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「高校への一歩」

中学三年生の冬が終わりを迎え、公美、千枝、陽の三人は無事に同じ高校への進学を決めた。この世界では、女子が社会を牽引する存在として進学やキャリアを重視される一方、男子は家庭を支える役割が期待されることが多い。しかし、公美と千枝は「陽も一緒に高校生活を楽しむべきだ」と強く主張し、陽の両親も二人の熱意に押されて賛成した。こうして、三人は地元の名門校「星華高校」への進学を果たした。

星華高校は、女子生徒が中心となって運営される学校で、校舎も250cmの平均身長を持つ女子たちに合わせて設計されていた。教室の椅子や机は大きく、廊下も広く取られ、男子生徒のための小さな設備はごくわずか。陽のような100cmの男子にとっては、まるで巨人の国に迷い込んだような感覚だった。それでも、公美と千枝がいつもそばにいてくれるおかげで、彼は安心して新しい生活に飛び込むことができた。


高校初日、三人は制服に身を包み、校門の前で記念写真を撮った。公美と千枝は深緑色のブレザーに赤いリボン、膝丈のプリーツスカートという女子制服がよく似合っていた。一方、陽の男子制服は同じ深緑色のブレザーに短パンで、彼の小さな体にぴったりだった。

「ようちゃん、制服似合ってるよ! ちっちゃくて可愛すぎる!」

公美が陽をひょいと抱き上げて言うと、千枝が隣で笑った。

「うん、ようくん、高校生っぽくなったね。でもやっぱりあたしたちの王子様だよ!」

「二人とも、恥ずかしいからやめてよ…でも、ありがとう」

陽は照れながらも、二人の温かさに心がほっこりした。

クラスでは、三人が幼馴染で許嫁関係であることがすでに話題になっていた。女子生徒たちは公美と千枝の堂々とした態度と美貌に憧れ、陽の愛らしさに目を細めた。一部の男子生徒は陽に嫉妬する声もあったが、公美と千枝の「ようちゃん(ようくん)に何かしたら許さないからね!」という威圧感に押され、誰も手出しはできなかった。

高校生活が始まると、三人の日常にも変化が訪れた。授業は女子向けの内容が多く、陽は少しついていくのが大変だったが、公美と千枝が放課後に補習をしてくれたおかげで何とか乗り切った。

特に陽が得意とする家庭科の授業では、彼の料理スキルが光り、クラスメイトから「陽くんの料理、プロ級だね!」と褒められることも増えた。

「ねえ、ようちゃん。高校でも料理部に入ろうよ。私たちも一緒に入るからさ!」

ある日、公美が提案すると、千枝も目を輝かせて賛同した。

「いいね! ようくんが料理してる姿、もっと見たいし。あたし、お菓子担当で頑張るよ!」

「うん、僕も楽しそうだから入るよ。くみちゃん、ちえたんと一緒なら安心だし」

こうして、三人は料理部に所属することに決めた。

料理部での活動は、三人にとって新しい絆の場となった。部室のキッチンは女子サイズで設計されていたため、陽が使うには少し不便だったが、公美が彼を抱き上げて高い棚の道具を取ってあげたり、千枝が小さなまな板を用意してくれたりした。初めての部活で作ったミートパイは大成功し、部員たちからも絶賛された。

「陽くんって、小さいのにすごいね! 公美ちゃんと千枝ちゃんが自慢するわけだよ」

先輩の言葉に、陽は少し照れながら「二人に助けられてるからだよ」と答えた。

公美と千枝は「当然でしょ!」と胸を張り、三人で笑い合った。

しかし、高校生活は楽しいことばかりではなかった。ある日、陽が一人で校庭を歩いていると、中学時代に彼をからかった女子グループとは別の、新たなグループが近づいてきた。彼女たちは高校二年生で、陽の小さな体を見て興味津々だった。

「ねえ、陽くんってほんとちっちゃいね。一人で歩けるんだ? 公美ちゃんたちがいないとダメなんじゃないの?」

意地悪な口調に、陽は少しムッとしたが、冷静に答えた。

「僕、一人でも大丈夫だよ。でも、くみちゃんとちえたんがそばにいてくれる方が嬉しいけどね」

その言葉に、女子たちは一瞬黙り込んだが、すぐに笑いものにしようとさらにからかってきた。

「へえ、強がっちゃって。でもさ、小さい子は守られてるだけでいいよね?」

その瞬間、背後から大きな影が現れた。公美と千枝だった。

「何! またようちゃんに変なこと言ってる子がいるの!?」

公美が怒りを込めて言うと、千枝が前に出て女子たちを睨みつけた。

「あたしたちのようくんに何かしたら、後悔するよ? さあ、早くどっか行って!」

二人の迫力に、女子たちは慌てて逃げ出した。陽は少し申し訳なさそうに言った。

「くみちゃん、ちえたん、ごめんね。僕、また迷惑かけちゃった…」

「何! ようちゃんが謝ることじゃないよ。あんな子たち、私たちが守ってあげるから!」

公美が陽を抱き上げてぎゅっと抱きしめると、千枝も隣で頷いた。

「そうそう、ようくんはあたしたちの大事な宝物なんだから。ずっと一緒だよ」

その夜、三人は千枝の家の庭で星を見ながら語り合った。陽が小さな声で言った。

「僕、高校に入って思ったんだ。二人に守られてるだけじゃなくて、僕も二人を幸せにしたいなって。

料理ももっと上手くなって、いつか二人にすごいご飯作ってあげたい」

その言葉に、公美と千枝は目を潤ませた。

「ようちゃん…そんなこと考えてたんだね。私、すっごく嬉しいよ」

「うん、ようくん。あたしたち、ずっと三人で幸せになろうね」

星空の下、三人は手を繋いで未来を誓った。高校生活はまだ始まったばかり。これからも試練や笑いが待っているだろうが



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