、僕がアメリカに連れて来られて〝会社〟に入れられたときに感じたのは、ああ、これで僕の人生の進む方向が決まったんだな、というくらいの、ごく軽いものだった。
大した抵抗感がなかったからこそ周りで進んでいく非日常的な状況に抗わず、本来なら大学へ戻って日本で就職活動に勤しむところを、そうしなかったのだ。〝会社〟に入った当初は、「不況続きなのに就職先が決まってよかった」くらいにしか思っていなかったのが本音だ。
殺し屋業界のルールとマナーを学び、殺しのバックアップをすることは、僕にとって各企業がそれぞれに持つ業務上の個性の一つ。その程度でしかなかった。
しかし、僕が経験を積み、実際に自分が誰か、知らない人を命じられたままに殺す──という段階に近づくにつれ、初めて僕は明確な焦りと戸惑いを感じるようになった。
僕が、この手で。人を、人の命を絶つ。
僕にはその重さが、うまく想像できなかった。
そのことを彼に相談すると、彼は珍しくぽかんと口を開けてこう言った。
「……そういう葛藤は、うちのシステムに加わったときに感じておくものだろう」
そんなものなのか、と僕が首を傾げると、
「おまえは、今まで自分が知らない誰かを殺しているという認識が、甘かったのだな。なるほどな。それで納得がいった」
彼はどこか、安心したように笑った。
僕が、何がですか、と訊くと彼はきまりが悪そうに辺りを見てから、
「いつものカフェで話そう。ここでは、すこしな」
* * * * *
明るくなった部屋のなかで、カタカタと男が指を動かしていると、廊下から薄く、水が束になって放出される音が聞こえた。
「……一応、用意しておくかな」
男はそれを聞いて手を止めると、キッチンへと回って冷蔵庫を開けた。オレンジ色の明かりが漏れ出す。そこに必要以上の物が入っていない中から、ラップフィルムで包まれたチーズフリットの小皿を一つ取り出す。
それを電子レンジの中に収め、タイマーの摘みを「5」に合わせる。発条の音が唸り始めるのを確認して、男はスタンドチェアへと戻った。
* * * * *
いつも仕事の打ち合わせに使っている個人経営のカフェで、彼は僕にこう告白した。
「おまえは挙動が丁寧で、物腰も柔らかい、そしてなにより、優しい男だ。それ自体は、殺しのときに〝標的〟を欺くのにとても有効なスキルだがな。そういう奴は、……いや。誰だってそうだが、特にそういう奴が、いざというとき殺しを躊躇いやすい」
それを聞いた僕は、それは当然なんじゃないかと訊ねた。優しい優しくないに関わらない、根本的な問題なのではないかと。
「それはそうだ。誰だって、人を殺すときははじめ躊躇する」
彼はそこで区切って、
「しかしな。所謂優しい奴というのは、自分が殺す相手の立場になって物事を見てしまう。殺される側の心情、事情を考えながら自分で殺すなんて残酷が、そう続くわけがない」
私たちは敬意を払ってそんな彼らを〝不良品〟なんて呼んだりもするが、と彼は付け加えた。
でも、もしそうならば、僕の同僚たちは皆、掛け値なく残忍な奴、ということになってしまう。そんなことはない、皆気のいい奴らだ。
その感想を正直に彼に伝えると、
「あいつらは、仕事とプライベートできちんと意識を切り替えているんだ。人を殺すとき、躊躇や罪悪感で心がいっぱいにならないように、不要な感傷を乖離する技術を身に付けている」
僕はそれを聞いて、黙ってしまった。コーヒーに映る自分の眉間が寄っているのが、やけに目障りだった。
「その技術は、〝歓声〟として働いて下積み時代に徐々に身に付けていくものだ。そうして殺しに慣れて、殺しを仕事として全うする。それが私たち〝商品〟だ」
そうですか、と僕は俯いたまま応えた。
「しかし、まあ。おまえの感性は、人とはかなり違うようだな。呆れ慣れたよ。ブッシュナイフを使い出した理由からして、こいつはどこか掴めないと思ってはいたが」
彼はそう言うと、ぐびっとエスプレッソを飲み干した。近くにいた店員が二杯目を訊ねて、彼は断った。僕は俯いたまま、ぼそりと言った。
