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決めなきゃ人生変えられない!  作者: 空橋 駆
本編 決めなきゃ人生始まらない!
11/13

10.新たなる日常

朝の光が眩しい。

目を覚ますと、私の横には彼がいて。

そしてここは、車の……中。


「ここ……どこ?」

「ん……起きたか」


声を掛けてくれたのは良いけど、

彼も今起きたばかりだったみたい。


「何があったの?」

「いや、俺にも全然……」


運転席には誰もいない。

と、車の窓ガラスが外から軽く数回叩かれた。


「二人とも、おはよう」

「え……あ、おはようございます」

「おはよう、どうした?」


お姉さん、なんだけど……

随分と眠そうで、疲れきっている表情をしていた。


「現実であんまりくっ付けないからって、

 二人揃って夢の中で延々といちゃつかないでね……」

「ふぇっ?」

「何故解る!」


お姉さんの発した言葉はあまりにも突拍子が無さ過ぎて、

私も彼も一緒になって驚いていたけど……


「二人とも寝言で愛を囁きあってるのだから、

 もしかして一緒の夢でも見てたのかもね」

「見てない見てない多分見てないよっ!」


私は即座に必死に全力で否定する。

だって抱きしめられて愛してるの言葉いっぱい言ってもらって……

そんな願望だらけの夢なのに、彼も同じ夢見てるなんて……


「と、とりあえず落ち着け?

 落ち着かないと色々探られるぞ?」

「そういうあなたはどんな夢見たのよっ!」

「お、俺はお前と一緒にデートして色々……」


ごめん、私の夢もそれに近かったです、はい。


「ともかく、かなり凄かったわね。

 これは夢の中でも、随分と凄い……」

「う、ううっ……」


ま、まずい。夢の中身をお姉さんに知られたら、

何度もネタにして笑い話にされそうだから何とかしないと……


「デート……うん、今度の日曜にしよっ!

 そうすれば寝言で言わなくて済むからきっと!」

「お、おう……」


無理矢理彼を納得させてとにかく落ち着いて……

お姉さんの反応は……


「本当に二人とも反応が解り易いというか、

 墓穴掘ってるというか一緒になって色ボケしてるというか……」

「う……ううっ……」


お姉さんが呆れ顔になっているので、

どうやら大体の夢の内容は悟られているみたいでした。


「隠してもいいけど、何となく想像はつくのよね。

 まあ、そんな反応が加わるから余計に察しがつくのだけど」


私達の反応って、そんなに解りやすいのかな……

口にしたら、即その通りって答えられるかも。


「ここで言っちゃおうかな……」

「や、止めて……勘弁して……」


このままだと、色々な事を明かされてしまいそう……

私は更に混乱の中に……


「済まなかった、色々と取り乱した」

「あうっ……ありがとう」

「落ち着いたか?」

「うん……」


彼は少し落ち着いたらしく、

混乱している私を抱き寄せてなだめてくれた。

だけどお姉さんは追求の手を抜いてはくれない。


「隊長の堪え切れていない笑顔、

 乱れたままだから直さないと無理かもしれないわね」

「なっ……お、俺そんなに顔がにやけてるか?」

「ちょ、ちょっと落ち着いてっ……」

「抑えてた物が無くなってこんなに面白い人になるとは思わなかったわよ」

「お、俺……そこまで……」


今度はなだめてくれていた彼の方が混乱してます。

力強い心臓の鼓動がたくさん伝わってきて嬉しいんだけど……


「わ、私達二人とも慣れてないので、

 あまりからかわないでください……」

「み、右に同じ。もう勘弁してくれ……」


ぐったりと疲れ切った私達と、

未だに大笑いしているお姉さん。


「が、学校……」

「ああ、行かないとな」

「悪乗りしていて忘れかけていたわ」


お、お姉さん……

それ、本当に洒落になりませんよ?


