「夏の冒険」
星華高校での一年目の春が終わり、三人は初めての夏休みを迎えた。この世界では、夏休みは女子たちが家族や許嫁と絆を深める大切な時期とされ、特に公美と千枝のような裕福な家の娘たちは、豪華な計画を立てることが多かった。一方、陽は普通の家庭出身だが、二人の強い要望で夏休みのほとんどを一緒に過ごすことが決まっていた。
夏休み初日、三人は公美の家の別荘へ向かうことにした。別荘は山間の湖畔にあり、広々とした庭とプライベートビーチが自慢の場所だ。公美の両親が「三人で楽しんでおいで」と送り出してくれたおかげで、荷物を詰めた大きな車に乗り込み、陽は席で公美と千枝に挟まれる形で出発した。
「ようちゃん、湖で泳げるの楽しみだね! 水着もちゃんと持ってきた?」公美が陽の頭を撫でると、千枝が笑った。
「うん、ようくんの水着姿、ちっちゃくて可愛いだろうね。あたし、浮き輪も用意したからさ!」
「くみちゃん、ちえたん、僕泳ぐの苦手だからあんまり期待しないでね…」
陽が少し不安そうに言うと、二人は「大丈夫、私たちがいるから!」と声を揃えた。
別荘に到着すると、三人は早速水着に着替えた。公美と千枝はビキニスタイルで、250cmの長身に映える大胆なデザインを選んでいた。一方、陽は小さなトランクス型の水着で、二人に比べるとまるで子供のようだった。
湖畔に立つと、陽は二人の膝くらいの高さしかなく、公美がひょいと彼を抱き上げて湖へ向かった。
「ようちゃん、冷たいからびっくりしないでね!」
公美が陽をそっと水に下ろすと、彼は「うわっ、冷たい!」と小さく叫んだが、すぐに慣れて笑顔になった。千枝が浮き輪を手に持って近づき、「ほら、ようくん。これに乗ってれば溺れないよ。あたしが押してあげるから!」
三人は湖で遊び始めた。公美と千枝が交互に陽を浮き輪ごと引っ張ったり、水をかけてじゃれ合ったりしているうちに、陽も少しずつ泳ぐコツをつかみ始めた。
夕方になると、三人はビーチでバーベキューをすることに。陽が料理部で培ったスキルを活かし、焼きそばとグリルチキンを担当した。公美と千枝は大きな手で野菜を切り、陽が届かないグリルの高さを調整してあげた。
「ようちゃんの焼きそば、めっちゃ美味しい! 夏にぴったりだよ!」
公美が大きな口で頬張りながら言うと、千枝も目を輝かせた。
「うん、ようくん、ほんと料理上手くなったね。あたし、デザートのフルーツサラダ作ったから、後で食べてよ!」
「ありがとう、二人に喜んでもらえるならもっと頑張っちゃうよ」
陽が照れ笑いを浮かべると、二人は彼をぎゅっと挟んで「可愛い!」と大騒ぎした。
夜になると、別荘のテラスで花火をすることに。公美が大きな打ち上げ花火を準備し、千枝が手持ち花火を陽に渡した。陽の小さな手では火をつけるのも一苦労だったが、公美が後ろから抱きかかえて支えてくれた。
「ようちゃん、怖くないよ。私がいるからね」
花火が夜空に広がると、三人は「わあ!」と声を揃えた。陽は公美の肩に乗り、千枝が隣で手を叩いて喜んだ。花火が終わり、線香花火を手に持つと、陽がふと呟いた。
「僕、夏休みってこんなに楽しいんだね。二人と一緒だからかな」
その言葉に、公美と千枝は目を潤ませた。
「うん、ようくん。あたしたち、三人でずっと夏休み過ごしたいね」
夏休みの後半、三人は地元の夏祭りに参加した。公美と千枝は浴衣を着て、陽も小さな甚平姿で二人の間に立った。祭りの屋台を回り、金魚すくいや射的を楽しんだが、陽の身長では屋台のカウンターに手が届かず、公美が彼を肩車してあげた。「ようちゃん、何か欲しいものあったら言ってね。私が取ってあげるから!」
射的で公美が見事にぬいぐるみをゲットすると、陽にプレゼントしてくれた。千枝は綿菓子を三人で分け合い、甘い味を楽しみながら夜店を歩いた。
祭りの最後は盆踊りだった。女子たちが中心となって踊る中、陽は少し恥ずかしがっていたが、千枝が「ようくんも一緒に踊ろうよ!」と手を引いた。公美と千枝に挟まれ、陽は小さなステップで踊り始めた。周囲の人々は「可愛いねえ」と微笑み、三人の仲睦まじい姿に目を細めた。
夏休みが終わる頃、三人は別荘の湖畔で最後の夜を過ごした。星空の下、陽が言った。
「僕、夏休みで少し泳げるようになったし、料理ももっと上手くなったよ。二人に追いつけるように、もっと頑張りたいな」
公美が陽を抱き上げて笑った。
「ようちゃん、十分すごいよ。私たち、ようちゃんの成長が嬉しいんだから」
千枝も頷いて、「うん、ようくん。あたしたち、ずっと一緒だから、ゆっくり大きくなってね」
夏の終わりとともに、三人の絆はさらに強くなった。陽は少しずつ自分に自信を持ち始め、公美と千枝も彼の成長を心から喜んだ。高校一年の夏休みは、三人にとって忘れられない冒険の日々となった。