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公爵家の令嬢とのダンス (2)

「元気にしてたかい?」

「はい、お母様。」


そう言いながら、涙ぐみながら私の顔をあちこち確認する。


「顔がどうしたの?」

「ああ、遊んでたらちょっと怪我しちゃって。」


少し前にシャルロット先輩と決闘をした時の傷がまだ癒えておらず、絆創膏を貼っている。それを見て母が心配しているようだ。


「もっと気をつけて遊べばよかったのに。」

「特に何でもないですから。」


父が母の隣に来て尋ねる。

「学校生活はどうだ?」

「僕の生活がどんなのか、お父さんもこの学校に通ってたから知ってるじゃないですか。」

「どうしてそれを知っているんだ?」

「アレイラ先生が教えてくれましたよ。」


アレイラ先生の名前を聞いた途端、父の顔が険しくなる。


「そいつ、お前に何か嫌がらせをしてないだろうな?」

「何をしたらそんな嫌がらせの話から始まるんですか?」

「私は何も悪いことをしていない。あいつが…」

「あなた!」


父が声を荒げようとすると、母がその口をふさぐ。


「ああ、悪かった。少し興奮しすぎた。」


父は咳払いをして周りを見回す。


「それで、お前のパートナーは誰なんだ?」

「それが…」

「私たちと同じ準男爵なのか、それとも男爵家か?」

「ほら、あなた。うちの息子なら当然伯爵家のお嬢さんとペアを組んだに決まってるじゃない。」

「伯爵家が男爵家とペアを組むなんてどれだけ難しいか知ってるの?私だって、あなたとペアになるために両親に何度もお願いしたのに…」


話していた母が私の顔色をうかがって、ぎこちなく笑う。


「もちろん、今は事情が違うかもしれないし。このお母さんは、あなたがどんな家柄と踊っても気にしないわよ。」

「気にしないって言っても、当然伯爵家であるべきだろう。」


二人はしばらく言い合いをしてから、再び私に視線を向ける。


「「それで?」」


両親が同時に私に尋ねる。

私は飲み物を一口飲み、言った。


「公爵です。」


両親は驚いた表情で私を見る。


「こ…公爵?」

「侯爵じゃなくて、それよりさらに上位の爵位である公爵…だと?」

「はい。」


しばらく沈黙して互いを見つめていた両親。

やがて、二人ともハハハと笑い始めた。


「エドワード。いくら私たちが伯爵以上と縁を結べとプレッシャーをかけたからって、そんな嘘をつく必要はないわ。」

「そうだ、エドワード。正直に話してみなさい。この母さんは、たとえ準男爵とペアを組んでも、変わらず愛して…」

「エドワード。」


聞き覚えのある声がした。

私の方へと近づいてくる人物。

天の川のように美しい青い長髪を留めている宝石付きのヘアバンド、白磁のような肌にうっすらと塗られた頬紅、青い宝石を彫って作ったかのような美しい瞳。

髪や瞳の色と合わせたように、胸元が強調された青い豪華なドレスを着た少女。


「シャルロット先輩。」

「こ…この子なの?」

「はい、紹介します。この度の祭りで私とペアを組むことになったシャルロット先輩です。そして、こちらのお二人が私の両親です。」


シャルロットは私の両親を見て、スカートを軽く持ち上げて挨拶をした。


「初めまして。私はアフロニア公爵家の長女、エルメラ・シャルロット・デ・ヴァイントゥス・アフロニアと申します。」

「あ…初めまして…私はヒギンス・エステールと申します…」

「私はルシア・エステールと申します…」


シャルロットは微笑みながら両親を見つめ、そして私に言った。


「エドワード、一緒に行きましょう。」

「え?まだ踊る時間は…」

「両親が会いたがっているの。」

「両親といえば…」


シャルロットがうなずく。


「私の両親よ。」


「うっ…」


汗が流れる。

乾いた唾をゴクリと飲み込んで、私は目の前の二人を見つめた。

シャルロットと同じ青い短髪を整髪料で綺麗に整え、紙…いや、鋼鉄さえ切り裂きそうな鋭い目つき。40代半ばに見える八字髭が特徴的な中年の男性。

そしてその隣には、シャルロットと似た垂れ目だが、縮れた白髪を持つ、まだ40代には見えない笑顔の女性。


「挨拶して。私の両親よ。」

「あ…初めまして。アルセルを治めている領主、ヒギンス・エステール男爵の一人息子、エドワード・エステールと申します!」

「こんにちは、エドワード。娘から話はたくさん聞いているよ。」


話?

どんな話をしたんだ?

どんな話をしたから…


『はっ…!』


シャルロットの父が、あんなに殺気立った目つきで見てくるんだ?!