「……〝先生〟は、優しいですよね」
「………」
彼の年季の入った顔がさっと曇った。僕は、細くなった彼のグリーンの目を見て、そのまま言った。
「あなたは、日本で初めて僕に会ったとき、僕を殺さなかった。マニュアルに従えば、あのまま僕を殺すのが、紛れもなくスタンダードだったはずなのに。でも、あなたはそうしなかった」
「…………」
今度は、彼が下を向いた。彼の顔は、カップの底には映らない。
「あんなふざけた英語で、殺し屋は仕事を躊躇ったりしません。僕はそれをここで学びました。…… あなたは僕を、なるべく生かせるように考えてくれたんじゃないですか? 僕がここまで育たなければ、あなたは〝追放〟だってあり得た。なのに、あなたは僕を生かした」
彼はごつごつした手をテーブルの上で蠢かせた。僕は畳みかけるように、言った。
「あなたは、優しい殺し屋じゃないですか」
* * * * *
チン、と音が鳴った。
タイピングに没頭していた男ははっと顔を上げ、キッチンスペースにある電子レンジへ目をやった。箱の内部から明かりが消えている。
「…………」
男は少しの間、それをぼうっと眺めていた。
「……………」
すると、スリッパの足音が聞こえてきた。男は再度はっとしてウィンドウを後ろへやって、電子レンジからチーズフリットを取り出した。
「あ、作ってくれてたんだ」
もこもこした寝間着を着た湯上がりの少女が、バスタオルを片手にドアを開けた。
「ちょうどできたとこだよ」
男は小皿に張ったラップフィルムを剥がし、カウンターの上に置いた。食器乾燥器から薄紅色の箸を一膳取り出して、傍に添える。
「ありがとおじさん。おじさんのこの……なんだっけ、えっと、バーのおつまみ? おいしいんだよね」
ペールピンクのスリッパをぱたぱたと鳴らしながら、少女はカウンターの前に置かれたもう一脚のスタンドチェアに腰掛けた。
「タパスだよ。スペインとかイタリアの酒場の小粋なおつまみ」
「そう、それそれ」
少女は目の前に置かれた皿の上で、揚げた野菜の上からチーズがとろりと落ちるのを、嬉しそうに眺めた。
「作り置きしてたやつを温め直しただけだから、ちょっと味は落ちると思うけど」
キッチンから、少女の頭を見下ろすように男が言った。
「そんなことないよ! おじさんが作ったこれ、いつでもおいしいもん」
いただきます、と手を合わせて、少女はチーズフリットに手を付けた。一口に十分収まる大きさに切られたほうれん草の揚げ物が、チーズを被って少女の口に運ばれる。
「んー、格別」
チーズのように蕩けた表情で、少女は頬に手を置いた。
「よかった」
男は流し台の前でにっこり笑う。
「あれ。今日の、量少なくない?」
ふと気づいたように、少女が訊ねた。
「うん。今日は遅いって聞いてたから、作るとき少なめにしておいたんだ」
「……そうなんだ。いやあ、おじさんはできる男だなあ」
首を縦に大げさに振りながら、チーズを絡める手は止めない。
そうして一分ほどが過ぎて、
「ごちそうさまでした」
少女は再び手を合わせた。
* * * * *
「………今。こんな話をおまえにするのは、おまえが自分の手で、自分の技術で人を殺してしまうまえに、伝えておきたいことがあったからだ」
彼はゆっくりと、僕の目線まで顔を上げながら、静かに語り始めた。
「おまえは、人を殺してはいけないと思うか」
「……なるべく、なら」
「では、どんな時なら殺してもいいと思う」
「…………」
僕は少し悩んでから、
「……殺さないと、自分や家族、友人が、殺されてしまうとき、とか」
「そうだ」
彼は肯定した。
「だがそうすると、私たちの殺しはやってはいけないことになる。そうだな」
「………」
否定できなかった。
「アメリカや日本には死刑があるが、ない国もたくさんある。私たちがやっているのは、その残飯処理だ」
彼はさっきと違う店員が傍を通ったのを見計らって、エスプレッソのお代わりを頼んだ。
