×月8日【ベルル】
今まで言っていませんでしたが、一応この世界は普通に魔法があって使用されている世界です。
【メイド】
「それじゃあ、行ってくるわね。」
ベルルはバッグの一つも持たずにそう言って、玄関から出ていってしまった。
一枚の紙を残して……
【ベルル】
私の判断は間違っていないはず……自分に言い聞かせながら何も持たずに歩いていった。街中を王女が歩いているとなると、流石に問題になるので、ボロい布のようなパーカーを羽織って姿を隠して歩いた。
行き先は歩いて行けるような距離では無い。少し歩いて、馬車のある場所まで行った。
「ならいくらでも渡すわ。今日中にアサルク山にたどり着いて。」
そう言って机に乗り切らないほどの袋に詰まった金を置いた。すると運転手はそれを見て二つの意味で驚愕した。
「なんて量の金……!?……いやいや、でも今日中にアサルク山なんて……まぁいい!行くだけ行くから乗って!」
そう言って運転手は盗まれないように金を馬車に乗せてから、私も乗ったのを確認して馬に走らせた。なんとしてでも到着しなければ……いや、到着させる。絶対に。
【運転手】
アサルク山……通称『地獄山』。俺からすれば大金を払ってくれなきゃ行くのだけでも嫌なくらいだ。
そう、アサルク山と言えば十数人いる運転手の中でも有名な、最悪のスポットなのだ。普通に行けば二、三日は当たり前にかかる。
まず、アサルク山は、まるで人為的に作られたかのように、山を一周囲んで巨大な川があるのだ。一応橋はかかっているのだが、川の中には超凶悪な怪物が何匹か住んでいる。静かに行けばバレることは大抵ないが、バレてしまったら人生の終わりだ。
その後山を登る道中にも、ゴブリンやオーク等、完全にこの山は怪物のたまり場になっている。それに加え、道と言えるような道はほとんどない。進もうとしても木や草が大量に生えており、馬が止まってしまう。
一応魔法の薬(変な意味はないよ)を持ってきてはいるが、果たして行けるのか……?
【ベルル】
深夜二十三時頃、ようやく頂上にまで馬車はたどり着いた。頂上はまるで断崖絶壁のようになっていて、近くにある小屋のような小さな家の近くの崖は、落ちると川がある。あの川に落ちれば、生きてはいられても、とてつもなく深い。溺れてしまうのが関の山だろう。山だけに。
「着きましたよ……」
さすがの疲労にゼェゼェ言っている運転手を置いておいて、馬車から降りた。
「あとは大丈夫です。私はここに残るので帰ってください。ありがとうございました。」
「えぇ!?……まぁ分かりました。どうなっても知らないよ!!」
そう言って馬車は私を置いてゆっくりと降りていった。あとは明日まで待つだけ。魔法道具(魔法こもった道具。この魔法道具はバリアを張るもの)でここに怪物が襲ってくることは無い。
「じゃあ向かいましょうか……」
そう呟きつつ、私は小さい家で就寝することにした。
第八話【ベルル】 終
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