×月19日
【ベラ】
「ベルル様に残された日数はこのままいけば十一日です。」
「十一日……」
医師にそう告げられて、下を向くことしか出来なかった。仕方がなかった。昔のベルルからは最早離れるしか無かった。確実にこうなってしまっていた。
だが、それでも……昔の思い出を最近思い出せば思い出すほど後悔をしてしまう。
「もう時間は少ないです。記憶を取り戻さなければ、『ベルル様』自身に会えずに……」
「分かってるわ……必ずあの娘の記憶は取り戻す。」
そう自分に言い聞かすように言って医師と居た、部屋を出た。もう時間が無いのだ。
家のありとあらゆる場所を漁った。棚の隅から隅まで探した。すると、ようやくアレが見つかった。
「あった……」
それは『心の水晶』。手をかざしてみると、水晶に自分の奥底に眠る心、つまり本心が露になるのだ。
昔は敵国の兵から情報を奪うためなどに使用されていたりもしたが、現在はほとんど保管されているだけで、使用される事はない。
だが、ベルルの心の奥底に眠るもの。それなら見える。その本心をとにかく確かめたいのだ。
記憶は無くなっても、昔の心は無くならない。このままでは、最悪の場合記憶を取り戻せずに30日を迎えてしまう。だからベルルの本心を見たいのだ。
病院に着くと、ライタがいたので、事情を説明して、一緒に入院している部屋に向かった。
ベルルにも事情を話して、心の水晶に触れてもらった。すると、途端水晶は綺麗な紫色に輝きだし、中から文字が浮かび上がってきた。
『ごめんなさい。』
衝撃を受けた。一言目にそんな言葉が出てくるなんて。すると、次々に文字が浮かび上がってきた。
『私は最低で最悪だった』
『そんな私が病気になった』
『それで私は改心した』
『あまりにも虫がよすぎるのは分かってる』
『でも』
その後の文字はもう浮かび上がって来なかった。思わず絶句してしまった。ベルルが……こんな気持ちを抱いていたなんて。
私が絶縁する前はオブラートに包んでも最悪だった。でも、そんなベルルがここまで変わるなんて思ってもいなかった。
水晶から手を離したベルルの顔を見ると、ニコリと微笑んでいた。思わずベルルに抱きついてしまっていた。
「絶対に記憶は取り戻すわ……!」
そう自分に対しても言い聞かすように言って、病院を出た。絶対に記憶を取り戻す。30日までに。
第十九話 終
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