「死刑のない国では、終身刑を免れた害悪を。死刑のある国では、死刑を免れた害悪を。法の網目を掻い潜って、社会的な罰則から卑怯な手立てで身を守り、更に社会に害を齎そうとする悪徳を、正式な依頼に則って〝違法死刑〟にするのが、私たちの仕事だ」
それは、はじめに学んだ。殺し屋にも、倫理や秩序があることを知った、一番はじめの座学の内容だった。
「私たちは一応、裁判所が裁けなかった凶悪犯罪者を殺す、というのが基本でやっていっている。もちろんそれ以外の依頼も少なくはないが。しかし、中にはおまえのような不確定因子が、私たちの世界を垣間見てしまうときがある。どんなに細心の注意を払っても」
それは、僕が身を以て経験したことだ。殺しの場所、時間帯、天候、周辺状況。事前に綿密な作戦を立て、〝目標〟の行動ルートを正確に把握し、逃走経路や情報規制を適切に行ったとしても、年に数回は無関係な一般人が殺しに巻き込まれ、その後の人生を大きな意思に左右されてしまうことがある。
僕が後方支援を務めた去年の仕事でも一度、六歳の子どもが仕事現場のワンブロック隣まで入ってきてしまう事例があった。
「そんなとき、私は思うんだよ。何の罪もない一般人を非公式に赦された作業のいち工程として口封じするのは、何より凶悪な犯罪なんじゃないか、と」
僕は頷いた。
「だから私は、そんな不運な彼らを命令を違反してでもなんとか生かしてやりたいんだ。あの時だってそうだ。おまえを襲いながら、どうすればこの未来ある日本人青年を助けられるか、ずっと考えていた」
彼は一息吐いた。こんなにも自分のことを話す彼は、初めてだったに違いない。僕は彼から、目を離せなかった。
「おまえがどんな殺し屋になるか、それはおまえが自分で決めることだ。どんな相手だけを殺すことにするか、どんな手段だけで殺すことにするか。どんな流儀で仕事をするかを、全ての殺し屋がポリシーとして持ち、守っている」
幾つか聞いたことがあった。例えば彼は、生肉を切り分けるためのフィレナイフと、プラスチックを多用した自動式拳銃しか仕事に使わなかった。加えて、彼が殺すのは後ろ盾を持った権力のある殺人犯だけだった。
「だから、私がおまえに伝えられることは、ただ一つだけだ」
彼のエスプレッソが運ばれてくるのが、僕たちの横目に映った。そこで彼は重苦しく、最後の教鞭をこう締め括った。
「殺す仕事だからこそ、生かすことを考えろ」
* * * * *
「………先生」
男はぽつりと、物思いに耽った様子で零した。
部屋は再び暗くなっていて、大きな窓から入る夜の光だけで明るさを保っていた。
雲が晴れたのか、今まで気にならなかった月明かりが部屋に差し込んでいる。
「先生。近いうちに、会いに行こうと思っています」
誰に伝えるでもなく、男は部屋の天井を仰いでそんなことを言った。
「あなたの教えた僕は、きちんとやっていますよ。大丈夫です。……安心して、ください」
目を瞑った。
* * * * *
僕は初めて、人を殺した。
彼とカフェで話をしてから、数日後のことだった。
郊外の空き地で、悪徳商法で数億ドルの利益を得たにも拘わらず裁判官を買収して罰金刑に留まった男を殺した。
茂みから飛び出して体当たりし、通りから見えないよう落ち葉の積もった林へと押し出し、足元がふらついた彼の膝を蹴って転ばせ、ブッシュナイフで首をかっ切った。
無線機で〝歓声〟に仕事の成功を伝えると、すぐに〝処理係〟が三人林の奥から駆け寄ってきて、てきぱきと男の遺体を袋に詰めたりし始めた。
僕はそれを、最後まで見ていた。
自分が殺した男がどうなるのか、最後まで見届けた。
僕は忘れない。
男が死ぬ間際、「誓う。償うから、殺さないで」と叫んだことを。
僕はそれからも、何人か人を殺した。
証拠不十分で不起訴になった連続殺人犯、新規格の化学兵器を紛争地域で開発していた科学者、何人もの新人歌手を手篭めにしながら問題を揉み消した大御所芸能人、連邦捜査局の機密作戦の人員リストの一部を盗んだクラッカーとその一味。
