1 【占いの館 ネムノキ】
視線が合ったとき、その瞳は黒曜石のようだと思った。
闇夜に溶けるような黒髪。黒い宝石のような瞳。
あなたは、忌み嫌われている魔女から目を逸らさなかった。
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幼い頃に亡くなった両親の代わりに私を育ててくれた祖母が、亡くなった年。
兄妹や親戚もおらず、天涯孤独になってしばらく落ち込んでいた。
けれど、国から国へ街から町と渡って商売をしている週に数回来てくれる行商人さん達が、あれこれと世話をしてくれた。祖母から教わった事と、行商人さん達のおかげで何とか生きてこられた。
祖母から教えてもらった魔女の薬と、おまじないの道具。
それを作って行商人さんに買い取ってもらい、魔女の占いをして生計を立てている。
「リサちゃん、野菜やお肉。新鮮なものを持ってきたよ!」
行商人のノラおばさんが、食材を持ってきてくれた。
「あり、がとう……ございます」
個人が野菜など栽培しても、限度があるので助かる。新鮮なお肉も助かっている。
「異国のランプを手に入れたけれど、どうだい?」
行商人のおじさんのジョンさんは、珍しい異国の家具や置物などを持ってきてくれる。
「あ……。欲しいです」
「あ、渡さなきゃ! 売上金。リサちゃんの作ったお薬とおまじないの道具の、売れたお金。どうぞ!」
ノラおばさんが代わりに売ってくれた品物の、売上金を渡してくれた。ちゃんと事前に売る値段を双方で決めておいたので、金額に間違いはない。
「俺もリサちゃんの売上金あるよ。はい」
ジョンおじさんも、売上金を渡してくれた。
「ありが、とうございます……」
きっと顔が真っ赤だと思うので、フードをさらに深く被ってお礼を言った。
赤面症と、上手く話せない私を馬鹿にすることない優しい人達。私のおばあちゃんが生きている頃から、この屋敷に来てくれる行商人さん達。
おばあちゃんから、とてもお世話になったからと言って週に何度か来てくれている。
「行商人の私達はリサちゃんのこと、孫か娘だと思っているからね!」
そう言って私を気にかけてくれているので嬉しい。
街の人達は占いが当たると噂しているが『忌まわしい魔女』と言って、この【占いの館 ネムノキ】の魔女を忌み嫌っている。
大昔に、私達と関係のない魔女が疫病を流行らせたと言われている。
それで魔女と呼ばれる者が、忌み嫌われてしまった。
魔女の作る薬はよく効く。占いは当たる。
代々魔女の家系の私はそれで生計を立ててきた。
嫌われても、魔女は魔女としか生きていけない。
【占いの館 ネムノキ】のリサは、すべてをあきらめていた。




