表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

第3話 十七度目の真実──神の意図と加護なき騎士

冷たい朝霧が館の中庭を覆い尽くすなか、リュミエールは目を閉じた。彼女の内側で、ずっと答えを求めていた問いが紡がれる。


「十七回目の転生で、なぜ彼が――アルヴィンだけが、加護を持たないのだろう?」


誰にも明かされなかった“神の秘策”の断片が、今まさに揺らぎはじめていた。


「お嬢様、朝の稽古の時間です」


アルヴィンの冷静な声が廊下の向こうから優しく響く。リュミエールは瞳を開け、微かな笑みを浮かべて立ち上がった。


彼が加護を持たぬ理由、その真実に触れる日は近い。


剣術稽古場。朝陽が柔らかな光を差し込む中、アルヴィンは静かに構え、リュミエールを見つめていた。


「お嬢様、私はあなたの力を制御する役目も担っているのです。暴走すれば、世界の均衡が崩れかねません」


リュミエールは小さくうなずいた。


「監視役としてだけでなく…」


「はい、お嬢様の加護を持たぬことは、神の…世界の最終的な調整でもあります。」


アルヴィンの言葉は重い。


「十六回の転生、その度に世界はあなたの力に翻弄されてきました」


彼は剣をゆっくりと振るいながら語る。


「しかし、あなたは単なる“バグ”ではなく“神の挑戦”そのもの。神はあなたの存在をもって、この世界を“試験”しているのです」


リュミエールの心に押し寄せる波紋。


「試験…私が“普通”に生きるための試練…?」


「違います。これは世界の“進化”への一歩。あなたの力が暴走すれば世界が壊れ、制御すれば新たな秩序が芽生える」


「だから、私は――」


「世界の均衡を保つために加護を持たず、あなたの揺れ動く力と向き合い続ける。それが私の役目です」


リュミエールは剣を下し、静かに息をつく。


「…怖い。でも、あなたのおかげで初めて、怖さが希望に変わった」


アルヴィンの澄んだ瞳が彼女を見つめ返す。


「私も、お嬢様と共に進化の道を歩みたい」


彼の言葉は、氷を溶かす陽だまりのように温かかった。


稽古後、広間でふたりは静かに語り合った。


リュミエールはぽつりと言った。


「十七回目の転生は、“普通”に近づくための最後の機会かもしれない。でももし、神の“試練”に負けたら…」


「その時は、私があなたを守ります。お嬢様だけは、誰よりも自由でいてほしい」


アルヴィンの言葉は彼女の心に深く刻まれ、新たな決意を燃え立たせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