時には、某国の公式諜報機関なんかとも連携して、様々な悪人を殺した。
殺し屋にはその手法や所属、対象によって、狙撃手や暗殺者、ヒットマン、若中などいくつかのタイプがあるのだが、ある時僕は所属する〝会社〟から、諜報する殺し屋になりなさい、と抜擢された。
諜報する殺し屋とは、〝標的〟から重要な情報を聞き出すなど諜報活動を行い、然る後に殺す、という特殊なタイプの殺し屋だ。
先に書いた科学者やクラッカー達を殺すにあたって〝標的〟から幾つか、今後の指針を定めるのに都合のよくなるような情報をそれとなく聞き出したりしたのだが、その手際が上層部や協力組織に認められたらしい。
諜報する殺し屋はスパイと殺し屋の二つの技能を高いレベルで要するために、あまり成り手がいないそうだ。
僕がそこに選ばれたのは、〝先生〟も褒めてくれていた僕の柔和な雰囲気の賜物だろう。フランクに〝標的〟に話しかけ、同業者を装って適当な情報を引き出し、礼を言って握手をし、別れ際に殺す。
漬け込む隙を見つけてしまえば、後は他のどの殺し屋よりも簡単な作業だろう。
それから、僕はある協力関係の諜報機関に短期留学し、話術や業界用語、メンタリズムなどを学び、諜報と殺人に磨きをかけてより多くの悪人を殺すようになった。
だが、仕事の方針が定まったところで、僕の「人を殺したくない」という基本方針はなんら変わらなかった。
むしろ、その思いは強くなったと言っていい。
諜報する中で、僕は他のどんな殺し屋よりも〝標的〟と談話する機会が多かった。自分を信用させるため、そして最後まで穏健な雰囲気を保つため。その中で、他愛もない会話を彼らと交わすうちに、殺害を依頼されるような大の悪人も、自分たちと何ら変わらない人の子なんだと、感じるようになった。
彼らは実に、人間味溢れる人間だった。個々人がそれぞれに主義を持ち、趣味を持ち、大の悪人であること以外は何一つ普通の人と変わらない人間臭い奴らだった。
それは、文書の冒頭で「僕は殺し屋なのに残忍でない」と書いたときに感じた違和感に似ていた。
加えて、僕が接触した何人かの〝標的〟は、絶対に殺さなければいけないほど救いようのない奴ではない気がしたのだ。少なくとも、今すぐでなくともいいと思った。それはきっと、間違いではないだろう。
僕が習った話術を、メンタリズムを適切に使えば、うまい具合に彼らを改心させられたかもしれなかった。社会的に罪を償わせ、よりよい倫理的な人生を送らせることが、できたかもしれなかった。僕は誰も殺さずに、殺し屋でいられるかもしれない。
しかし、現実はそう甘くはない。
僕は何度か、いや何度も厚生の可能性のある〝標的〟を殺さずに済むか、上層部に打診してみたりもした。が、その多くは聞く耳も持たず、棄却されてしまった。
仕方なく、僕はまた殺した。
それからというもの、僕は十年に及ぶキャリアの中で百を超す命を断ちながら、その全てのケースで一つでも多くの命を守れないかを常に考えていた。
不慮の目撃者はもちろんのこと、厚生できそうな悪人を、そして厚生の余地もないような大悪人も、僕はできるだけ殺さずにいたかった。
彼らを殺す最後の瞬間まで、彼らが死ぬ最期の瞬間まで、僕は彼らを救う手立てを脳裏で考え続けていた。
「おまえは、どうしてそんなことができるんだ」
ヒスパニック系の同僚が、僕の話を聞いてそんな風に驚いた。
仲間で、仕事の愚痴を話し合っていたときのことだった。
「つまり、おまえは〝標的〟のことをはじめから最後まで、思いやって殺しているってことだろ」
そいつはバーのカウンターに肘を付いて僕を見上げた。
そういうことになるかな、と僕が特に考えもせず返すと、
「おまえは頭のネジがトんじまってるぜ」
僕を挟んで反対側に座っていたアフリカ系の同僚が、やれやれと肩を竦めた。
僕はそう言われて、度数の低い酒を呷りながらむくれた。
「あのなあ。いいか?」
アフリカ系の同僚は、ビールをぐいと飲んでから、
