序章
学園ではないような気がします……。
頑張って更新していけたらいいな! と思ってます。
序章
「召喚って知ってる?」
女の子が隣にいた少年に話しかける。
その女の子は如何にも漫画やゲームに影響されたかのような黒いローブを羽織っていた。少年と同じくらいの身長しかないが、珍妙な恰好のせいで部屋の中で異質な存在感を放っていた。
「召喚?」
少年は女の子とは異なり、平凡をその身で体現したような男の子だった。
隣にいる魔法使い風の女の子が異質なせいで余計にまともで且つ普通に見えるというのもあるだろうが。
「召喚も知らないの?」
少年と物が散乱している物置部屋の隅で袋を漁っていたもう一人の少女に対して馬鹿にしたように言い放つ。
「召喚くらいは知ってるよ」
少し腹がたったのか、むっとしたように少年が返す。
「よし、じゃあ召喚をしよう」
今から遊びに行こう、というのと同じくらいの気楽さで女の子は少年と少女に提案する。提案というよりは強制という口調だったが。
「……これが原因?」
女の子が持ってきていた袋の中から少女が何かを取り出す。
「わー!もう、なんで出しちゃうの!」
少年がちらりと見たときには女の子に取り上げられて隠されていた。
「とにかく!ちゃんと準備してきたからやってみようよ!」
そう言いながら女の子は大きめの紙袋を掲げる。
何が入っているのかと少年は覗こうとするが、女の子にでこぴんされる。
「いたっ」
「のぞかないの!」
涙目になりながら睨みつけるが、女の子はどこ吹く風で受け流す。
「じゃあ、瑞樹がこれで、杏がこれね」
瑞樹と呼ばれた少年には丸められた大きな紙と黒のマジックペンを、杏と呼ばれた少女には一冊の本をそれぞれ紙袋の中から取り出して渡した。
「これは?」
「……どうすればいいの?」
「杏はしおりを挟んであるページの召喚陣を見ながら、瑞樹に指示してあげて。瑞樹はそれ聞きながらその紙にそのペンで描いて」
振り回されることには慣れているのか、女の子の指示に渋々ながらも頷く二人。
その子自身は紙袋の中からクリアファイルを取り出し、そこに入ったプリントを見ながらぶつぶつと呟き始めた。
何をしているのか少年は気になってちらちらと見ていたが、邪魔したら怒られると思ったのか、作業に集中する。
歪な曲線になりながらも、少女の指示は的確で子供が描いたにしては、と注釈がついてしまうが、上手いものが出来上がった。
「できたよー」
「将来はきっと二人とも出来る子になるねー!」
それは仕事が早いことに関してのものか。
それとも唯々諾々と従ってやったことに対してのものか。
恐らく両方の意味を兼ね備えているのではないかと思わせるほどには女の子の浮かべている笑みは悪いものだった。
「じゃあ、始めようか!」
部屋の中央に召喚陣が描かれた紙を敷く。
黒いローブの女の子を挟むようにして少年と少女が横に立った。
真ん中に立っている女の子は目を瞑り、召喚の呪文らしきものを詠唱し始める。
だが何周したのか分からないほどに唱えていても一向に変化は訪れず、もう女の子の声が涸れ始めてきていた。
そろそろやめようかと女の子の肩を少年が叩こうとした瞬間、視界の端できらりと召喚陣が光ったような気がした。
「え……?」
そこからはまさに怒濤の変化だった。
少年が引いた線を、文字を、なぞるように青く光り、それが陣全てに行き渡ると今度は薄暗かった部屋全体を照らす光量にまで達した。
そうして最大限にまで明るくなったところで、少年も少女も思わず目を閉じてしまう。
その間もずっと女の子は目を瞑りながら詠唱を続けていた。
徐々に光が弱まっていくのを感じ、収まったところで三人は目を開ける。
そこには。
「なんだ、餓鬼共」
黒い翼の生えた、まるでゲームの中でしか見たことのないような異形の怪物が召喚陣の上で宙に浮いていた。
あまりにも非現実的な光景に三人とも言葉を失った。
ローブの女の子自身もまさか本当に現れるとは思ってはいなかったのか、呆然としてしまっていた。
「オレは餓鬼の遊び如きで呼び出されたというのか……!」
それがまずかったのだろう。
子供に召喚されたという事実だけでも怒気を発していたというのに、召喚主までもが遊びのつもりだったと感じ、悪魔の怒りは殺意に変わった。
威圧感が増す。
風が吹くはずもない密閉された部屋だというのに目を開けているのが辛くなる。
杏と呼ばれた少女がその時点で気を失った。
「まずはお前だ……」
悪魔の異様に伸びた爪が少年に近づいてくる。
それが限界だった。
少年はそこで気を失い倒れてしまった。




