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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

星を見る人

作者: Aine

俺は今、林道に車を走らせている。どうしてか?その理由は単純、死ぬためだ。

トンデモブラック企業に就職したが最後、サービス残業は月100時間は余裕で超え、土日出勤は当たり前、休みはせいぜい年末年始と盆くらいだ。労基に通報してやろうかとスマホを取り出し、安い給料のせいで料金が払えず、携帯が止められていることに気がつくという一連の流れは何度やったかわからない。

そんな会社辞めてしまえと何度言われたことか。だが、財布の中に入っている平均金額は残念ながら三千円以下だ。貯金はまだ人並みの生活をしていた頃に使いきってしまったので、俺の全財産は一万を超えることはない。ブラック企業勤めの主人公が職場から帰る途中にトラックにはねられて異世界転生、なんてのはよくある話だが、残念ながら社員寮生活で職場から帰れない俺には無縁だった。

そういうわけで俺は、なけなしの金でレンタカーを借り、紙とペンを職場からくすねて遺書を書き、自殺の名所に向かっている。

しかし、俺は七年ほど前に免許を取るだけ取ったペーパードライバーだ。基本的な道交法と運転はできているつもりだが、ナビやクーラーの使い方がさっぱり分からない。この熱帯夜にクーラーなしというのは結構辛いものだな、と変に他人事に思っていたりする。最後に音楽でも聞こうかと思ったりもしたが、CDの流し方なんて分かるはずもなく。無音でスマホの地図を片手に暑い車を走らせるというおかしな状況になっている。


暑さでそろそろやられそうだと思った頃、海沿いに出た。どうやらどこかで道を間違えたようで、低い低い岩場にたどり着いてしまった。これ以上車に乗っていたくないので、諦めて車から降り、海に入る。そこは思いの外深かったようで、あっという間に頭まで水中に沈んでいた。

ふと、空を見た。その空には月はなかったが、妙に明るかった。そして、満天の星空が広がっていた。俺の吐いた息の泡が、空に浮かんで、弾けた。

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