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第1話 作戦会議




アーク・アカデミア――

連邦の心臓部にして、異能と科学の集積地。


高層塔群が突き立つ中央学術区を中心に、訓練ドームや研究施設が放射状に広がり、その外縁を防壁 《アイギスライン》が囲んでいる。

空には蒼白く輝くマナ障壁が覆い、街全体がまるで一つの巨大な兵器のように機能していた。


だが、そんな厳めしい防衛構造の一方で、都市内部は驚くほど賑やかだった。

書店や劇場、喫茶店が並び、休日には学生たちが制服姿でカフェテラスを賑わせる。

要するに――「兵士養成都市」なのに「青春学園都市」でもある、というわけだ。


俺が暮らしているのは、その一角にある男子寮 《アーク・コロニー》だ。

四人部屋、二段ベッド、共用ラウンジ付き。

壁は無駄に白く、監視カメラが角に光っている。


「軍事要塞に下宿してるみたいだな」と思ったことは何度もあるが、慣れれば案外快適だ。

夜になると廊下に響く笑い声や、部屋の明かりから漏れる異能練習の光――そんな喧騒が妙に心地よい。



その日、俺は寮の共用ラウンジで“ある人物”に呼び出されていた。


「おっそいやん、スコール!」


待っていたのは、俺のクラスメイトであり、数少ない“悪友”の一人――



■ セリナ・オルコット

・外見:灰色の髪に水色メッシュが入り、肩までのショート。

・特徴:八重歯がチャーミングポイント。

・服装:制服をラフに着崩し、ジャケットを腰に巻いている。

・性格:快活で気さく。ボーイッシュな雰囲気だが、女子らしい一面もちらほら。

・口調:関西弁(テンポがよく、軽快)。



「遅れたのは悪かったよ、セリナ」

「まーたアイリス様に見とれて寄り道してたんやろ? ほんま女好きにもほどがあるで」


彼女はニヤリと笑いながら俺に椅子を勧めた。

テーブルの上にはノートとマップ、さらには何やら軍用データらしき書類が並んでいる。


「……これは?」

「決まっとるやん。アンタの《貴族令嬢デート作戦》の軍議や」


「!!」


俺は思わず身を乗り出した。


セリナはペンをくるくる回しながら、ホワイトボードに“でっかく”書き殴った。


《目標:アイリス・ヴァレンタイン嬢と一日デート》


「ほらな。こうやって具体的に書いたら、ただの妄想やなくて立派な作戦になるんやで」


「……セリナ、君は天才か?」

「アホか。おだてても奢らへんで」


にやりと笑うその八重歯が、どうしようもなく魅力的に見えた。


「ええか? まず、アイリス様は連邦議会のお偉いさんからも婚約話が山ほど来とる。せやから普通に告白しても無理筋や」

「うん……そうだな」

「せやけど、アーク・アカデミアでは異能バトルは合法。アンタが勝負ふっかけて勝利条件を“デート”に設定すんのは、一応制度上認められる」


「つまり俺が勝てば、正式にデートできる!?」

「そういうこっちゃ」


俺は拳を握った。

セリナ……! 君こそ俺の軍師だ!


「でもな、ひとつ問題がある」

セリナが眉を寄せ、ペン先でノートをトントンと叩いた。


「アイリス様の異能は《星霊演算》。数秒先の未来を読むんや。アンタの攻撃なんざ、全部見切られて終わりや」


「ぐぬぬ……」


確かにその通りだ。

俺の《逆位相共鳴》は万能の否定能力だが、発動には相手の波動を“掴む”必要がある。

未来予測相手には、一手目から詰む可能性が高い。


「せやからな、あんたに必要なんは“予測不能の一撃”や」

「予測不能……?」

「せや。理屈で動かん、衝動や。女たらしらしく、恋の本能丸出しの攻撃を仕掛けたら、案外揺さぶれるかもしれへん」


セリナは口角を上げ、八重歯を見せながら笑った。

その姿に、一瞬だけ俺の心臓が跳ねる。


「な、なんだか妙に具体的だな……」

「ふふん、ウチかて女子やからな。女心を攻略するのは任せとき」


「なるほど……! つまり、俺の勝機は“彼女の心を乱すこと”か!」

「せや。その点だけはアンタに天賦の才がある。女好きやからな」


「おい、それ褒めてるのか?」

「もちろん皮肉や」


ラウンジに笑い声が響いた。

だが、この作戦会議の瞬間から、俺は本気で燃えていた。


――アイリス・ヴァレンタイン。

学園一の貴族令嬢。

未来予測の才女。

俺がどうしてもデートしたい、唯一無二の存在。


その高嶺の花を攻略するために、俺は今日から戦う。

そして――セリナ、お前が軍師として隣にいてくれるなら、きっと道は開けるはずだ!


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