×月20日
遂に作品の3分の2が過ぎました。嬉しい気も悲しい気もします。
【ベラ】
そういえば、記憶喪失になった直後に探していた思い出のある品をまだあまり見せていなかった。エイカがバスの写真は見せたそうだが、まだまだ様々なものがある。
早速まとめてベルルのいる部屋に入った。すると、ベルルはバスの写真を眺めて座っていた。
「ベルル……?」
「あっ来てたんですね。」
驚いたような表情をして私の方を向いた。「今日は色々持ってきたのよ。」と言って、カバンを置いてベッドの近くの丸椅子に座った。
「ベルル、これ分かる?」
そう言って昔見ていたアニメのグッズを見せた。ベルルは、女児向けの作品よりも、よくアクション系など、男児向けの物を見るのが好きだった。
だが、ベルルは「う〜ん」と唸って思い出しにくいようだった。部屋に飾ってはあったが、まぁ、覚えてはいないだろう。
「じゃあ、これは?」
そう言って、よく飲んでいたジュースを見せた。好きすぎてよく赤ちゃんの時にはこぼしていたせいで、バスが滑って怪我をしたこともあり、苦い思い出もあった。
だが、やはりその程度ではあまり思い出せないようだった。
「バス……父親が転んじゃった事も覚えてない?」
「覚えてないです……」
「じゃあ……」
カバンからジャラジャラと言う音のなる、綺麗な宝石の付いたアクセサリーを出した。まだ若い時にライタに誕生日で買ってもらったそうで、よく大切にしていた。
「アクセサリー……貰い物だった事は何となく……」
「そう!……誰から貰ったかは覚えてる?」
「う〜ん……」
やはりそこまでは覚えていないようだった。というのも、ここまで大した思い出の品がない理由は、一度家は火事にあっているのだ。そのせいで昔にいたベルルの兄、『バラ』は出ていってしまった。その時、ベルルはわずか数歳の時で、小さい子供だった。
その後も諦めずに色々な物を見せたが、はっきりと記憶に残っているものは全くなかった。
「それじゃあ……また探してから来るわね。」
「ありがとうございました。」
そんな時、足元に落ちているマットに気が付かず、転んでしまった。カバンの中に入っていたものがバラァッと零れ落ちる。
「っ……!」
「大丈夫ですか?!」
ベルルは驚きで思わず立ち上がってこちらに来た。「えぇ、大丈夫よ。」と言うと、私を立ち上がらせてから落ちたものをしまってくれた。
そんな時、突然ピクッとしてベルルの動きが止まった。
何があったのか。ベルルの姿を視界に入れた瞬間、体に衝撃の稲妻が走った。ベルルが、落としてしまった『あわてんぼう王子』の絵本を手に持っていたのだ。
瞬間、ベルルは体を震わせ始めた。そして、床には一滴の雫が落ちた。
「遅いよ……」
そう言ってベルルは涙を零した。まさか……そう思った途端、ベルルは私に抱きついてきた。
「全部思い出した……おか……」
言い途中にベルルは倒れてしまった。数秒後、ようやく状況を理解できて医師を急いで呼んで事情を説明した。
ベルルは一旦入院されたままにされ、私は家に帰らされることになった。
帰りの馬車の中で、馬の足音と馬車のタイヤの転がる音が響いていた。
第二十話 終
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