再び緑の場合
携帯を買い換えた。
「いいでしょ」
私は一緒に選んだミキオに十分自慢した後友達にメールを送った。
最新式の機種に慣れない手つきで。
―携帯換えました―
「ねえ、どっか座ろ」
そう言って二人でコーヒーショップに入る。
店内ではコーヒーの香りが充満していた。この匂いが好きで高校のころは毎日のように通っていた。
いつもの様に、私はモカを頼みミキオはラテをたのむ。
店員の手はせわしなく動く。
コーヒー豆の匂いが香り立つ。
「トイレ行ってくるよ」
席をキープするとミキオは席を立った。
モカを一口飲むと甘い香りが鼻を抜ける。
携帯が鳴った。
―今どこにいる?―
幸子からのメールだった。
―ミキオと新宿だよ―
―今からそっち行っていい?―
―いいよ―
私が携帯を畳むとミキオが戻ってきた。
「なんか、サチが来るって」
私は笑顔でミキオを見る。
「今?」
ミキオの質問に私は頷く。
「どうしたの?」
あんまり歓迎していないようだった。
「みどり」
そこまで言うと、幸子から電話がかかる。
「ちょっと待って、サチからだ」
ミキオの言葉を遮る。
「着いたよ。どこいる?」
入り口に幸子がいた。
私は手招いた。
サチは一歩一歩向かって来る。
私はモカをもう一口含んだ。甘さが一瞬広がり、苦さが余韻を残した。
くしゃっとミキオがストローの袋を握りつぶした。
目の前に立つサチを見、ミキオを見た。
二人とも何も話さす、一瞬二人の視線が交差し、ミキオから外した。
「そと、まだ晴れていた?」
私の声だけが鈍く響いた。
多分
そとはまだ晴れている。