「エドワード。」

「は、はい!」


シャルロットの父が睨みつけながら手を差し出す。


「よろしく頼む。」

「は、はい!」


私はすぐに手を取って握手を交わした。

手に力を込めることもなく、特に不満を言う様子もない。


『目つきとは違って良い人みたいだな…』


「お前、うちの娘に近づいて我が家に取り入ろうとしているな?」


『そんなことあるわけないだろう。』


シャルロットの父が私を引き寄せて耳元で小さく囁く。


「絶対にそんなことはありません!」

「それなら、うちの娘みたいな優しくて美しい子が、どうしてお前みたいな爵位の低い…」

「お父様。」


シャルロットが目を吊り上げて父を睨むと、父は気まずそうに笑って私の肩を叩く。


「ははは、悪かった、悪かった。」

「いえ、全然構いません!」


本当に息が詰まる。


「私はシャルロットの父、アヴェンテス・ヒューズテラ・デ・ヴァイントゥス・アフロニアだ。そして隣にいるこの美しい女性は、私の妻ハインツ・ベレティア・デ・ヴァイントゥス・アフロニア。」

「あら、あなたったら。美しい女性だなんて。」


『この二人も仲が良いな。』


うちの両親も仲が良い方だが、この二人はその若さが加わって、さらに輝いて見える。

もちろん、年齢が若いというわけではないが。


000


「魔法学校の生活はどうだい?」

「シャルロット先輩のおかげで快適に過ごせています。」

「そう言ってもらえると嬉しいね。」


ヒューズテラが薄く微笑む。


「それじゃあ、君のことを少し詳しく知りたいんだが…君はどの属性が得意なんだ?」

「…」


正直に話しても大丈夫だろうか。

念のためシャルロットの方を見ると、彼女が小さく頷いてくれた。


「私は魔法が…使えません。」

「魔法が使えない?」


その言葉を聞いたヒューズテラ氏は、すぐに眉をしかめて腕を組む。


「はい。我が家は代々魔法の適性がなくて、私もその血を受け継ぎ、魔法を使うことができません。」

「ここは魔法学校じゃないか。魔法を使えない君がどうしてここに通っているんだ?」

「父がこの学校に入学させてくれたのと、私も魔法学校で学べばいつか使えるようになるかもしれないと思って通っています。」

「なるほど…」


ヒューズテラ氏は鼻の下のひげを撫でる。


「もしかしたらと思うから、後日うちの研究所に来るといい。詳しく検査してやろう。」 「研究所…ですか?」

「ラブリンスにある《黄金の夜明け研究会》の本部だよ。魔法に適性がない人間でも、体をしぼり出せば多少は力が出るだろう。それを確認してやる。」

「本当ですか?!」

「ああ。」

「ありがとうございます!」


これでようやく自分の魔法適性が分かるかもしれない!

たとえ魔法を使えないとしても、適性さえ分かれば、その適性に合ったものだけでも習得すれば、生きているうちに一度くらいは使えるようになるだろう。


「途中の『体をしぼり出す』っていうのが少し気にはなるけど…」


知ることさえできれば、何だって構わない。

前世で万が一捕まったときに備えて拷問を耐える訓練まで終えている自分にとって、体をしぼられる程度のことなんて楽勝…とまではいかないが、耐えられるはずだ。


「さて、皆さんこちらをご覧ください!」


厳格そうな老年の男性の声が、大講堂内に響き渡る。

人々の視線が、大講堂の壇上へと向けられる。

そこに立っているのは校長先生。校長先生が大講堂にいる生徒や保護者たちを見渡す。


「父さん、母さん。それでは私たちは行きますね。」

「ああ、頑張るんだぞ。」

「はい。」

「エドワード君も頑張ってね。」

「ありがとうございます、お母様。」

「あら、お母様だなんて。」


ベレティア氏が嬉しそうに微笑む。

呼び方を「奥様」にするか「お母様」にするか頭の中で一瞬悩んで言ったのだが、どうやら成功だったようだ。


『それじゃあ…』


私はシャルロットと一緒に、大講堂の中央に準備されている広いスペースへと向かった。

数多くの生徒たちの間で、壇上にいる校長先生の訓示のような長い話を聞き、ようやく楽団の楽器の音が鳴り響く。

そして、大勢の生徒が踊る舞台で、私たちは一言も交わさずただお互いの目を見つめながら踊った。


平凡な生活。

平凡な人生を望む私だが、既にシャルロットとペアを組むことになった以上、この日だけは楽しんでもいいのではないかと思った。

どうにも、今夜はとても短く感じられそうだ。


暑い。

長袖だった制服も、今では半袖のワイシャツに変わった。

そして、夏休みが始まった。


私以外は。


「よく聞きなさい、エドワード。」


教室にいるのは私一人。

そして、目の前で私を教えているのはアレイラ先生。


「先生!もう休みが始まって一週間も経ったんですよ!」

「私だってお前なんか教えたくないわ!」


アレイラの怒鳴り声が教室に響き渡る。


「でも、上の人たちが成績表を見て『教えろ』って命令してくるのよ!私だって夏休みは生徒なんか教えずに休みたいの!」

「それを言われると反論できません…。」


「あ…いや、成績も大事ですけど、生きる上で成績が直接役立つわけじゃないでしょう。特に僕たち貴族なんかは…」

「じゃあお前の親に成績表送るときに『落第』ってでっかく書いて送ろうか?」

「それはちょっと…」

「だったらちゃんと勉強して、さっさと再試験を受けて合格しなさい。私だって早くお前を教えるのやめて休みたいんだから。」


再び授業が始まる。

このままでは本当に夏休み中ずっと授業を受ける羽目になりかねない。


『マジで無理…。』


こんな地獄からどうにかして抜け出したい。

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