「命を奪うっつうことは、過去にそいつへ投資されたもの、将来そいつができたはずのことを、全部引っくるめて奪うってことなんだぞ。俺たちは、誰かの歴史と可能性を食らって飯を食ってるんだ」
「そうだぞ」
ヒスパニック系の同僚は頷いた。
「まあ、俺らが手にかけてるのは実際には悪党ばっかだから、将来そいつがしちまう犯罪を未然に防いでる、なんて調子のいい考え方もできなくはないがな」
「そうでなきゃ、俺らの殺しは国に赦されちゃいねえよ」
「ちがいねえ」
ヒスパニック系の同僚がまた同意して、手元にあったバーボンを喉に通し、唸った。
「んで、なんだっけか。あーそうそう、おまえの恐ろしいところは、そこなんだよ」
僕はわけがわからず、どういう意味なのか訊ねると、
「おまえの仕事の完成度は、はっきり言って高い。一度も〝目標〟を仕留め損ねたことはなかったろ。そんな仕事っぷりなのに、おまえはずっと殺したくない殺したくないなんて考えながら正確に仕事をやってのけるんだろう」
アフリカ系の同僚の声色が張った気がした。メラニンの多い肌に埋まった白い目が、こちらをじろりと見ていた。
「そんなのは狂気じみてる。度合いだけで言えば、俺たちが殺してるサイコキラーなんかといい勝負かもな」
悪口ってわけじゃないぞ、と僕の不快そうな顔を見つけたアフリカ系の同僚は笑った。
「だけど、あれだな。やっぱりおまえは」
ヒスパニック系の同僚の呟きに応じて、
「ああ。おまえは高率と狂気の殺人鬼だよ」
それからも、僕はたくさん人を殺した。
なるべく殺さないように、殺してきた。
その中にはやっぱり、あの局面で殺さなくてもいい人たちだっていたはずだ。
悩みながら、だけど僕はこの仕事を続けた。
〝先生〟の言ったことを、実践できるように。
二百と二人。
今日までに僕が、直接この手で殺した人の数だ。
今一度数えるのに、思ったほど手間取らなかった。僕は、殺した相手の顔を後始末の最後まで見届ける。資料で覚えた普段の顔に擬えて、彼らの死に顔を目の奥に焼き付ける。
そして毎日、夜寝るときにシーツの中で彼らを思い出し、目を閉じながら手を合わせる。
だけどそれが、慰めになるとは思わない。罪滅ぼしになるとも思わない。
それは、僕が一つ一つの命に対して、目を背けず関わり続けるための儀式のようなものだ。きっとこれは、彼にさえわからない僕だけの感覚だろう。
そう、きっと。
命の重さとは、生きることにどれだけ真摯であるかなのだ。
多少仕事内容の暴露、修飾過剰の気はあるが、僕の悩みはこれでおしまいだ。
いざ言葉にしてみれば、なんて短いものだろう。
それで、最後に。
この文書の目的を、記そうと思う。いざこれを書くと思うと、指先が意識してうまくキーが打てない。しかしこれは、必ず書き留めておかなくてはならない。
この文書は、僕の独白だけでなく、遺書も兼ねている。
この文書はあの子に、僕のかわいい姪に宛てた、絶対に読まれてはいけない遺書だ。
何も知らない、命の重みを感じる機会もそこそこのあの子に、僕が経験し、体験した命の重さをどうしても伝えたいとふと思い立ったのは昨日だ。
あの子には、一つ一つの命を大切にできる優しさをもって生きてほしい。
けれど同時に、僕は叔父としてあの子に、僕が殺し屋をやっていることを知られたくない。
ずいぶん利己的な理由になってしまうが、僕はあの子と暮らす日常が大好きなんだ。あの子が僕の料理を食べ、美味しいと言ってくれる。学校で友達がたくさんできたとはしゃぎ、年頃の女の子らしくおしゃれを気にするあの子を、静かに微笑みながら見守っていてあげたいんだ。あの子を引き取ってからは、この日常を守るために辛い仕事を続けてきたといっても過言でないかもしれない。
僕は兄と義姉から、あの子を託された。その責任をきちんと果たさなくてはならない。
あの子に命の重さを教え、かつ僕が正体を隠し通せる方法が、どうしても思いつかなかった。
