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決めなきゃ人生変えられない!  作者: 空橋 駆
本編 決めなきゃ人生始まらない!
3/13

3.終わる日常

それから数日経ったある日。


危険な目にあった事を忘れはしていないけど、

周辺が少し騒がしくなった気がして。


何か……あるのかな、と。

帰り道で振り返る事が増えた。


本当の地獄は、忘れた頃にやってくる。

私はとうとうそれに巻き込まれてしまった。



今日もまた、家への帰宅途中。

途中で、黒服の男達が道をふさいで邪魔をしていた。


時折見かけた、私の周辺で何かを探っているであろう相手。

明らかに彼ら兄弟とは違う、威圧的な雰囲気……


その中の一人が、私の前に向かってくる。

名前を確認されたけど、私は名乗らなかった。


「写真で顔は割れているんだ、

 大人しく従ってもらおうか?」

「嫌です」


拒否しても、相手は顔一つ変えなかった。


「邪魔なので、通してくれませんか?」

「残念だが、君が一緒に来て貰わないと困るんだよ」

「な、何でですか?」


逃げたい。

何かとても、大変な事に巻き込まれ始めている。

そう思うと怖い。立っているのが辛くなってくるくらいに。


彼らの視線は……

あの突き飛ばされた時に感じたそれと同じ。


「何も必要は無い、君を連れて帰れば良いだけだ」


目の前の男が、私の肩を掴もうとする。

このまま……私は……


目を閉じて、駄目だと思った瞬間。

相手の手を防ぐように、私の目の前に人が入り込んでいた。


「ま、間に合ったか……」

「え、えっ?」


間に入った人は、男を睨みつける。


「感心しないな、女性を連れ去ろうなんて……」

「ぐっ……貴様っ!」


襲い掛かろうとする男を突き飛ばし、

間に入ってくれた人は私を連れて後ろへ走る。


「ここに居ては危ない、来るんだ!」


この声、彼の弟くんの声だ……

そう思ったのも束の間、そのまま私は抱きかかえられていた。

軽々と……軽々と?


「待ちやがれ、彼女は我々の……」

「お前らの事情など知るかっ!」


黒服にそう言い捨てた弟くんは、私を抱えて黒服の集団を撒いて逃げる。


「ど、どうしてこんな事に……」

「後二日だったのに、兄でもあの猛攻は防げなかったか……」


後二日? 兄が防いでいる?

どういうこと、ねえ、どういうことなの?


「兄が防ぐって……」

「喋らないで、舌を噛みかねない!」

「んんっ……」


慌てて口を塞ぎ、舌を噛まないようにする。

とりあえず今聞くのは無理そうだと思ったけど……


「兄が防いでると言うのは、そのままの意味です。

 後二日……これは……」


言いにくそうな顔をしている。

それならば、無理に言わなくても良い。


「説明している暇は無い、その時になれば……」


追っ手が迫ってくる。

数が多い分だけ、こちらが不利……


「ただ、大切な日……」


二日後……確か、私の誕生日だよね。

私の誕生日に何かが起きようとしている。


「降ろします。この先の公園を目指して逃げてください」

「え、な、何で?」

「ここで食い止めます。

 出来るだけ早く逃げてください、間に合わないと困ります」


そのまま私はあっという間に降ろされて……


「あ、ありが……」

「お礼は良いから早く!」


お礼を言うまでもなく、走らされた。


走る、走る、とにかく走ってみる。

気がつくと、公園が見えてきた。


中に入ろうと思って、止める。

出入り口が少ない場所に逃げ込んだら、捕まりかねない。

だって、黒服の男が公園の中に居るのが見えたから……


この公園を抜けると家への近道になるけど、

このままだと家に帰るのは無理。

それに、帰っても押しかけられたら……


近くに大型のバイクが止まった。

乗っている人が黒服でない事を祈りながら……


「やっと見つかったわね……

 大丈夫よ、怖がらないで。私はあなたの味方だから」


女性の声だった。

黒服は全て男の人だったので、彼女はあの黒服の仲間では無いかも……

でも、得体の知れない人だから、少しだけ警戒して……


「誰……ですか?」

「説明は後よ、後ろに乗りなさい。

 ヘルメットそこにあるから、手早く付けてね」


言われたとおりに、ヘルメットを装着してバイクに乗る。

よかった、私の味方をしてくれる人で。


「しっかり捕まっていてね。

 少し遠くまで急いで逃げるから」

「は、はい……」


これもまた言われたとおりにする。

黒服の集団はそれに気付いて連絡を取っているけど……


「本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ、こちらにも一応味方はいるから」


そのまま少し走って、道端に止まる。

そしてヘルメットを外した。


顔を見ると、結構可愛らしい女性でした。


「ここまで来れば大丈夫ね」

「ほ、本当に大丈夫ですか?」

「危なくなったら連絡も入るから大丈夫よ」


少し無用心な気がするけど、

今はそれで大丈夫だと思いたい……


「まさか、あと少しというところで強行手段に出られるとは思わなかったわね。

 もう少し穏便に仕掛けてくると思っていたのに」

「何が何だか事情がさっぱり読み込めないのですが?」

「そうね、残り二日なのよ、二日」


女性は溜息をつきながら、そう言った。


「私の誕生日がどうかしたのですか?」

「そうなのよ、あなたの誕生日なのよね……可哀想に。

 こんな事が無ければもっと楽に進めれたのに」

「楽に?」

「ええ、それでも安心して良いわよ」


何でそんなに楽観的に考えられるのかな?

事情を知らない私には全く……


「知らない事ばかりなのに……」

「あ……不味いわね……」


イライラする。

変な事に巻き込まれるし、家に帰れないし。


「知らない事ばかりなのに何を安心すればいいのですか!」

「ま、まあそんなに怒らないで」

「怒って当然です!」

「そうね……怒るのを止めてくれたら種明かししてあげるわ」


納得がいかないけど……

何があるかを聞いて納得できなかったら怒ろう。


「決断、ちゃんとしないと駄目よ?」

「何を言ってるんですか?

 唐突に訳の解らない事を言わないで……」

「ほらほら、落ち着いて」


彼女は私をなだめようとするけど、

私はイライラが抑えられなくなりそう……


「十八回目の誕生日に真実を知らされるの。

 辛い現実と向き合わなければならないかもしれないけど、

 くれぐれも、無理な決断はしないでね」

「それは私に関係あるのですか?」

「あなたが決めるのよ」

「もう、何が何だかさっぱり分かりません」

「その方が都合が良いわ、下手に知れば護りにくくなる事もあるの」


上手く逃げられたと思ったけど、

何となく言いたい事が遠回しに伝わってくる。


「大変な事に巻き込まれてるのね、私」

「そうね、怒っている場合でもないの」

「逃げられません?」

「今は、無理ね。

 家に帰っても周辺には黒服が居るわよ」


さようなら、私の日常……


「これから、どうするのですか?」

「とりあえずあたしの家で泊めてあげるわ。

 少し遠いけど、行きましょう」


そして私は女性の家に招かれた。

結構大きな家で、シャワーとベッドを使わせてもらった。


でも、あまりよく眠れなかった。

こんな体験をしたときこそ、彼に護って欲しかった……

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