第5話 選ばれし運命──紡がれる絆と迫りくる影
深い紺碧の夜空の下、館の大広間は静寂に包まれていた。星の輝きが窓辺のリュミエールの瞳に映り込み、かすかに震える声で彼女は呟いた。
「もう、誰かのために怯えたくない――」
アルヴィンはその隣で、鋭い視線を遠く闇の中に向けていた。
「報告の通り、間もなく異変が始まる。我々の知らぬ勢力が、リュミエール様の存在を脅かしている。」
「私の“バグ”が、ただの異変ではなくなる時が来たのね。」
リュミエールは深く息を吸い込み、しっかりと拳を握った。
「この運命を受け入れて戦うこと――それが、今度こそ“普通”に生きるための第一歩。」
その言葉は決意そのものであり、長い孤独からの解放を告げる鐘のようだった。
館の外、木々のざわめきが緊迫を告げる。数人の影が忍び寄り、リュミエールの加護の波を探っていた。
「敵襲だ!」
侍女の叫びが響きわたり、アルヴィンは瞬時に構えた。
「リュミエール様、無事でいてください!」
刹那、魔力の渦が巻き起こり、辺りの空気ごと震えた。リュミエールは、己の力が暴走しないよう静かに胸の奥で祈りながらも、決して後退しなかった。
「あなた達は私を恐れるけど、それでも私は普通に生きたい――誰よりも普通に。」
アルヴィンの剣が冷たく光を帯び、敵の動きを封じていく。
「今こそ、加護の無い者同士がこの世界の命運を決める時。」
彼の言葉にリュミエールは微笑んだ。
「あなたとなら、どんな運命も越えられる気がする。」
戦いの中で紡がれる彼らの絆は、神が設計した“世界のバグ”を超えて、新たな進化の扉を開いていくのであった。。
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