だからここに、決して読まれてはいけない遺書の形でその思いを残した。いつかよい方法が見つかればいいのだが、もし僕が最期のときまでこのことをあの子に伝えられなかったときは、できれば見つけてほしくはないけれど、この文書を読んでほしい。
これは、叔父である僕が、姪である君に宛てた僕自身だ。
僕はいつだって、殺したくなんてなかった。
そしていつだって、殺してきた。
君は、君だけは、どうかそんなことにならないように。
ここで筆を置く。
Dear 昋詩
××××年××月××日 Regards, 曽木篤
* * * * *
男はファイルを幾つかあるフォルダの一つに保存してノートパソコンの電源を落とし、部屋を後にした。
少女の部屋から明かりが消え、物音がしないのを確認して胸を撫で下ろすと、その奥にある自分の寝室へと身を滑らせた。
そうして一分ほど明かりがついて、すぐに消えた。
カーテンが開かれたままの窓から、柔らかな月影が白いリビングに差し込んでいた。
壁に掛かった黒い時計がちくたく針を鳴らす。
時刻は半夜、二時二分だった。
※自分の敬愛する作家さんの流儀に則って、この後書きには本作のネタバレは含まれません。
* * *
こんにちはこんばんは。
桜雫あもる です。
いかがだったでしょうか。
設定やキャラクターを凝った割にはそれらを、特に主人公とその仲間たちを活かせていない後悔があります。
ネタバレは含みませんが、ここで作中に出てきたちょっぴりマニアックな用語の解説を挟もうと思います。
まず、ブッシュナイフ。
これは作中でも言及したとおり、植物の密生したジャングルなどで、進路を確保するために草や低木を薙ぎ払う(これを「藪漕ぎ」という)用途に特化した鉈状の特大型刃物です。
サバイバルに用いる万能ナイフのような汎用性はなく、その大きさ故に操作法も限られていて用途は概ね限定的ですが、獲物を捕らえたり、解体するのにも使えるようです。
先端部に向かって幅広く、重くなっていく形状のおかげで、勢いをつけた緩やかで大きな動作により、たいして腕力を使わずに重さと慣性(物体がその運動を保とうとするはたらき)で先端部が速さを増し、効果的に対象を切断することができる──という代物です。
大柄なため振り下ろすことに向いており、また単純な構造と壊れにくい頑健な作りなのがメリットです。
白兵戦(至近距離での戦闘)にも用いられるそうですが、このナイフの難点は〝大きすぎること〟です。携帯には不便で、手先の細かな調整が効きません。作中で主人公がブッシュナイフを選んだ理由をぼかしてしまいましたが、詳しく描写することができる機会があればそのときに語らせていただきます。
次に、グロック17という自動式拳銃について。
作中の「プラスチックを多用した自動式拳銃」というのがこれです。
普通は安くて硬く、加工しやすい鉄合金を使うところを、なぜプラスチックにするのか。それは、生産性の向上、軽量化、そしてなんと、寒冷地で使用する際に冷えた皮膚に金属が張り付いてしまう事故を防ぐためだそうです。
これには驚きました。
プラスチックを多用していることから、「空港の荷物検査に引っかからない」というデマも広まったそうですが、今は完全に対策がされています。なお、プラスチックが使われているのは安全上問題のない部位だけだそうです。
(wiki大先生ほかより)
前書きや後書きで、何度も「設定を作り込んだ」と書いていますが事実その通りで、単発だったはずのこの物語の続編を思いついてしまいました。創業千年を超えるとある日本企業の社長の遺した言葉ではありませんが、アイデアに蓋をしないのが、自分の長所であり短所だと思っています、余談ですが。
なので、まだ目処は立っていませんが、これとは別に似た形式の短編を一作と、そして連載を一作、というふうに考えています。
実生活がなんだか背水の陣チックな事情のためいつ実現するかはわかりませんが、生温かい目で見守ってくだされば幸いです。
ご一読ありがとうございました。
桜雫あもる