「とはいえまだまだ朝早いのよ。

 時間はあるけど、着替えとかも必要なのよね……」

「二人の家に寄るとなると、面倒だぞ?

 彼女の家に先に行った方が良いだろう」

「私の家?」

「俺の場合は最悪遅刻でも何でも言い訳が立つ。

 真面目な娘で通ってる君の場合は少々困るだろう?」

「それも……そうだね」


あんまり真面目な娘とか言われるの嬉しくないけど、

そういうのを考えると言われても仕方ないよね。

今度はそれにお嬢様なんて肩書きが増えそうだけど……

この辺はもう、慣れるしかないよね。



お姉さんの引越し予定地から、車で移動する。

その間、私達の間にはあまり会話が無かった。


何となく、口にすると想いが止まらなくなりそうだから……

そんな事を思って悩んでいたら、私の家に着いた。


「何かあると困るから、近くで見守ってあげなさいよ?」

「ああ……」


真剣な表情が本当に似合うよね、彼。

見守ってくれるなんて嬉しい……


「それに、折角だからついて行って一緒の部屋で着替えてきなさいよ」


唐突に飛んできた爆弾発言で私と彼は慌て、思わず転びそうになった。


「何考えてるんだあんた……」

「うう……お姉さんがこんな人だと思わなかったよぉ……」


でも、彼に見られるなら……


「恋人同士な今はいいけど、いつかは結婚して全部さらけ出す日も来るわよ?」


そうだよね、いつかは彼と結婚するのだから……


「ま、まあそれはいずれ結婚でもしたら有難く拝ませてもらう」

「うん、その時は……あれ?」


何か変な事口走りそうになって、私は慌てて喋るのを止めた。


「やられた」


肩を落として反省している彼の顔を見て気付いた。

私含めて、何か変なこと言っちゃっていたのかな?


「二人揃って、本当に墓穴掘りすぎよ……

 学校でそんなやり取りを出さないように気をつけてね」

「はい……」

「了承した……」


どうやら、私達二人とも駄目だったみたい……

お姉さんの注意に、私と彼は大人しく反省するしかありませんでしたとさ。



普段通っていた通学路の途中にまで送られてきた。

車が止まると、お姉さんは私だけ車に残るように指示した。

それを受けて、彼は車を降りた。


「あなたを残したのは、最後にもう一度選んで欲しいから。」

「はい……」

「この車を降りた先にあるのは、元の平穏な日常よ」


僅か数日離れていただけなのに、

とても遠くに見えてしまっていた……存在。


「車を降りる、それとも降りない?

 降りないなら、あなたの望む場所に連れて行ってあげるわ」


これもまた、決断なのね。

日常に戻るか、戻らないか……


「私は……日常に戻りたい。

 彼と一緒にまた、学校に通いたい」

「その決意を聞きたかったのよ。

 あなたはあなたのままで良い。だからそれを忘れないでね」

「ありがとうございます」

「さあ、行きなさい……」


私は車から降りた。

それを見て、彼が近付いてきてくれる。


「お待たせ」

「話は、終わったのか」

「うん」


振り返って車の運転席を見る。

お姉さんが泣きそうな顔で手を振っていた。



私と彼は手を繋いで通学路を歩き出す。

これで私は、日常へとようやく戻ってきたと思えた。


「これからは、いつもの日常だね」

「以前とはほんの少し違う……だろう?」

「うん、そうだね」


ここから、私の新しい日常が始まっていく。

隣には、彼が居てくれて……


「大好き、ずっと一緒にいてね」

「こちらこそ、ずっと一緒だ」


繋いだ手を離さずに、校門を抜ける。

色々と皆に聞かれるかもしれないけど、気にしない。

文句とか色々と言われてしまうかもしれないけど、それも気にしない。


だって、私と彼は既に婚約者同士。

恥じるような関係ではなくて、祝福大歓迎の関係なのだから。


これからの毎日が、素敵な物になりますように。

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